10年もあなたに尽くしたのに婚約破棄ですか?

水空 葵

文字の大きさ
25 / 39
本編

25. 意のままに ※セレスティアside

しおりを挟む
 ソフィアにトラウマを植え付けることに成功した日の翌朝。
 学院に来たばかりのセレスティアは笑みを浮かべていた。

(やっと、あの憎い女が消えましたわ)

 同じ講堂にいるはずのソフィアが講義開始時間になっても姿を見せなかったから。

 けれども、相変わらずレオン王子とアリス楽しそうに会話している。

 ついさっき、アリスに呼び出されて「ソフィアに嫌がらせをしないで欲しい」と文句を言われもした。
 そんなことがあったから、セレスティアはいつも以上に不快感を募らせていた。

「いけませんわ……」

 余計な事を考える暇はなかったと思い返し、レオンに魔法をかける準備を始める。
 もっとも、不審に思われないように魔法の実習中に詠唱するタイミングを見計らっているだけだ。

 それから少しして周囲で魔法が飛び交い始めたころ、セレスティアはレオン王子を見つめたまま詠唱を始めた。

(抵抗感が強すぎますわ……)

 相手は王族。このような魔法に耐性があるのは不思議なことではなかった。
 けれども、根気よく魔法を使い続けると、少しずつ手応えを感じるようになっていた。

 そんな状況でも、レオン王子は異変に気付いた様子はない。
 最初に魔力の流れの認識を阻害する魔法をかけたのだから、気付く方が難しい。

 けれども異変が起きない訳ではなかった。

「はぁ……はぁ……」

 セレスティアは息を切らしていた。
 魔力が枯渇してしまい、息が上がってしまっている。

(魔力が切れてしまいましたわ……。でも、成功しましたわね)

 そんなことを思いながら、不審がられないように実習を再開しようとする。
 けれども、もう魔法を使うことは出来なかった。

「セレスティア様、大丈夫ですか?」
「魔力を使いすぎてしまったみたいですの。少し休憩したら戻りますわ」

 誤魔化してその場を離れるセレスティア。
 魔力は休息で回復するというのは常識だから、彼女もそれを狙っている。



   ☆



 しばらくして、昼休みの時間になった。

「レオン様とアリス様が喧嘩したって本当ですの?」
「ええ」

 今はすっかりレオン王子とアリスが喧嘩したという噂で持ちきりだった。
 実際のところはレオン王子がアリスと距離を置いているだけなのだが……。

 ついに、事態が動いた。

「アリス、話がある」

 セレスティアと共にアリスの前に来たレオン王子がそう言い放つ。
 その言葉を告げられたアリスは表情を歪めた。

「話とは、どのようなご用件でしょうか?」
「もう君を愛することは出来ない。セレスティア嬢を好いてしまったのだ。
 だから、婚約をなかったことにしたい」

 騒ぎを聞きつけた人達が集まってくるものの、幸いなことにレオン王子の声を聞き取れた者はいなかった。
 ただ、レオンに密着するセレスティアの様子に疑問を覚える者は多かった。

「そう、ですのね……」

 涙を浮かべながら、そう口にするアリス。
 そんな様子を見たセレスティアは勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

 そして……。

「レオン、お前は馬鹿か!? 目を覚ませ!」

 異変を嗅ぎ付けたアルトがそう声を上げた。

「僕は至って正気だよ? 本当の愛に気付いたんだ」
「ああ、その言い方はいつものレオンじゃないね。いい加減に目を覚ませ!」

 アルトはそう言い放つと、拳を握りしめてレオン王子の頬を殴った。

「「な……」」

 絶句する周囲の様子などお構いなしに、床に倒れたレオンを見下ろすアルト。
 そして……。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

家も婚約者も、もう要りません。今の私には、すべてがありますから

有賀冬馬
恋愛
「嫉妬深い女」と濡れ衣を着せられ、家も婚約者も妹に奪われた侯爵令嬢エレナ。 雨の中、たった一人で放り出された私を拾ってくれたのは、身分を隠した第二王子でした。 彼に求婚され、王宮で輝きを取り戻した私が舞踏会に現れると、そこには没落した元家族の姿が……。 ねぇ、今さら私にすり寄ってきたって遅いのです。だって、私にはもう、すべてがあるのですから。

婚約破棄した相手が付き纏ってきます。

沙耶
恋愛
「どうして分かってくれないのですか…」 最近婚約者に恋人がいるとよくない噂がたっており、気をつけてほしいと注意したガーネット。しかし婚約者のアベールは 「友人と仲良くするのが何が悪い! いちいち口うるさいお前とはやっていけない!婚約破棄だ!」 「わかりました」 「え…」 スッと婚約破棄の書類を出してきたガーネット。 アベールは自分が言った手前断れる雰囲気ではなくサインしてしまった。 勢いでガーネットと婚約破棄してしまったアベール。 本当は、愛していたのに…

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる

椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。 その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。 ──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。 全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。 だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。 「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」 その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。 裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

処理中です...