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梅干しおにぎりと恋心
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梅干しおにぎりと恋心
俺、コウジは33歳の会社員。街コンで高校の同級生で、同じ水泳部だったレナと再会した。レナは当時、マドンナ的な存在で、俺も密かに憧れていた。今はぽっちゃりしているけれど、あの明るさは変わっていなかった。
そんなレナと、一緒にウォーキングを始めることになった。運動不足の解消とダイエットも兼ねているけれど、正直、レナと一緒に過ごせるのが何より嬉しかった。
ウォーキング当日。レナの家まで迎えに行くと、彼女はもう外に出ていた。
「お待たせ。早いね。その帽子、新しく買ったの?」
「うん、可愛かったから。楽しみで早く出てきちゃった」
「俺も楽しみにしてた。じゃあ、行こうか」
コースのスタート地点までは、徒歩で10分ほど。そこは公園内にあるウォーキングコースで、1周30分と書かれていた。俺たちは初めてなので、もっと時間がかかるかもしれない。
「まぁ、ゆっくり行こう」
「うん。1周歩けるかな…」
「大丈夫。一緒に頑張ろう」
「そのウェア、やっぱり可愛いね」
「ありがとう。コウジくんが選んでくれたからだよ」
そう言われると、やっぱり嬉しい。
他愛のない話をしながら歩いていたけれど、やっぱり足にくる。結局、1周するのに1時間くらいかかった。
「レナちゃん、大丈夫? 少し休憩しようか」
「うん、そうだね」
公園の木陰にベンチがあり、そこでひと休み。俺は凍らせて持ってきたスポーツドリンクを取り出す。
「これ、買ってきたんだ」
「ありがとう。あぁ…冷たくて気持ちいい!」
15分ほど休んで、もう1周。さすがに疲れたけれど、元・運動部の意地で頑張った。汗をぬぐいながら、やっと2周目を終えた。
するとレナがリュックから何かを取り出した。
「これ、作ってきたんだけど…一緒に食べない?」
大きなおにぎりと、弁当箱に入ったウインナーと卵焼きが出てきた。
「コウジくん、手作りって苦手じゃない?」
「いやいや、大好きだよ。もらっていいの?」
「うん。2人分作ったから、一緒に食べよ」
おにぎりの中身は梅干し。普段はあまり食べないけれど、疲れた体にその塩気がちょうど良かった。卵焼きもウインナーも、どれもおいしい。
「これが、いつも写真で見る手作り弁当なんだね。すごく美味しいよ」
「ありがとう。口に合って良かった」
「いや、本当においしいよ。毎日食べたいくらい」
「じゃあ毎日作ろうか、コウジくんちに行って…」
「えっ?」
「……いや、なんでもない」
溶けたスポーツドリンクと、レナが持ってきてくれた冷たいお茶を飲み干し、帰り道へ。
「ありがとう、美味しかった」
「ねえ、また来週もウォーキングしようね」
「うん。レナちゃんのお弁当が目的で来ちゃうかも」
「えー、私はコウジくんが目的かも」
「ほんと? 冗談でも嬉しいよ」
「本当だよ」
俺は黙ってしまった。初めて言われた言葉に、うまく返せなかった。
気づいたらレナの家の前に着いていた。
「コウジくん、また来週」
「うん、またね」
最後の言葉に、なんて返せば良かったのか。
「俺もだよ」なんて、言えたらよかったのにな。
……でも、本当の気持ちって、簡単には言えないよな。
俺、コウジは33歳の会社員。街コンで高校の同級生で、同じ水泳部だったレナと再会した。レナは当時、マドンナ的な存在で、俺も密かに憧れていた。今はぽっちゃりしているけれど、あの明るさは変わっていなかった。
そんなレナと、一緒にウォーキングを始めることになった。運動不足の解消とダイエットも兼ねているけれど、正直、レナと一緒に過ごせるのが何より嬉しかった。
ウォーキング当日。レナの家まで迎えに行くと、彼女はもう外に出ていた。
「お待たせ。早いね。その帽子、新しく買ったの?」
「うん、可愛かったから。楽しみで早く出てきちゃった」
「俺も楽しみにしてた。じゃあ、行こうか」
コースのスタート地点までは、徒歩で10分ほど。そこは公園内にあるウォーキングコースで、1周30分と書かれていた。俺たちは初めてなので、もっと時間がかかるかもしれない。
「まぁ、ゆっくり行こう」
「うん。1周歩けるかな…」
「大丈夫。一緒に頑張ろう」
「そのウェア、やっぱり可愛いね」
「ありがとう。コウジくんが選んでくれたからだよ」
そう言われると、やっぱり嬉しい。
他愛のない話をしながら歩いていたけれど、やっぱり足にくる。結局、1周するのに1時間くらいかかった。
「レナちゃん、大丈夫? 少し休憩しようか」
「うん、そうだね」
公園の木陰にベンチがあり、そこでひと休み。俺は凍らせて持ってきたスポーツドリンクを取り出す。
「これ、買ってきたんだ」
「ありがとう。あぁ…冷たくて気持ちいい!」
15分ほど休んで、もう1周。さすがに疲れたけれど、元・運動部の意地で頑張った。汗をぬぐいながら、やっと2周目を終えた。
するとレナがリュックから何かを取り出した。
「これ、作ってきたんだけど…一緒に食べない?」
大きなおにぎりと、弁当箱に入ったウインナーと卵焼きが出てきた。
「コウジくん、手作りって苦手じゃない?」
「いやいや、大好きだよ。もらっていいの?」
「うん。2人分作ったから、一緒に食べよ」
おにぎりの中身は梅干し。普段はあまり食べないけれど、疲れた体にその塩気がちょうど良かった。卵焼きもウインナーも、どれもおいしい。
「これが、いつも写真で見る手作り弁当なんだね。すごく美味しいよ」
「ありがとう。口に合って良かった」
「いや、本当においしいよ。毎日食べたいくらい」
「じゃあ毎日作ろうか、コウジくんちに行って…」
「えっ?」
「……いや、なんでもない」
溶けたスポーツドリンクと、レナが持ってきてくれた冷たいお茶を飲み干し、帰り道へ。
「ありがとう、美味しかった」
「ねえ、また来週もウォーキングしようね」
「うん。レナちゃんのお弁当が目的で来ちゃうかも」
「えー、私はコウジくんが目的かも」
「ほんと? 冗談でも嬉しいよ」
「本当だよ」
俺は黙ってしまった。初めて言われた言葉に、うまく返せなかった。
気づいたらレナの家の前に着いていた。
「コウジくん、また来週」
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