【完結】恋人代行サービス

山田森湖

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第35話「家族の未来」

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第35話「家族の未来」

美咲が一歳の誕生日を迎えた。健太は小学二年生になり、すっかりお兄ちゃんらしくなっていた。

「美咲ちゃん、お誕生日おめでとう」

健太が手作りのカードをプレゼントした。

「ありがとう、健太お兄ちゃん」

美咲はまだ「あーあー」という声しか出せないが、健太の優しさは伝わっているようだった。

「一歳か。あっという間だったね」

健一が感慨深そうに言った。

「そうですね。健太の時もそうでしたが、子供の成長は本当に早い」

誕生日パーティーには、両家の祖父母も参加してくれた。

「美咲ちゃん、もう歩けるのね」

健一のお母さんが驚いていた。

「最近、やっと一人で立てるようになったんです」

「健太君の時より早いんじゃない?」

「お兄ちゃんの真似をしたがるからかもしれません」

実際、美咲は健太のことが大好きで、いつも健太の後を追いかけようとしていた。

「美咲ちゃん、こっちおいで」

健太が手を差し出すと、美咲は一生懸命歩いてくる。

「すごいじゃない、美咲」

兄妹の微笑ましい光景に、みんな笑顔になった。

その夜、健一と二人で話していた。

「美月、最近考えることがあるんだ」

「何ですか?」

「子供たちの将来のこと」

健一は真剣な表情だった。

「健太にはアメリカでの経験がある。美咲にはない」

「確かにそうですね」

「将来、美咲にも国際的な経験をさせてあげたいと思うんだ」

「どんな風に?」

「また海外駐在のチャンスがあったら、今度は美咲も一緒に」

私は少し驚いた。

「また海外駐在を?」

「可能性の話だよ。でも子供たちが大きくなる前に、もう一度チャンスがあるかもしれない」

「そうですね」

実際、健一の仕事ぶりは高く評価されていて、また海外駐在の話が出る可能性はあった。

「美月はどう思う?」

「私は健一の決断に従います。でも今度は、もう少し準備をしっかりとしたいですね」

「準備って?」

「子供たちの教育のことを、もっと計画的に考えたい」

健一は頷いた。

「そうだね。今度は経験があるから、より良い環境を作れそうだ」

数ヶ月後、本当に海外駐在の話が舞い込んできた。

「今度はヨーロッパです」

健一が興奮気味に話した。

「ヨーロッパ?」

「ドイツのフランクフルト。ヨーロッパ全体を統括する支社があるんだ」

「ドイツ...」

「期間は四年。今度は本格的な海外展開のプロジェクトを任せられそうだ」

私は少し戸惑った。アメリカとは言語も文化も違う。

「ドイツ語は?」

「現地では英語も通じるし、ドイツ語は現地で覚えればいいと思う」

「子供たちのことを考えると...」

「健太はもう八歳。美咲も二歳。いい時期だと思うんだ」

健太に相談してみることにした。

「健太、パパのお仕事でドイツに行くかもしれないんだけど、どう思う?」

「ドイツ?」

「ヨーロッパの国よ」

健太は少し考えてから答えた。

「僕はどこでもいいよ。家族一緒なら」

「本当?」

「うん。でも美咲ちゃんは大丈夫?」

「美咲はまだ小さいから、きっと慣れるわ」

健太の柔軟性に感心した。アメリカでの経験が、彼をよりオープンな性格にしたのかもしれない。

最終的に、私たちはドイツ駐在を受けることにした。

「今度は家族四人での海外生活ね」

「そうですね。新しい挑戦です」

準備期間は一年間。今度はより慎重に計画を立てた。

健太にはドイツについて調べさせ、簡単なドイツ語も教え始めた。

「Guten Tag」

「グーテン ターク」

健太は興味深そうに繰り返した。

美咲にはまだ難しいが、多言語環境に慣れさせるため、家では日本語、英語、簡単なドイツ語を混ぜて話すようにした。

「美咲、これはApfelよ。りんごのことね」

「あーぷー」

美咲なりに真似をしようとしていた。

ドイツ出発の三ヶ月前、由香と久しぶりに会った。

「美月、また海外に行くのね」

「はい。今度はヨーロッパです」

「すごいじゃない。健太君も美咲ちゃんも、国際的な子供に育ちそう」

「そうですね。でも不安もあります」

「何が?」

「美咲がまだ小さいし、健太も日本での生活にやっと慣れたところなので」

由香は私の肩を叩いた。

「大丈夫よ。美月の家族なら、どこでもうまくやっていける」

「ありがとう、由香」

「それに、子供たちには貴重な経験になる」

出発の日が近づくにつれ、私は複雑な気持ちになっていた。

不安もあるが、同時に新しい冒険への期待もある。

「美月、後悔してない?」

健一が聞いた。

「していません。家族一緒なら、どこでも頑張れます」

「ありがとう」

恋人代行から始まった関係が、今では国境を越えて世界中で暮らす家族になろうとしている。

人生は本当に予測がつかない。

でも愛する家族がいる限り、どんな挑戦も乗り越えられる。

そう信じて、私たちは新しい未来に向かって歩いていく。

第35話 完
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