有能課長のあり得ない秘密

みなみ ゆうき

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その日の夜。第一段階である社内プレゼンが無事終了したお祝いに、プロジェクトメンバー全員で会社の最寄り駅近くの居酒屋で飲むことになった。
清雪さんのことが気にかかっていて正直飲みたい気分じゃなかった俺も参加しないわけにいかず渋々参加したのだが。

そんな俺を嘲笑うかのように清雪さんとは遠く離れた席の上、隣が部長という最悪な席。
とことんツイてない自分を呪いたくなったが、そこで俺は部長の口から自分がこのプロジェクトメンバーに選ばれた意外な経緯を聞くことが出来たのだ。


「今回のメンバーを決める時、椿原が一番最初に挙げた名前がお前だったんだ。
お前去年顧客管理に関するデータベースの改善提案で社長賞もらって本社に来てただろ?
その時にお前とお前の出した改善提案資料を見て、絶対自分のプロジェクトチームに欲しいって思ったらしい。
アイツ普段は上が選んだ候補者の中からメンバーを選んだりしてるんだけどな。お前の事だけは完全に自分の意見で即決即断。ホントに珍しい事だったけど、アイツの見る目に間違いはなかったらしい。今後も期待してるぞ、押鴨」


思いもよらない言葉に何も反応出来ずにいると。


「あ、だから課長は押鴨のことあんなに気にかけてたのかー。納得」


向かい側にいた先輩社員が感心したようにそう呟いた。

さっぱり事情が掴めない俺を他所に先輩が尚も言葉を続ける。


「課長って何気に押鴨のすることよく見てるもんなー。昨日の件だってそうだし、普段だって外回りから帰って来ると必ず声かけてるし、ちょっと前まで絶対にミーティング前の会議室に誰も入れてくれなかったのに、今じゃ押鴨とOJTとかしてるしな」


それは俺が偶然特殊な事情を知ってしまったのだから仕方ない。

曖昧に笑って誤魔化していると。


「それ以前も押鴨がミーティング前の会議室にうっかり入って行った時、課長は咎めもせずに後から普通に入っていったもんな。あれ、他の人間がやったら滅茶苦茶キレられるぞ」


え!?それってもしかして……。


あの言葉の謎が解けかけたような気がしたその時。


「何の話してるんだ?」


いつの間にか後ろに来ていたらしい清雪さんの声に俺の心臓の鼓動が大きく跳ねた。


……色んな意味で。
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