なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番

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13 船で過ごす夜

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「これが船の中……?」

 私はリカルドに案内された部屋に入って思わず固まっていた。
 とても船の中とは思えないほど落ち着いた雰囲気の木目調の部屋に案内された。
 天井にはシーリングファンが付いている。この世界ではこれまで見たこともない。しかも照明もオイルランプを利用した間接照明が使われている。

「すまねぇな。今回は運河の掃除の予定だったから、そんなにいい部屋がねぇんだが……」
「え? 充分素敵です!!」

 私はすかさずリカルドを見上げて声を上げた。

「お、おう、女性にそんなに喜んでもらえるとは思ってなかったから……ありがてぇな」

 確かに貴族女性にはこの部屋は好まれないだろう。
 だが、私は現代日本の感覚もあるので、ウッド調のこのおしゃれな船室はかなり気に入った。
 しかも、荷物を入れても十分な広さがある。

「ああ、あいつら、木箱もここに運んだのか。悪かったな。木箱は俺が持って行く」
「はい」

 リカルドは木箱を持ち上げたので、私は船室の扉を開けた。

「ありがとな、じゃあ、イリスさんおやすみ」
「おやすみなさい」

 リカルドは荷物を持っていたこともあって、簡単にあいさつを済ませた。
 歩いて行くリカルドの背中を見送っていると、リカルドが隣の部屋の前で止まった。

(あ、もしかして、隣がリカルドの部屋?)

 私はすぐに移動してリカルドの立っている前に向かった。

「扉、開けましょうか?」

 リカルドは一瞬驚いた後に、嬉しそうに笑った。

「ああ、頼む」

 こんな単純なことで喜んでもらえるとは思わなくて、私も嬉しくなった。

「はい」

 私は、隣の部屋を開けると、リカルドが中に入って木箱を置いた。

「ここはリカルドの部屋なのですか?」
「ああ、そうだ。何か困ったことがあったら遠慮なく来てくれ」

 リカルドが隣の部屋だと知って、なぜか心臓が早くなった。

「は、はい……それじゃあ、おやすみなさい」

 私がリカルドの部屋を閉めようとすると、リカルドが慌てて扉を押さえた。

「待った。近くだが……その……送る……」

 部屋は隣だ。
 とても送られるような距離じゃない。
 でも、気が付くと私はうなずいていた。

「よろしくお願いいたします」
「ああ」

 そしてリカルドと並んで自分の部屋に戻った。

「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」

 私はリカルドにあいさつをした。
 なんとなく、自分から扉を閉めることができずに立っていると、リカルドの手が私に伸びたと思ったが、ピタリと止まった。そして微笑んで扉を閉めてくれた。
 リカルドの足音が遠ざかる音が聞こえて、扉を背にして息を吐いた。
 今日は本当に色々なことがあった。
 こんなに充実した一日を過ごしたのはいつぶりだろう。

 部屋の中を見渡すと、今日、リカルドに買ってもらった物が置いてあった。
 
「夢じゃないんだ……」

 実際に買ってもらった物を見て私はこれが現実だと実感した。
 そのくらいずっとふわふわしている。
 明日からは、船の上だ。
 
(ラーン伯爵領に着くまでにもう少しリカルドを話が出来たらいいな……)

 私は明日を楽しみにしながら、荷物の整理を始めたのだった。



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