好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

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第二章 霧のかかった未来

23 星祭りの腕輪(5)

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 王宮内、サフィール王子の自室内にて。



 シャルロッテが初めて作ったという腕輪を受け取ったゲオルグは愕然とした。

「サフィール、これ、本人に貰ったのか?」

「いや? 伯爵にした」

 すると、ゲオルグがサフィールの胸倉に掴みかかった。

「ふざけるな!! そんな大切な物、本人の了解も得ずに勝手に貰って来るな!! ましてや、自分で使うならともかく、俺に渡すだと?! シャルロッテが可哀想だろうが!! 返して来い!!」

 すると、それまでどこか余裕そうだったサフィールが怯えた目をして言った。

「そんなに怒るなよ。お前が喜ぶと思って貰って来てやったんだろ?!」

 ゲオルグは、手を離すと、頭を抱えながら言った。

「あのな……俺が良ければいいのか? シャルロッテの気持ちは? なぁ、サフィール。気持ちは有難いけど、これ、返して来い。まだ伯爵はいるんじゃないか?」

「まだ、いると思う……」

「早く!! 返して来い!!」

 サフィールはゲオルグに差し出されて腕輪を持つと部屋を出て行った。残ったゲオルグは、小さく溜息をついた。


☆==☆==


「どうぞ、サフィール王子殿下」

 サフィールは先程まで、打合せをしていた部屋の前にいた衛兵に取次を頼んで部屋に入った。

「どうした?」

 サフィールの父である、王太子殿下が尋ねると、サフィールは、腕輪を出してホフマン伯爵に差し出した。

「これ返すよ。ホフマン伯爵」

「どうされたのですか?」

 伯爵は、驚いた顔をして、サフィール王子の顔を見た。

「友達が、そういうの好きだからあげようと思ったんだけど、制作者に無断で貰うわけにはいかないから、返して来いって」

 サフィール王子の言葉を聞いた陛下は目を丸くした。

「お前にそんないい友人がいたのだな」

 ホフマン伯爵は、サフィール王子殿下を見ながら言った。

「返して頂き、ありがとうございます。王子殿下。ちなみに、そのご友人はこの腕輪についてなんと?」

「穏やかな気持ちになるとかなんとか言って、凄く褒めてた。欲しかったみたいだけど、製作者の初めての作品なら、無断で貰えないと」

「ほう」

 ホフマン伯爵は、感心した声を上げた。

「殿下、ちなみにお友達のお名前は? 製作者にこのことを伝えて、もし、製作者が許可を出せば、腕輪をお譲り致します」

「え? いいのか?!」

 先程まで、シュンとしていたサフィール王子が嬉しそうに顔を上げた。

「はい。そんなに、製作者を大切に思って下さるような素晴らしい方が欲しがってくれているのなら、きっとこれを作った者も喜ぶと思います」

 ホフマン伯爵が微笑むと、サフィール王子は、頷きながら言った。

「ランゲ侯爵家のゲオルグだ。私の一番の友人だ」

「畏まりました。ランゲ侯爵家のゲオルグ様ですね。製作者に伝えておきます」

「ああ!! 頼むぞ、伯爵。あと……すまなかった」

 サフィール王子が謝罪すると、ホフマン伯爵がにっこりと笑った。

「いえ」

 そして、サフィールは部屋を出て行った。
 
「伯爵、何度も息子が迷惑をかけて申し訳なかった」

 王太子殿下が謝罪をすると、ホフマン伯爵は「いえいえ」と言った。

「素晴らしいご友人に恵まれたようですな」

「そうですね、ランゲ侯爵家子息か……」

 王太子殿下が小さく呟いたのだった。


☆==☆==


「ただいま~~」

 サフィールは、自室に戻ると、ゲオルグに言った。

「ちゃんと返した」

 ゲオルグは、ソファーに座ったまま顔を上げた。

「そうか……」

 ゲオルグはほっとしたような、寂しそうな顔をしていた。

「そういえば……」

「まだ何かあるのか?!」

 サフィールはいつも冷静なゲオルグの顔がこうも変わるのが不思議だった。サフィールにはわからないが、これが誰かを好きになるということなのだろうか?
 つい最近まで、ゲオルグも自分と変わらないと思っていた。だが、少しの間で変化した。きっかけは、ゲオルグが出場した乗馬大会辺りからだ。きっとその時、ゲオルグの中で大きな変化があったのだろう。

「ゲオルグって、本当にウェーバー嬢が好きなんだな」

「急にどうした?」

 ゲオルグがギョッとした顔をしてサフィールを見た。

「いや。なぁ、ゲオルグ。本当は、あの腕輪欲しかっただろ?」

「当たり前だ」

「かっこつけ」

「うるさい!! なんとでも言え。用が済んだなら帰る!!」

 ゲオルグはソファーから立ち上がった。サフィールもそろそろ、教師が呼びに来る時間だ。

「またな~~今度はゆっくり遊ぼうな~」

 サフィールがゲオルグに言うと、ゲオルグが振り返りながら言った。

「シャルロッテの腕輪を見せてくれたことは、感謝する」

 ゲオルグはそう言うと、部屋を出て行った。
 残されたサフィールはにっこりと笑った。たぶん自分は、ゲオルグに喜んで貰いたかったのだ。
 
 サフィールは、シャルロッテが、ゲオルグに腕輪を渡してくれることを願うしかなかった。
 王妃教育は大体15歳から始まる。だからサフィールは、12歳から13歳で婚約者を決める必要がある。他に貴族なら学園を卒業してからそれぞれの家の勉強を始める。

「7歳は早いよな~~。どれだけ大変なんだよ、ホフマン伯爵家ってのは……」

 サフィールは、呟かずにはいられなかった。
 



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