好きでした、婚約破棄を受け入れます

たぬきち25番

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第二章 霧のかかった未来

24 星祭りの腕輪(6)

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 ホフマン伯爵が、城へ星祭りの打ち合わせに行った次の日、私とハンスはホフマン伯爵の執務室に呼ばれた。

「ハンスの腕輪が採用された」

 伯爵はそう穏やかに告げた。

「え? 私の腕輪が? 本当に?」

「ああ」

「やった!!!」

 ハンスは信じられないと、いう顔をした後、とても喜んでいた。
 きっとこれで、伯爵の狙い通り、ハンスは宝石の勉強にも、力を入れることだろう。

(よかった……)

 私はハンスを見ながら言った。

「ハンス!! 凄いわ!! おめでとう!!」

「うん!! ありがとう! 絵になったら、一緒に見に行こうね!!」

「もちろんよ!!」

 私がハンスと喜び合っていると、ふと、ハンスが伯爵の方を見た。

「あ、おじい様。シャルの腕輪は、使わないんですよね?」

「そう……だな」

「ねぇ、シャル。シャルの作った腕輪、僕にくれない? シャルの初めて作った腕輪だろう? とてもキレイだったし、欲しいなって思ってたんだ」

 元々、お父様には小さすぎるし、エイドに貰って貰おうと思っていたが、ハンスが貰ってくれるなら、腕にも合うし、有難いと思った。

「ええ。ハンスが貰ってくれるなら嬉しいわ」

「えへへ。やった!!」

 私たちが、笑いあっていると、ホフマン伯爵が困った顔をして、私の腕輪を差し出した。

「実は、ランゲ侯爵子息のゲオルグ殿も、この腕輪を褒めて下さったようで、シャルロッテさえよければ、ゲオルグ殿に、お贈りしようと思ったのだが……」

 私はその名前を聞いて固まってしまった。

「ランゲ侯爵子息のゲオルグ……様が?」

 すると、ハンスが声を上げた。

「おじい様、その腕輪はシャルの初めての腕輪です。それは、私がいただきます。ねぇ? シャル、私にくれるだろう?」

 伯爵と、ハンスにじっと見つめた。
 なぜ、ゲオルグが私の腕輪を見たのか、状況はよくわからないが、私は乗馬大会の時のゲオルグを思い出した。

(……ゲオルグに腕輪を贈りたい。次は頑張っての応援の意味を込めて)

 私は、目の前で真剣な顔をしているハンスを見た。ハンスは、嘘をつかない。どこまでも真っすぐで、正直だ。そのハンスが、自分の作った腕輪が欲しいと言ってくれている。
 本当に欲しいと思っていてくれている証拠だ。

 私は、エイドに言われた言葉を思い出した。

『お嬢、いいですかい? これからお嬢は、色んな男性と知り合うと思います。ですが、絶対に何が合っても、ホフマン伯爵家の坊ちゃんを一番に考えて下さい。そうすりゃ~間違いはありません』

(そうよ。エイドが間違いないって、言ったわ。私が優先すべきは、ハンス)

「伯爵、申し訳ございません。私は、ハンスに腕輪を贈ります」

「やった~~」

 ハンスは嬉しそうに笑った。だが、ホフマン伯爵もどこか、嬉しそうだった。

「ふふふ。そうか、ハンスに贈ってくれるのか、それでは断るしかないな」

「申し訳ございません」

 私が頭を下げると、ホフマン伯爵はにっこりと笑った。

「いや、問題ない。シャルロッテ嬢。腕輪を孫に譲ってくれて感謝する。ランゲ侯爵家子息殿については、私に任せてほしい」

 私は、腕輪をハンスに渡した。

「どうぞ」

「ありがとう!! 大切にするね!!」

 ハンスの嬉しそうな笑顔が、なぜか心に突き刺さった。
 


 この星祭りのシュテルンリングのおかけで、私たちは随分と変わった。
 ハンスは、自分の腕輪が、大聖堂の絵に描かれたことで、宝石への苦手意識も薄れ、以前より真剣に宝石の勉強を始めた。

 そして、私は……。
 ハンスの婚約者として、他は視界に入れずに生きて行く決意が出来た気がした。









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