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第二章 霧のかかった未来
24 星祭りの腕輪(6)
しおりを挟むホフマン伯爵が、城へ星祭りの打ち合わせに行った次の日、私とハンスはホフマン伯爵の執務室に呼ばれた。
「ハンスの腕輪が採用された」
伯爵はそう穏やかに告げた。
「え? 私の腕輪が? 本当に?」
「ああ」
「やった!!!」
ハンスは信じられないと、いう顔をした後、とても喜んでいた。
きっとこれで、伯爵の狙い通り、ハンスは宝石の勉強にも、力を入れることだろう。
(よかった……)
私はハンスを見ながら言った。
「ハンス!! 凄いわ!! おめでとう!!」
「うん!! ありがとう! 絵になったら、一緒に見に行こうね!!」
「もちろんよ!!」
私がハンスと喜び合っていると、ふと、ハンスが伯爵の方を見た。
「あ、おじい様。シャルの腕輪は、使わないんですよね?」
「そう……だな」
「ねぇ、シャル。シャルの作った腕輪、僕にくれない? シャルの初めて作った腕輪だろう? とてもキレイだったし、欲しいなって思ってたんだ」
元々、お父様には小さすぎるし、エイドに貰って貰おうと思っていたが、ハンスが貰ってくれるなら、腕にも合うし、有難いと思った。
「ええ。ハンスが貰ってくれるなら嬉しいわ」
「えへへ。やった!!」
私たちが、笑いあっていると、ホフマン伯爵が困った顔をして、私の腕輪を差し出した。
「実は、ランゲ侯爵子息のゲオルグ殿も、この腕輪を褒めて下さったようで、シャルロッテさえよければ、ゲオルグ殿に、お贈りしようと思ったのだが……」
私はその名前を聞いて固まってしまった。
「ランゲ侯爵子息のゲオルグ……様が?」
すると、ハンスが声を上げた。
「おじい様、その腕輪はシャルの初めての腕輪です。それは、私がいただきます。ねぇ? シャル、私にくれるだろう?」
伯爵と、ハンスにじっと見つめた。
なぜ、ゲオルグが私の腕輪を見たのか、状況はよくわからないが、私は乗馬大会の時のゲオルグを思い出した。
(……ゲオルグに腕輪を贈りたい。次は頑張っての応援の意味を込めて)
私は、目の前で真剣な顔をしているハンスを見た。ハンスは、嘘をつかない。どこまでも真っすぐで、正直だ。そのハンスが、自分の作った腕輪が欲しいと言ってくれている。
本当に欲しいと思っていてくれている証拠だ。
私は、エイドに言われた言葉を思い出した。
『お嬢、いいですかい? これからお嬢は、色んな男性と知り合うと思います。ですが、絶対に何が合っても、ホフマン伯爵家の坊ちゃんを一番に考えて下さい。そうすりゃ~間違いはありません』
(そうよ。エイドが間違いないって、言ったわ。私が優先すべきは、ハンス)
「伯爵、申し訳ございません。私は、ハンスに腕輪を贈ります」
「やった~~」
ハンスは嬉しそうに笑った。だが、ホフマン伯爵もどこか、嬉しそうだった。
「ふふふ。そうか、ハンスに贈ってくれるのか、それでは断るしかないな」
「申し訳ございません」
私が頭を下げると、ホフマン伯爵はにっこりと笑った。
「いや、問題ない。シャルロッテ嬢。腕輪を孫に譲ってくれて感謝する。ランゲ侯爵家子息殿については、私に任せてほしい」
私は、腕輪をハンスに渡した。
「どうぞ」
「ありがとう!! 大切にするね!!」
ハンスの嬉しそうな笑顔が、なぜか心に突き刺さった。
この星祭りのシュテルンリングのおかけで、私たちは随分と変わった。
ハンスは、自分の腕輪が、大聖堂の絵に描かれたことで、宝石への苦手意識も薄れ、以前より真剣に宝石の勉強を始めた。
そして、私は……。
ハンスの婚約者として、他は視界に入れずに生きて行く決意が出来た気がした。
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