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第二章 霧のかかった未来
22 星祭りの腕輪(4)
しおりを挟む大聖堂に行った次の日から、ハンスは人が変わったように、シュテルンリングの設計を始めた。
「シャル。白銀の世界の中で、恋しくなる色って何かな?」
ハンスの問いかけに一生けん命考えて答えた。
「恋しく? 青空の青?」
「ああ、それで去年は青い腕輪だったのかな? 他には?」
「そうかも!! ハンス、凄いわ!! 他は……緑かしら?」
一面の雪の世界にいると、植物などの緑が恋しくなることもある。
「ああ!! 緑か、いいね! ベースは緑にして……ベリーのような赤い実のイメージで……ああ、様々な種類の赤い宝石で、グラデーションを付けてもいいな」
ハンスは、次々にアイディアを出して素敵な腕輪を考えていた。
私も石選びなど手伝ったりもした。
なぜなら、シュテルンリングには、国王陛下は、1等級、2等級の宝石を使うことになっており、王太子殿下は、3等級、4等級の宝石を使うことになっており、王子殿下は、5等級以下の宝石を使うことになっている。
この宝石の等級は、10等級まで定められている。
ちなみに、私がホフマン伯爵に、初めて会った時に貰ったマッローネダイヤは4等級の代物だ。
ハンスは5等級の宝石をふんだんに使っていたが、私は、敢えて9等級と10等級の宝石を散りばめて雪の夜空に美しく輝く銀河を表現することにした。
すると、私の使用する等級の石のこの大きさなら、自分で制作もしてみてもいいと、ホフマン伯爵から許可が降りて、私は職人さんたちの指導の元、初めて自分の作品を作り上げたのだった。
(これは、陛下や王太子殿下に見せたら、手元に帰って来るのよね? 伯爵は私に下さると言ってくれたし……お父様……いや、小さいわね。エイドにプレゼントしよう♪ エイド、絶対喜んでくれるわよね)
私は自分で作ったシュテルンリングを眺めながら、「ふふふ」と笑ったのだった。
☆==☆==
王宮にて。
ホフマン伯爵は、陛下と王太子殿下と王子殿下に、ハンス設計の腕輪を見せた。
「いかがでしょうか?」
「おお、いいな。どうだ、サフィール」
陛下が腕輪を眺めた後に、腕輪を王子に手渡した。
「ふ~~ん。いいんじゃないですか? 無難で」
「……ふふふ、手厳しいですな」
ホフマン伯爵が困ったように言った。
「これ、伯爵は手を出したの?」
「ええ、まぁ、少し」
「だろうね、バランスいいしね。これでいいよ」
「おい、サフィール!!」
はっきりと物をいう王子に、王太子殿下が声を上げた。
「いえ、いいのです。奇譚の意見が有難いですから」
伯爵が笑うと、サフィールがニヤリと笑った。
「ホフマン伯爵、もう一人の子が作ったっていう腕輪見せてよ」
「……」
ホフマン伯爵は絶句した後に、シャルロッテの腕輪を見せた。
これは元々王子殿下が退出されてから、陛下と王太子殿下に見せようと思っていたものだった。
だが、王族に『見せろ』と言われて見せないわけには行かずに、ホフマン伯爵は、シャルロッテの腕輪を見せた。
「ほう……これは……素晴らしいな」
陛下がしみじみと腕輪を眺めながら言った。
「ええ、少々荒さがありますね……もしかして、本人に作らせたのですか?」
王太子殿下も感心したように言った。
「はい。一部ですが……現在の実力を知って頂きたいと思いまして」
伯爵の答えに、サフィール王子が目を輝かせた。
「しかも、手作り?! いいね~~。伯爵。その腕輪、僕に売ってくれないか?」
「こちらをですか?」
「うん。いくら?」
「いえ……これは、売れる程では……」
「じゃあ、頂戴?」
サフィール王子は真剣な顔で伯爵に言った。
伯爵は、考えた末に言った。
「……わかりました。ですが、王子殿下。その腕輪は、製作者が初めて作ったものです。大切にすると約束してくださいますか?」
「もちろん、きっと、何よりも大切にされると思うよ」
サフィール王子はそう言うと、シャルロッテの腕輪を持って、立ち上がった。
「じゃあ、僕はこれで~~おじい様、お父様。伯爵、失礼します」
サフィール王子は風のように去って言った。
「伯爵、息子が我儘を言って申し訳ない」
王太子殿下は申し訳なさそうに、ホフマン伯爵に謝罪した。
「いえ……」
実は、伯爵自身も驚いていたが、陛下の「いい後継者が育っているようで安心した」という言葉で、落ち着き、王太子殿下の腕輪の選定をすることにしたのだった。
☆==☆==
王宮内、サフィール王子の自室にて。
「ふふふ、本当にキレイだな……」
サフィール王子が先程、ホフマン伯爵に貰った腕輪を眺めていると、トントントンとドアを叩く音がした。
「どうぞ~~」
王子は機嫌よく答えた。
バン!!
「おい、サフィール!! 俺だって忙しいんだ!! なんだ? この、ふざけた手紙は!!」
入ってきたのは、ランゲ侯爵家のゲオルグだった。
「え~? ふざけてる?」
サフィールがとぼけたように言った。そんな態度に、ゲオルグはますます、声を大きくした。
「ふざけてるだろ?! なんだ、この『大切な物は預かった』っていう犯罪予告のような文は!!」
ゲオルグが青筋を立てながら言った。
そんなゲオルグを見ながら、サフィールは何喰わぬ顔で、ゲオルグの前に腕輪を差し出した。
「あげるよ♪」
「何だ? これは?」
ゲオルグが、腕輪を見ながら眉を寄せながら言った。だが、サフィールは構わず話しかけた。
「その腕輪どう思う? 好き? 嫌い?」
ゲオルグが腕輪をじっと見つめた後に言った。
「好きだ。この温かい雰囲気は、元気を貰えそうに思える。良い物だと思う」
穏やかに笑いながらいうゲオルグを見ながら、サフィールが嬉しそうに笑いながら言った。
「じゃあ、やっぱりあげる。ゲオルグに」
「そもそも、これは……」
ゲオルグの言葉を遮るように、サフィールが声を上げた。
「 ウェーバー子爵令嬢の初めての作品」
「え?」
ゲオルグは思わず腕輪を見つめたのだった。
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