龍の寵愛を受けし者達

樹木緑

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剣のお稽古

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「では殿下はこちらへ。

アーウィンは本当に見学でいいんですか?

剣を学んでおけば、いざという時に殿下を守ることが出来ますよ?」

叔父のその言葉に、
僕も一生懸命アーウィンを剣の稽古に誘った。

「そいうだよ、アーウィンも一緒にやろうよ!

その方が僕の方も楽しいし!

そしてさ、二人して国一番の剣の使い手になろうよ!

ねえ、ねえ」

そう言って彼の手を引いた。

僕のそのセリフ聞いた叔父が

「お、殿下、強気で出ましたね。

その意気ですよ。

いずれは殿下も陛下のように強くなって
この国を守って行って頂かなくては。

さあ、アーウィンもいらっしゃい。

自分の身を守る剣の使い方を教えましょう」

叔父がそう言ったにも関わらず、

「でも私は一度も剣を握った事が無くて……」

そう言い淀むアーウィンの手を無理やり引いて
僕は剣の並べてある壁際へとやって来た。

「アーウィン、誰でも最初は剣を持ったことが無いんだよ!

僕だって最初は怖かったけど、
今ではちっとも怖くないんだよ!」

そう言って壁に並んだ色んな剣をアーウィンに見せた。

アーウィンは少し尻込みしてたけど、

「アーウィンは剣を持った事がなければ…

そうだね、この短剣なんかはどうかな?

殿下も最初はこれで慣らしたんだよ。

鉄でできた短剣は割と軽いし持ちやすいし、
アーウィンにはぴったりだと思うが…」

そう叔父に言われ、
アーウィンが鉄の短剣を手に取ってみた。


「本当ですね。

凄く手にしっくり来ます。

家でお手伝いをして居た薪割り用の斧より軽いや」

「でしょ? 全てが騎士達が持つような剣ばかりじゃないんだ。

僕のだって子供用だよ!

ほら、叔父上の剣よりもずっと小さくて軽いんだ。

それに叔父上が言ったように
僕も最初は短剣から始めたんだよ。

今ではお城の周りにある森の入り口付近で出る
スライムなんかは短剣で狩れちゃうんだ!」

そう言って僕の剣を掲げた。

「おっと、殿下、
剣を振り上げる時は気を付けて下さい」

振り上げた瞬間アーウィンの顎をもう少しでかすってしまいそうになり、
叔父にお目玉を喰らってしまった。

「ごめんなさい!

僕、アーウィンが一緒に剣の練習をしてくれるのが嬉しいみたい!

少しはしゃぎすぎちゃったね」

そう言ってはしゃぐ僕の隣で
アーウィンが目を丸くして僕の方を見た。

「殿下ってもう魔物狩りをした事が有るんですか?!」

「うん。僕、3歳くらいの時から魔物狩りはしてるよ。

って言ってもスライムしか狩った事無いんだけど……

それに騎士さん達が大勢で一緒なんだけど……」

ちょっと言い方を変えたけど、

「いや、殿下、3歳だったんですよね?

凄いですよ。

いくら冒険者の子供だからって
3歳で魔物と対決する人って平民には居ませんよ?!

殿下は十分凄いです!」

そう言ってアーウィンはベタ褒めしてくれた。

だから僕も調子に乗って、

「うん、スライムはね、ポヨ~ンってしてるから、
短剣見たいな短い剣でついた方がやっつけ易いんだ!」

そうは言ったものの、
本当は嘶いた鳥に驚いた拍子に木の根っこにつまずいて、
偶然にそこにいたスライムを短剣で付いただけだった。

そうしたらスライムはプシュッと穴が空いたように
中の液体が流れ出して核だけになってしまった。

でも晴天の霹靂で、
僕はそれでスライムをやっつけるコツを掴んでしまった。

そして今だにスライム以外の魔物は狩った事が無い。

森の入り口らへんには、
一角ウサギやコウモリ、子蜘蛛なんかも居て
スライムと強さは対して変わらないけど
どれもすばしっこくて僕は空振りばかりだ。

僕の事をこんなに褒めてくれる
アーウィンには決して本当の事は言えない。

でも僕のスライム討伐に感化されたアーウィンが、

「3歳の殿下が頑張ってらっしゃったのに、
僕も負けいられませんね」

と、何やらやる気を出したようだ。

それから僕たちは少しの間叔父に付いて剣の練習をした後、
練習場を後にした。

「ねえ、ねえ、アーウィン、
剣の練習はどうだった?!

又行きたいって思った?!」

僕の問いにアーウィンはげっそりとしてこっちを見た。

「私は剣のお稽古にはあまり向いて居ないみたいです。

殿下には悪いのですが、
私は10歳にもなるのにスライムも倒せそうにありません……

でも、護身用に短剣を学ぶのも悪くはないかもしれません。

もしもと言う時に殿下の足手纏いにはなりたくありませんし…」

そう言ってアーウィンは項垂れた。

「大丈夫だよ。 最初は皆んなそうだよ。

それよりもさ、二人きりの時は
ジェイドって呼んでって言ったじゃない。

また殿下に戻ってるよ~」

やっぱり直ぐ直ぐ気楽に呼び合うのは難しいのかもしれない。

それよりも、僕はアーウィンが解毒の魔法を使った時から
とても魔法について興味が出た。

叔父は王家のもので魔法を使えたものはいないと言っていた。

でも、試してみるのも悪く無いとも言っていた。

「ねえ、夕食まで少し時間あるから、
魔法について教えてくれないかな?!

僕、魔法についてはこれまで余り学んだ事が無くて…」

僕がそうお願いすると、
アーウィンはビックリしたようにして僕を見た。

「殿下に魔法ですか?」

「うん! 僕、アーウィンの魔法を見てから何だか体が熱っちゃって…

凄く、凄くびっくりしたんだ。

多分僕には使えないかもだけど、
挑戦したくて!」

「まあ、悪いことではないですし……

殿下が学びたければ……

でも私もまだまだ見習いで勉強中ですし、
上手くは教えられないかもしれませんよ?」

アーウィンのその答えに僕は飛び上がって喜んだ。

「本当にいいの?

じゃあ、アーウィンのお部屋へ行ったらいい?

僕の御付きって事は、
僕のお部屋のそばにアーウィンのお部屋もあるんでしょう?!」

「あーそう言えばマーガレットさんから
今日の午後はお部屋へ案内してもらう予定でした……

いっけなーい!

彼女今頃僕を探しているかも!」

アーウィンのそのセリフに僕はゲゲっと思った。

またマギーの雷が落ちてしまう!

「アーウィン急ごう!

あー見えてマギーは怒るととっても怖いんだ!」

僕はアーウィンの手を引いて走り出した。

二階へ続く階段を登ろうとした瞬間、

「殿下、アーウィン!」

と、後ろからマギーの声がしたので、
僕達はギクっとして立ち止まった。

二人してテヘヘと後ろを振り向くと、
マギーが呆れたようにして、

「アーデンハイム公から連絡が来て居たので
剣のおけいのに行って居たのは知って居ました。

これからはちゃんと伝えてから行って下さいね。

まあ、公がいらっしゃってる時は四十八区、
公のところなんですけどね。

ハイ、分かってますよ、殿下のことはないんでもですね!」

嫌味のように言うマギーにエヘヘと肩をすくめてみると、
アーウィンは隣で

「申し訳ありません!」

と深々と礼をして居た。

「アーウィン、良いのよ。

公がいらっしゃってる時はこの御坊ちゃまは
何も私の言う事は聞かないんですからね。

振り回されないようにアーウィンも気を付けて下さいね」

マギーの背のセリフにムッキーとしていると、

「そう言えば、アーウィンの荷物は殿下の隣にある
新しい寝室に移動させておきましたので、
荷解きが終わったら夕食に降りて来て下さいね」

と言う情報に、
僕とアーウィンは顔を見合わせて目で合図した。

「あ、殿下、殿下は陛下のところへ行って下さいね。
お話があるそうですよ」

と言う事で、
僕は項垂れながら父部屋へと歩き始めた。

この頃の僕たちは本当に無邪気で、
これから二人仲良くなって
遊んだり、イタズラしたり、
又は共に学んだりして成長していくんだと思っていた。

これから僕たちの身の上に起こることなど、
ちっとも予想する事なく。
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