消えない思い

樹木緑

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第17話 当日2

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「あ、ここに居たんだね。
ランチの準備ができたよ」
とお父さんが呼びに来た。

「この家って凄いですね。
シアターもあるんですね。
それに蘇我総司なんて渋い選択ですね」
との先輩のコメントにお父さんは
「だろ? だろ? 
蘇我総司渋いと思うかい?」
と先輩に突っ込んでいる。

「いま、旬の俳優じゃないですか。
役どころも凄いし、キャストの名前を見ないと
蘇我総司だと分からない時もあるくらい凄い役者さんじゃないですか」
との先輩の誉め言葉に、
「いや~それほどでも」
とテレてみせるお父さんを見て先輩が
「??」というような顔をしている。

「これは、奥さんのお気に入りの?」
と更に聞いて来る先輩に、
「ほら、ランチ!」と僕は横槍を入れて、
「そうだよ、優君も待ってるよ」
と言った後お父さんは自分の口を手で押さえた。
そして、先輩はそれを聞き逃さなっかた。

僕達はダイニングに集まって
それぞれに顔を見合わせている。

初めにお母さんが声を発した。

「えー、改めて自己紹介を……
男ですが要の母の赤城優です。
そして…」

「バイオリニストの如月優さんですね?」
と先輩が尋ねた。

「あの、先輩、僕達、
決して先輩の事欺こうとした訳じゃ……」
僕が慌てて言い繕う。

そうしたらお母さんが、
「要は凄く君の事を信頼している。
僕らはそんな要を信頼している。
こんな風にばらすはずではなかったんだが、
元々、要がそう言う風に信頼している君だったら
話しても大丈夫なんじゃないか?と相談していたんだ」
と先輩に向かって言った。

先輩は僕を見て、
「要君、心配しなくても大丈夫だよ。
秘密にしてくれって事だろ?」と言った。

僕はこくりと頷いて、
「ごめんなさい、先輩。
本当はこんな風にバレずに先輩にはちゃんと折を見て話したかった」
というと、先輩は静かに僕を抱きしめて、
「秘密の共有だね。
何だかワクワクして嬉しいよ。
僕に話したいと思ってくれてありがとう」と優しくささやいてくれた。

そんな先輩の優しい気使いに僕は涙が止まらなかった。
そんな僕と先輩の背中を、
お父さんとお母さんはポンポンと優しく叩いて、
お父さんが、
「グループハグ!」
といって皆をまとめて抱きしめてくれた。

続けて、「それからもう一つ」と言って、
シャーロック・ホームズ張りのクルンとした付け髭と瓶底眼鏡、
肩までのパーマヘアーのかつらを取った後、
本当のお父さんの姿を見て、
先輩がすっとんきょーな雄たけびを上げたのは言うまでも無い。

それから先輩が
「君、僕のファンレター、読んでないよね?」
と、僕に一言。
僕は首を振りながら、苦笑いをするしかなかった。

ランチはサンドイッチとサラダ、
それと食後に先輩が持ってきたケーキを頂いた。

食事をしている間に、色んな沢山の事を話した。

お父さんがαであり、お母さんがΩであること。

そして、そんな二人が、僕達の通う学園で、
運命の番として出会い、恋に落ち、結ばれたこと。

山あり、谷ありだったが、僕を授かって嬉しかったこと。

お母さんが男のΩ、また同性婚、男のΩとして子を産んだこと等から、
世間の批判を避ける為、全てを隠すことを決めたこと、
色々な、お父さんとお母さんの歩みを先輩と分かち合った。

そして、僕は先輩の方を真っすぐ見て、
「先輩、僕はΩです。」
と告白した。

「うん、前に美術部を尋ねてきてくれた時に、
そうじゃないかな? とは思った」と先輩は言った。

僕はびっくりして
「隠してるつもりは無いんですが、
僕って分かり易いですか?」と聞いたら、

「いや、普通にしてる分には分からないんじゃないかな? 
Ω特有の発情の匂いもしないし。
でも、感の良いαには分かるかも」と先輩は言った。

「実を言うと、僕、まだ発情期が無いんです。
だから、あまり、人が集まるところへ行くのが怖くて……」
と僕が言うと、
「だからクラブ活動への参加が難しかったり、
映画館など人が集まるところに行ったりするのが難しいんだね」
と先輩は直ぐに察してくれた。

「そうなんです。
それも、特に長い時間帯でαの人達の傍にいるは怖くて……」

「僕の事も怖いと思う?」
そう先輩が聞いて、僕は
「いいえ、先輩は全然怖くありません。
でも、僕が不意に発情すると、
先輩にラットを起こさせてしまいます。」と答えた。

すると先輩は、
「じゃ僕はラット抑制剤を常備するようにするよ。
そして、要君が学園生活を満喫できるように、
僕なりに助けてあげる。」と提案した。

「そんな、先輩に僕なんかの為に
そんな枷を付けるなんて……」と戸惑っていると、

「要君、きっと学園に居るΩは要君だけではないと思う。
今まで困った状況には鉢会ったことは無いけど、
要君と話していて、Ωの心情も少し知ることが出来た。
僕はΩが常に抑制剤を飲み、自分を守るように、
αもΩを守るために抑制剤を常備する事は当たり前の事であって、
枷では無いと思うよ。
これはαが進んでやらなくてはいけない責任であって、
Ωの人たちの人権を守る行いでもあると僕は思うんだ。
それに、僕と要君はもう単なる関係じゃないだろう? 
秘密を共有してるし」
と先輩は言ってウィンクをした。

僕はお父さんと、お母さんの方を振り返った。

二人とも真剣に先輩の話を聞いている。
そして、
「そこまで言ってくれるんだから、ここは遠慮せずに好意を受け取ったら? 
高校生活がもっと広がるよ」とお母さんが提案する。

「そうだよ、Ωだからと言って、自分の人生を狭めてしまうことは無いんだよ。
僕も一緒にもっと良い解決方法を探していく事も出来るし」と先輩も勧めてくれる。

僕は少し考えて、「宜しくお願いします」と先輩に一礼した。


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