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告白ゲーム
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「適当に座って」
部屋に案内されてお邪魔しますと緊張気味に答えたら笑われた。イケメンの笑顔はさまになる。くそっ…爽やかさが鼻に付く。さりげなく頬を撫でるな!僕はお前が好きなんだから!
「どしたの?」
「寺本くんがカッコ良すぎるから」
「なにそれ?俺、褒められてるの?」
「!…褒めてない……?いや、褒めたのか?」
「ははっ、佐久間って面白い」
笑いながら僕をベッドに座らせ、部屋から出て行った。思えば三年で初めて同じクラスになるまであの時しかしゃべったことない。寺本の声は何度も聞いて顔を見てなくても、その声だけでわかるけど、僕に声がかかることはなかった。三年生になっても必要最低限の会話で、同じクラスで一緒に勉強するだけの人だった。
勇気あるよな…。僕なら…寺本だから受けたけど、他の四人なら絶対断ってるし、クジでたまたま引いた男に告る勇気は相当だ。それっていくらゲームに勝利しても寺本の汚点になるんじゃないのかな?
「なに考えてるの?」
「へっ?」
「何か、難しい顔してるから」
「いや、何でもない」
寺本はペットボトルのジュースとコップ、スナック菓子を袋ごと持ってきた。菓子の袋をビリっと破り、ジュースを注いでくれる。
「博也…って呼んで良い?俺の事も樹で良いからさ」
「いや…無理」
そんなふうに呼び合ったら、クラスで変な噂が流れたら困る。それに一ヶ月限定のお付き合いなら、終わった時に虚しさが残るような気がする。主に僕の心に……。
「寺本くん、近い」
ぴったりとくっ付いて座られたら、どうして良いかわからないから下を向く。
「良いじゃん。俺たち付き合ってるんだし。二人きりなんだから。ねっ?」
腰に回る腕に更に硬直して、隣に座るイケメンの顔を見る。近い!
「博也、可愛い」
「か、可愛くないから!それに、名前は…」
「じゃあ、いつになったら名前で呼ばせてくれる?」
「一ヶ月経ったら」
そうしたら、別れがくる。
だから、僕が名前で呼ばれる日は来ない。
寺本は僕を離さない。
ベッドに座り腰を抱いて、その腕をたまに頭に持っていき髪を梳く。手馴れてる感が半端ない。何人の女子と付き合って、このベッドに一緒に座ったのか?キスも、その先も……。何て乙女思考なんだと自分の考えに顔が赤くなる。
「ん?」
急に俯いた僕を不審に思ったのか膝をついて前から覗き込まれた。
「顔、赤い。緊張してる?」
「あ、当たり前だろ?初心者と上級者を同じ土俵に上げないでよ」
「俺もそんなに付き合ったことないよ?この部屋に入れたのだって男だけだし。佐久間も男だけど、付き合った子がここに入ったのは佐久間が初めて。俺もスゲー緊張してる。全然上級者とかじゃないから。そんなのに慣れてるのは藤井だよ。俺なんか可愛もんさ」
「嘘…」
途切れることなく彼女がいるっていつも噂は聞いていた。
「嘘じゃない」
目の前の真剣な顔に目のやり場に困る。おでこにかかる前髪をかき上げ、迫るイケメンに身体が動かない。ここまでする?いくら演技だって…。
動けない僕のおでこに柔らかい唇が触れた。
学校から二十分くらいの自転車通学だと言うと、寺本が送って行くと言いだした。
「まだ明るいから、平気」
「今の季節、直ぐに暗くなる。心配だから、お願い。送らせて?」
顔がイケメンなら心もイケメン。ゲーム参加でたまたま引いた僕にここまでするなんて…。凄いとしか言えない。家の前で送る、送らないのやり取りは迷惑じゃないかと思い、この演技派のイケメンに従うことにした。
ずっとこんな調子だ。
部屋に案内されてお邪魔しますと緊張気味に答えたら笑われた。イケメンの笑顔はさまになる。くそっ…爽やかさが鼻に付く。さりげなく頬を撫でるな!僕はお前が好きなんだから!
「どしたの?」
「寺本くんがカッコ良すぎるから」
「なにそれ?俺、褒められてるの?」
「!…褒めてない……?いや、褒めたのか?」
「ははっ、佐久間って面白い」
笑いながら僕をベッドに座らせ、部屋から出て行った。思えば三年で初めて同じクラスになるまであの時しかしゃべったことない。寺本の声は何度も聞いて顔を見てなくても、その声だけでわかるけど、僕に声がかかることはなかった。三年生になっても必要最低限の会話で、同じクラスで一緒に勉強するだけの人だった。
勇気あるよな…。僕なら…寺本だから受けたけど、他の四人なら絶対断ってるし、クジでたまたま引いた男に告る勇気は相当だ。それっていくらゲームに勝利しても寺本の汚点になるんじゃないのかな?
「なに考えてるの?」
「へっ?」
「何か、難しい顔してるから」
「いや、何でもない」
寺本はペットボトルのジュースとコップ、スナック菓子を袋ごと持ってきた。菓子の袋をビリっと破り、ジュースを注いでくれる。
「博也…って呼んで良い?俺の事も樹で良いからさ」
「いや…無理」
そんなふうに呼び合ったら、クラスで変な噂が流れたら困る。それに一ヶ月限定のお付き合いなら、終わった時に虚しさが残るような気がする。主に僕の心に……。
「寺本くん、近い」
ぴったりとくっ付いて座られたら、どうして良いかわからないから下を向く。
「良いじゃん。俺たち付き合ってるんだし。二人きりなんだから。ねっ?」
腰に回る腕に更に硬直して、隣に座るイケメンの顔を見る。近い!
「博也、可愛い」
「か、可愛くないから!それに、名前は…」
「じゃあ、いつになったら名前で呼ばせてくれる?」
「一ヶ月経ったら」
そうしたら、別れがくる。
だから、僕が名前で呼ばれる日は来ない。
寺本は僕を離さない。
ベッドに座り腰を抱いて、その腕をたまに頭に持っていき髪を梳く。手馴れてる感が半端ない。何人の女子と付き合って、このベッドに一緒に座ったのか?キスも、その先も……。何て乙女思考なんだと自分の考えに顔が赤くなる。
「ん?」
急に俯いた僕を不審に思ったのか膝をついて前から覗き込まれた。
「顔、赤い。緊張してる?」
「あ、当たり前だろ?初心者と上級者を同じ土俵に上げないでよ」
「俺もそんなに付き合ったことないよ?この部屋に入れたのだって男だけだし。佐久間も男だけど、付き合った子がここに入ったのは佐久間が初めて。俺もスゲー緊張してる。全然上級者とかじゃないから。そんなのに慣れてるのは藤井だよ。俺なんか可愛もんさ」
「嘘…」
途切れることなく彼女がいるっていつも噂は聞いていた。
「嘘じゃない」
目の前の真剣な顔に目のやり場に困る。おでこにかかる前髪をかき上げ、迫るイケメンに身体が動かない。ここまでする?いくら演技だって…。
動けない僕のおでこに柔らかい唇が触れた。
学校から二十分くらいの自転車通学だと言うと、寺本が送って行くと言いだした。
「まだ明るいから、平気」
「今の季節、直ぐに暗くなる。心配だから、お願い。送らせて?」
顔がイケメンなら心もイケメン。ゲーム参加でたまたま引いた僕にここまでするなんて…。凄いとしか言えない。家の前で送る、送らないのやり取りは迷惑じゃないかと思い、この演技派のイケメンに従うことにした。
ずっとこんな調子だ。
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