告白ゲーム

茉莉花 香乃

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告白ゲーム

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寺本と付き合って五日が過ぎた。僕は疲れている。机に突っ伏し、目を閉じた。

「なあ、お前もう告白した?」
「おう、玉砕したけどな」
「俺、まだ…」
「一週間以内にしないと罰ゲームとかって藤井が言ってたぞ?」
「そうなんだよ…ヤバい。明日までだよな…。今日の放課後、頑張るかな」
「おい!」
「あっ…」

今の会話で、僕の存在が続きの言葉を遮ったと思うといたたまれない。そうか…何故直ぐに告白してきたのかと疑問に思ってた。いくらノリでゲームに参加してたって、嫌なら何もせずにスルーすればいいのではと思っていたんだ。
罰ゲームか…。

好きでもない子に告白するのってどうなの?今更ながらの疑問を投げかける。誰にも返事を返されることはないそれは、僕の心にしこりを残した。

寺本は本当に演技が上手い。あんなに真剣に好きだの可愛いだのと連発されれば僕のガラスの心臓は破壊されてしまう。一ヶ月持つだろうか?




一ヶ月、のらりくらりと会わずに付き合ったぞとあの四人に言うこともできたと思うのに、毎日帰る頃には机に寺本の鞄が置いてある。約束もしてるから、反古にはしないのに…。

連絡先はその日のうちに交換し、ラインで毎日何度となくやり取りを繰り返す。流石に授業中に送られてくることはないけど、同じ教室にいても頻繁に送られてくる。それは、教室ではできるだけ今まで通りに接して欲しいとお願いしたからだ。あの時のゲーム参加メンバーには伝えただろうけど、それは知らないことになってる。

幸い寺本は僕が恥ずかしがってるだけだと思ってる。ああ、僕に寺本と同じ演技力があればもっと上手く対処できるのに。それでも好きって気持ちだけは嘘じゃないからそれは疑われることはないだろう。

どうやら、あの時のゲームで告白に成功したのは寺本だけのようだった。ちょうど一週間経った日に、教室の隅で五人がひたいを付き合わせて報告会をしていた。成功したのはたつきだけかと言う台詞に、僕にはなんのことかわかった。

じゃあ、もう終わりなんだと、その日は寺本の鞄を無視して帰ろうとすると怒られた。

「どうした?何か用事?」

痛くない程度に腕を掴み、情けない表情はなかなか見ることができない。

「えっ…だって…」
「だって?」

…もう終わりじゃないのとは言えなかった。

やっぱり、一ヶ月は続くのか?あの時、一瞬聞こえたのはたつきだけって言葉だった。もしかしたらその時に一ヶ月は頑張れと言われたのかもしれない。大変だな。どんな褒美が待ってるんだろう?

土曜日も日曜日も会いたいと言われた。寺本はただ通り過ぎるのを待つのが嫌なのかもしれない。僕をからかって楽しんでるのかだんだんスキンシップも激しくなる。

最初の日におでこにキスされてから毎回会う毎にその儀式は続いている。ハグもよくする。体育会系のノリなのか?僕は弱小陸上部だったけど、こんなことはない。

しかし、寺本もおでこが限界だろう。…と思っていたのに、その唇は頬に下りてきた。

「や、やめて…」
「恥かしい?。博也、可愛い」

名前では呼ばないでと言ったのに二人きりの時は守ってくれない。教室では呼ばれないから許してるけど、辛い。あと一週間したら呼ばれなくなるんだろ?

あと一週間で丁度一ヶ月。その日の日曜日には、僕から外で待ち合わせたいと持ちかけた。今までは、思い出になるようなことは避けたかったからどちらかの家か受験生らしく図書館。受験生で良かったよ。勉強という言い訳が会うことと、遠出をしないことを許してしまう。お互いの家で部屋にこもってても、勉強と言えば親は納得する。勿論本当に勉強もするけど寺本は僕に触れるのが好きみたいだ。ペット扱いなのかな?そりゃ、僕は小さいよ?でもペットはないでしょ。時には膝に乗せて抱きしめる。僕は恥ずかしさから、いつもどうすることもできない。

振りほどきたくはない。ずっとここに…この腕の中に居たいんだ。

寺本の唇が僕の唇に触れそうになる。両手を伸ばして距離を取る。

「嫌?」

真剣な目は本当にキスしたいと言われてるみたいで泣きたくなる。ここまで演技をしなくても誰も不審に思わないよ。いくら役者になりたくてもそんなことまでしなくていい。

「付き合って一ヶ月が過ぎれば…」
「名前も…そんなこと言ってたな。じゃあ、たつきって呼ぶのと、キスもその日が解禁なんだな」

やけに嬉しそうな顔と声。
本当にキスしたいの?
そんなはずない。
残酷だよ寺本。

断れば良かった。何度も後悔する。でも、幸せな一ヶ月だった。辛くはあったけど楽しかったし、これで好きって気持ちを忘れられるかもしれない。
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