告白ゲーム

茉莉花 香乃

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告白ゲーム

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今日で一ヶ月。
朝から良い天気でお出かけ日和だ。

『ゲームのこと知ってたんだ。放課後の教室で話してたの聞いてしまって。今日で一ヶ月だから寺本くんの勝ちだね。おめでとう。じゃあ、さよなら』

何度も繰り返し練習して、スラスラと言えるようになった。泣いてしまいそうだ。

二人の家の中間あたりにある大きな公園のトイレの裏手にあるベンチが待ち合わせ場所。どうしてここにベンチを置いたのかと思うほど、あまり人の通らなそうな所で、木々がベンチを隠している。図書館以外の外で会うのは初めてだ。

緊張する。約束の三十分前に到着した。自転車を止めて、待ち合わせ場所へ。ベンチに座り深呼吸する。

「早いんだな」

ベンチに座り五分もしないのにもう寺本が現れた。

「寺本くんも早いね」
「当たり前さ。今日から名前で呼んでくれるんだろう?なんか嬉しくってさ。落ち着かないから、早めに家出たんだ」
「そうなんだ」

どういうつもりなんだろ?
でも、僕から先に言わなくちゃ。

『お前なんかと付き合いたくなかったけど、ゲームだから仕方なかったんだ』

そんな言葉は聞きたくない。
先に言わなきゃ。

「あのさ、話があるんだけど」
「何?」
「あ、あのさ…ゲームのこと知って、たんだ。あの時…聞いて、しまって。だ、だから、今日で一ヶ月、だから、寺本くんの勝ちだね。お、おめで、と…じゃ、さよな…」
「何それ?待って」

泣かないようにと思うけれど、ポロポロと涙が落ちる。

「は、離して」
「じゃあ、何で泣いてるの?」
「だ……騙されたから」
「知ってたなら、騙されたんじゃないよな?」
「……」
「おかしいなって思ってたんだ。なんでも一ヶ月って言うからさ」

これ以上無様な姿は見せたくなくて帰ろうとするけれど、力で敵うはずはない。寺本の手は僕の二の腕をがっちり捕まえている。

「とにかく、座ろう」

僕が座れずに、腕を掴まれたまま立ち尽くしていると膝の上に座る?といつもの演技力を見せつけた。誰が見てるかわからない公園でそんなことはできない。僕はすでに誰にも見られたくない泣き顔だけど、これ以上恥ずかしいのはやめて欲しい。慌てて座ると残念とイケメンスマイルが返ってきた。

「全部、聞いてた?」

僕が泣き止み、落ち着いてから寺本が聞いてくる。ゲームの中の告白だと知っていても、謝るどころか全然焦ることはない。おまけに笑顔だ。

「あの日、弁当箱忘れて、五人で話してるから入り辛くて」
「盗み聞きは良くないな」

どうして僕が怒られるのか?落ち着いている寺本は開き直ってるのか?普通、言い訳くらいするだろ?

「誰があの時のくじ用のメモ用紙出したか覚えてる?」

もっと詳しく思い出せと言われて、思わず睨みつける。

「博也、泣き顔で睨まれたら、もっと虐めたくなる。ほら、思い出した?」

睨むのは諦めた。
えっと……。

「寺本くん」
「そうだよ。じゃあ、誰が一番にくじを引いたか覚えてる?」
「覚えてない」
「俺が一番に引いたの!」
「そうなんだ」

強く言われてもその意味はわからない。

「あのくじにはカラクリがあって、みんなにはミシン目から切った綺麗な切り口の紙を渡した。俺が書いたのはリングから破ってギザギザの付いてる紙。そして、一番にくじを引くとそのギザギザの付いた紙を取れる」
「えっ…」
「そうだよ。利用したんだ。俺は博也が好きなんだ。何度も言ったよ?信じてなかった?」
「だって、ゲームだから…」
「いくらゲームだからって男に告るか?」
「だから、そんなに勝ちたいのかなって…」
「そんなゲームに勝ったってさ。それに、好きでもない男にキスしたいとか思わないだろう?」
「演技の練習かと思った」
「え、演技?」
「うん。役者になりたいのかなって。いつも凄い演技力だなって…」
「そんなふうに思ってたんだ?博也は俺を勝たせるためだけに付き合ったの?」
「……」

寺本は好きと言ってくれた。あれが演技ではなく、本当の寺本の気持ちなら僕も本当の気持ちを言ってもいいのだろうか?どんでん返しで、今のが嘘でした…とかないよね?僕が疑いの目で見るから、寺本は困ったなと頭をかく。

「じゃあさ、一旦別れよう」
「えっ?」

ボロボロと今まで以上に流れ落ちる涙は、拭われることなく頬に落ちる。

「博也、泣かないで?やっぱり、無理。泣かしたくない」

公園なのも忘れて、寺本に抱きしめられるまま胸に縋り付く。

「その涙の意味を教えて?」
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