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第二章 お見合い編
赤福
レレさんとマキノさんの楽しそうな声で目が覚めると、もう日は高い。昨日がよほど疲れたのか寝坊したみたいだ。別に何の用事があるわけでもないけれど。
「涼風お願い聞いてくれてありがと~~~!メッチャいい!!超イケメン!!」
「あらあらうふふふ、これ、いいわね」
私が起きたのに気がついたのか、涼風が私の腕に飛び込んできた。
「ひ、ヒヨコ!?」
黄色いフサフサの毛足の着ぐるみ。おでこの部分にキャップのつばの様にオレンジのクチバシがあり、その上に黒い可愛い目が刺繍されていて、小さなヒヨコが爆誕している!!!
袖の部分はヒヨコの羽のようになっていてまんまるなフォルムに悶絶してしまう!!
「レレさん天才です!!」
「お嬢様も気に入ってくださると思ってました!!最高です!!この仕事勝ち取って良かった!!!」
「お嬢様も涼風も着せ甲斐がありますからねぇ、侍女冥利につきますねぇ」
そうかな?涼風はそうだけれど。
でも嬉しいな。
「あと少しで皆さんとのランチがありますし、朝食は軽めになさいますか?」
「あ、お茶だけいただけますか?昨日お土産に赤福を買ってきたんです。みんなで食べませんか?」
「おぉ~~~!イイっすね!最高級の玉露を淹れましょう!!たしか狐の野郎からのプレゼントにありました!!」
「涼風も、たべる?」
涼風はいつもどおりフルフルと顔を横に振る。
「天衛は物を食べませんよ?気遣いはいりません」
それは知ってる。
知ってるんだけど、赤福を売る老舗のお団子屋さんに興味深そうに顔を向ける涼風の為に買ったのだ。
——食べなくとも、興味がある?
——匂いかな。
——それとも鑑賞用?
ふと思い立って、マキノさんにお願いをする。
「マキノさん、巫女装束の準備をお願いできますか」
「承知致しました」
仕事のできるマキノさんは理由を一切聞かずにすぐに準備をしてくれた。
長い髪をレレさんが白い絹のリボンで一つにまとめ、巫女の正装が出来上がっていく。
「三方を」
三方は神様に捧げ物をする時に使うお盆のことだ。
足がついていて、20センチほどの高さがあり、お米やお酒を置くのに使う。
「すぐに手配します!!!」
バビュンと音がするかと思うほどの速さで部屋を出たレレさんは、私の着付けが終わる頃に大中小の三方を用意してくれた。
シゴデキ。
「祭壇を別室にご用意致しますか?」
私が何をするのか大体察してくれたらしいマキノさんが聞く。
「ううん、いいの。テーブルに人数分のお皿をお願いします。あとは私がやるから」
四人が座れる丸テーブルにマキノさんがお皿を出していき、レレさんが涼風用の椅子に分厚い本を置いて高さを調整してくれた。
玉露を淹れてテーブルに置く。
「涼風、おいで」
キョトンとしたひよこを抱っこして椅子に座らせ、目の前にお茶と赤福の乗った三方を静かに置く。
私が涼風の正面の床に正座して平伏すると、マキノさんとレレさんも背後に同じ様に座ってくれた。
「恐み恐みも白す。
日々の御守護により今日の安らぎを得しこと、
心より感謝申し上げ奉る」
涼風がビックリしない様、優しい柔らかい声を意識する。
何となくだけど、そうした方がいいような気がして。
————パンッ!!!
柏手を打つ音がして顔を上げると、手を合わせたヒヨコ君を取り巻くようにやわらかな風が吹いている。
布面がフワリと上にあがり、可愛いお顔が見えた。
「び、美少年…………!」
レレさんの呟きが小さく聞こえた。本当に可愛らしいお顔。キラキラした薄緑の目に長いまつ毛で影ができている。
三方に乗せた赤福と玉露から湯気のような淡く光る白い煙が上がって、小さな可愛いお口に吸い込まれていく。
「食べてくれた!!!」
嬉しくて思わず声が出て、涼風に駆け寄り頭を撫でると、すぐに私の腕の中におさまり嬉しそうにする。
「ひめしゃま」
「声まで可愛い!!」
レレさんが叫び、マキノさんが呆気に取られた顔をする。
「喋るって聞いてましたけどマジでしたね~~~!!前代未聞!!」
「私達もいただきましょうか。月宗様いっぱい買ってくれちゃって何箱もあるんです…………」
————「はえ~お姫さん、自分凄いなぁ」
席につこうとした時窓の外から声がしてテラスを見ると、テラスの柵に雲雀君がしゃがんでる。すっごいバランス感覚!
「ここは男子禁制ですわよ、雲雀殿」
マキノさんがピシャリと言う。
「だからここまでやんか。固いこと言わんといて。それ、僕にくれへんかなぁ」
「赤福?いいよ?まだ新しい箱沢山あるの。持って行って?」
私が言うと、にっこり笑った雲雀君が涼風の分を指差して言う。
「ちゃうちゃう、ジャリ坊のお下がりを貰いたいねん」
涼風は煙の様なものを吸い込んだだけで、赤福もお茶も一応きれいなままそこにある。
「??多分涼風のご飯はもう終了だから大丈夫だけど…………新しいの、あるのに……」
「お姫さん、自分どんだけ凄いことしたかわかってへんやろ。これ、他の人の前でしたらあかんで?約束してや?」
「??よくわからないけど分かったよ?みんな涼風にご飯あげたくなっちゃうもんねぇ」
「………………」
にっこり笑った雲雀君は、三方ごと涼風の分を持ってどこかに消えた。シュバって消えた。
うんあれだな。八咫烏は忍者なのかも。
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