【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

トラウマ

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「いいかお子様ども!!今日は俺が教師だ!ちゃんと言うことを聞く様に!!」

 縁側でリツさんが二人を正座させ、何やら講義が始まっている。

「リツ、いいからはやくしろよ!」

「リツ兄、早く」

「言ってみたかっただけっす!少しぐらいいいでしょうが!!!俺の得意なの事務魔法しかないんスから!」

 ワイワイやっているので、邪魔しない様にお茶とパンケーキを出すと子供達の目線がパンケーキに釘付けになってしまった。失敗した。五段パンケーキのビジュアルに抗える子はいなかった。

「コラ!自分から通信魔法陣教えて欲しいって言ったんでしょうが!!おわっ!天女さん!美味しそう!よし、生徒達!食べてからにしよう!!!」

 子供達は教えて欲しいことがあると自分から色々な大人の元に行く様になった。

 二人で手を繋ぎ、私の知らない軍部の人にまで「〇〇兄、教えてください!」と言うらしい。可愛さに絆されて皆何でも教えている様だ。

 私を守ることに特化したことばかりで、偽物の離れにいたあの時、あれができればこれが出来ればと後悔しているものばかりと聞いている。

 子供達なりに、トラウマに向き合おうとしている。

 私はというと、実はまだ怖さがあって他種族の集まる国際パーティーは欠席させてもらっている。

 それに、一日一回必ずリヒト様の執務室に通う様になってしまった。
昼間に一度顔を見ないと途端に不安になってくる。

 外国へ出るお仕事は陛下が代わってくださっているそうで、リヒト様が私から離れない様配慮してくださっている。

「リツさん、子供達をよろしくお願いします」

「あ!昼デートっすね?了解しました!ごゆっくり!!おい!クロム!それ俺のだろ!食うなよ!!」

 ワイワイ楽しそうな三人を残し、ミリーナさんに目線で合図をすると、心得た様にすぐに着替えとヘアセットに取り掛かってくれた。

「毎日……ごめんなさい……」

「何をおっしゃっているのですか!先代の王妃様など一日五回もお着替えをなさりましたよ!?それにわたくしの楽しみなのです、何度でも!いつまでも!やりましょう!!」

 リヒト様に会うためにおしゃれをして、仕事中の彼に会いに行く。夜には帰ってくるのに、朝まで毎日一緒にいるのに。

 彼の顔を見て、存在を確かめて、今私がいる場所を再確認する。

 朝送り出したばかりなのにソワソワしたり涙ぐんだりし始めた私を見て、ルルリエさんが提案してくれ始まったこの昼のデートは、王宮で一緒にランチをたべたり、お茶をしたりと短いデートの様で楽しい。

 昼間に一度彼の存在を確認できれば安心してまた離れに戻れる。

 リヒト様も幹部のみんなも、ルルリエさんがトラウマとして報告したため快く応じてくれている。

 母屋を超えて、王宮へ。
ミリーナさんが後ろについてくれている。

 宮女達も軍人さんも、官吏達も、私を見ると足を止めて頭を下げ、通り過ぎるまで動かない。

 前は一礼程度だったのに。王族と同じ扱いをされる様になった。
中には涙ぐむ人までいる。

「つむぎ、今日は早いな。迎えに行こうと出た所だった」

 溶けそうな笑顔のリヒト様が正面の大階段を降りてきて、私を抱き上げて下さった。

「ミリーナ、下がっていい、帰りは離れまで送っていく」

「承知致しました」
ミリーナさんがニコニコ顔で一礼し、下がっていく。

「はぁ、番可愛い。毎日やばい。可愛い天女が毎日俺を訪ねて来る」

 リヒト様が嬉しそうにしてくれるので、甘えさせてもらっている。
お仕事を邪魔するわがままな妃なはずなのに、付き合って下さる。

「早く…………会いたくなって……ちゃんといるか、確かめたくて……ごめんね」
 
「執務室にお前の席を作ったから好きに来い。俺のそばにいるという仕事を与える!!」

 リヒト様もみんなも、私のトラウマを一番に考えてくれる。
一度昼間にすれ違い、会えずに過呼吸をおこしてからはこのお昼のデートを最優先にしてくれている。

 首に手を回して抱きしめる。
大丈夫、ちゃんといる。

「今日は庭園に昼飯を用意させてる、明日はスカーレットの所に買い物にいくか。店ごと買ってやる」

「一緒なら、どこでもいい。ありがとう」

 ノリノリのリヒト様に心が救われる。
子供達は前を向いてトラウマに向き合ってるのに私は対処療法に留まっている。

「ルルリエさんがね、元の体重にもどったら、夜、母屋に行っていいって」

「何だと!?よし!今日お前は倍量食え。俺のも食わせる!!!」

 途端に真剣にぶつぶついい出した彼が愛しい。

「ふふふ、あと少しだよ。今日たくさん食べたあと測ったらいけるかも」

「!!!!!」

 王族庭園のガゼボのソファーで膝に抱かれて給餌をうける。
私がリラックスできる様に使用人は下げてくれている。

「あと一皿?……いや万全を期して三皿は食わせるか…………」

「もうお腹いっぱいだよ?」

「もう!?!?」

 人間女子の一人前は食べたのに……

「子供ら抱いて体重計のれ!!!!」
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