【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜

雨香

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最終章 人族編

叙勲の儀

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「はぁ~~~クロム君が最高に尊い」

 小さなシルバーの式典用の軍服を着たクロム君の美少年さが倍増してる。
今回の一番の功労者としてクロム君に階級が付き、一足飛びに上がった。

「その歳で俺達と同じ階級~~~!?生意気~~~!祝いは何にするか考えとけよ~~~!!」

「弟の叙勲の儀に参列できるなど、兄として鼻が高いですね」

「クロム坊、頑張ったからなぁ。俺泣いちゃうかも……」

 ルース君もユアンさんも、クロードさんもめちゃくちゃ嬉しそう。

 クロードさんに肩車されたクロム君のちょっと照れた笑顔が可愛い。

 今日はなぜかレスターが私の腕の中にずっといる。
珍しく、大人しい。

 広間に入ると両脇に軍人さんがずらっと並んでいて、圧倒されてしまう。
ユアンさん達は意に介さずに真ん中をずんずん前に進んでいくので、私はレスターを抱いて部屋の壁伝いに奥に行く。

 王座には陛下と、傍に立ったリヒト様。二人ともサッシュのついたシルバーの軍服で、カッコいい。

 クロム君を下ろしたクロードさん達は両脇の軍人さん達の一番前に立ち、クロム君の叙勲の儀を見守るように並んだ。

「クロム・レイリン、竜国への多大なる貢献、伯父として嬉しく思う」

 陛下は跪くクロム君ににっこり微笑みかけ、続ける。

「我、エルダゾルク国王として汝の顕著なる功績を称え青聖勲章を授ける。
汝の尽力は、我が国と民に大いなる恩恵をもたらした。この勲章はただ戦う者ではなく守る者の証である。この栄誉を誇りとし、今後更なる精進と献身を期待するものである。
敬神崇法、忠君愛国――その心を以て道を踏み外すことなかれ。   以上、告げおく」

 ザッと並んだ軍人達が敬礼をする。
ビリビリする緊張感に気圧されてしまう。

「さぁクロム、おいで~~~!伯父さんがつけてあげよう!」

 リヒト様がクロム君を抱き上げて陛下の元に戻ると、陛下自らがクロム君の胸元に勲章を付けてくださった。いつもの陛下に戻ってほっと力が抜けた。

 青く透き通った宝石が使われた、子供の軍服にはやけに大きくみえる勲章。金の縁がキラキラとして光に反射する。

「母上、俺も、兄上みたいになれるかな……」
レスターがポツリと呟く。
ずっと気にしてたんだなぁ。この歳で、自分が役立たずだと思う事がどれだけ苦しいか計り知れない。

「レスターはレスターらしくいればいいの。兄上は何でもレスターに教えてくれるよ?分からないことは何でも聞けばいいの。クロム君だって、偵察のお仕事はルース君に習ったはずだよ。二人で、ルース君の所に行ってごらん」

 私達の少し前に立っていたルース君が首だけでこちらを振り向いてにっこり笑った。

「クロム君が強いのはあの三人のお兄さん達のおかげ。レスターも同じ。レスターにはクロム君がいるから、四人もいるでしょう?」

 ユアンさんがん゛んっと咳払いをして、クロードさんが袖で目元を覆った。
ルース君は後ろ手に組んだ手をこちらにヒラヒラと振ってる。

 レスターはそれを見てギュッと私の着物を掴み、「はぃ……ははゔぇ……」と小さく言った。

 辛い思いをさせてしまったけれど、レスターの成長が嬉しい。きっとそれは陛下やリヒト様も同じ。
レスターの想いを汲んで、無理に褒賞を与えたりしないで下さった。

「私もリヒト様も、二人ともに感謝してるの。ありがとうね、レスター。大好き」

「ははゔぇ~~~」

 お得意の額グリグリが贈られる。優しい子に育ってくれて嬉しい。

「今日はクロム君のお祝いと、二人へのありがとう会だね!たっくさんご馳走用意してあるよ!」

「母上も沢山お食べ下さい。俺は、母上がちゃんと食べてくださるのが嬉しいです」

 泣き笑いの顔で可愛い事を言うレスターとおでこを合わせてスリスリとしてあげると、猫の様に気持ちよさそうに目を細めて嬉しそうに笑った。

 叙勲の儀が終わり、クロム君が真っ直ぐ私の元に飛んでくる。

「ははうえ!」

「クロム君!かっこよかったよ!!素敵なの貰ったね!」

 照れ笑いのクロム君が私の腕に飛び込んできて両手で二人の息子を抱く。小さな子竜達のいい匂いと高い体温が心地いい。
同じ様にクロム君ともおでこをスリスリすると、こっちはぎゅうと首に手を回してしがみついてきた。

「はぁ、二人とも、紬が重いだろうが。こっちこい乗せてやるから」

 リヒト様がひょいと子竜達の首根っこを掴み、両肩に乗せた。二人とも嬉しそうに笑う。



◇◆◇



「何これやばい無限に食える」

「母上————!!もう無くなった!!」

 黒豹王子からお見舞いにスパイスセットを頂いたのでフライドチキンを作ったら、獣人の心を鷲掴みにしたらしく皆取り合いになっている。

「ふわぁ~~~うっま~~~!!殿下これ食堂でも作らせて!!!」

「つむぎ以外に作れんのかこれ。獣人じゃ無理だろ……」


「おかわり沢山あるから待って!今クロム君が蝋燭吹き消すから!」

「ケキ、大きい!」

 いつもはパウンドケーキやシフォンケーキばかりだけれど、今日はお祝いなので、スポンジを焼いて大きな四角いイチゴのケーキを作った。間にたっぷりの生クリームとイチゴ、上にもちゃんとデコレーションして、アイシングでクロム君とレスターの名前も入れてありがとうと書いた。

 お誕生日ではないけれどお祝いなのでクロム君に蝋燭を吹き消してもらう。

 竜人はみんなキョトンとしていたけれど、私一人で拍手しておめでとうとクロム君に言うと、ニュアンスは伝わった様で嬉しそうに笑ってくれた。

 今日はお子様がメインのパーティーだからお子様メニューだ。

フライドチキン
ピザ
巻き寿司
ポテトサラダ
フルーツポンチ
大きなイチゴのケーキ

 みんな信じられないぐらいたべるのでおかわりはいっぱい作った。

 リツさんとミリーナさんが奥からどんどんおかわりを出してくれる。

 隣にいたリヒト様が私をひょいとあぐらの上に乗せて、口の中にイチゴを入れてくる。

「ちゃんと食え」

「みんなみたいには食べられないよ」
苦笑して言うと、どんどん口の中に入れ込もうとする。

 お返しにと巻き寿司をリヒト様の口元に持っていくと分かりやすく固まってから嬉しそうにパクついた。

 そうだった、給餌は愛情表現だった。

 これを知ってからは一人で食べられる息子二人にもせっせと給餌をすることにしている。
二人ともご飯に夢中で喜んでるのかどうかは知らないけれど。

「母上!!俺にも!!」

 レスターが飛んできて、隣にいるクロム君も口を開けてる。
やっぱり給餌、大切そうだなこりゃ。

 二人の口に巻き寿司を入れてやると、満足そうにまた目の前のご馳走に取りかかっていった。

 みんな嬉しそうで楽しそう。

 ユアンさんもクロードさんもルース君も時々で二人の頭を撫でる。リツさんまでお手伝いの合間合間で頭を撫でていき、その度に二人が目を合わせてくすぐったそうに笑う。

「俺らのガキの頃とはえらいちがいだな」
リヒト様が唐突に言う。

「そうなの?何か変?」

「ここにいる奴らは皆貴族だから乳母に育てられた。俺も両親とはあまり交流はなかったな」

「俺は母親だったけど、リヒトと一緒に育ったからな、そりゃあ厳しかった…………」

 キッチンでお茶を用意しているミリーナさんに聞こえない様に小声になるクロードさんが可笑しい。

「私は二人の子育てを楽しみたいから……」

「つむぎはそれでいい。こいつらも、今更お前から離れられんだろ」

 リヒト様はそう言って優しい目で二人の子竜をみた。

「卵ちゃん達が産まれても、乳母はいらない。お母さんがまた助けに来てくれるって言ってくれてるし、ミリーナさんとルルリエさんもいるから」

「ああ、またユアンに送迎させる」

「楽しみでございます」

 ユアンさんすごいな。いつ何時でも紳士。

「それにね、お兄ちゃん二人が頼もしいから」

私の台詞に子竜二人がにっこり笑う。
この子達の笑顔が沢山見れて本当にうれしい。

 離れのパーティーに庭からの柔らかい風が通る。
本物の離れ。リヒト様がいて、子供たちが笑ってる。
私の幸せが生まれる場所。



◇◆◇
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