精霊のジレンマ

さんが

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タカオの街のドワーフ

75.古のスキルとアンクレットの精霊

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崩れ落ちる俺を、ヒト型のクオンが受け止める。ムーアが受け止めようとしたが、影から出てきたクオンの方が少し早かった。

『「大丈夫?」』

完全に意識を失ったと思った瞬間、頭の中がクリアになる。何かが覚醒したとかではなく、頭に流れ込んでくる光景が止まる。

そして俺達の目の前に、小さな姿の俺が現れる。

「誰?」

アシスで初めて感じた命の危険に、クオンの殺気がスゴい。ひりつくような空気が周囲を支配する。

『待って!』

クオンと小さな俺の間にムーアが割って入る。

『あなたは、もしかしてアンクレットの中に居る精霊?』

「そうだよ、僕はアンクレットの中の精霊。そして、アンクレットとブレスレットを造ったのは僕はだよ」

『クオン、大丈夫よ。危害はないわ!』

クオンは、ムーアの言葉に安心したのか、それとも知らない精霊を嫌ってか、ネコの姿に戻り影の中に消える。

「ふぅっ、殺されるかと思ったよ」

『説明してくれないかしら?』

「僕は、空間の精霊ドッペルゲンガー。今の所有者はカショウだから、僕がこの姿になってしまうのは許して欲しいな」

「空間って、俺と真逆の属性になるけど大丈夫なのか?」

「現に今、問題になってないでしょ。逆にカショウの頭の中に流れ込んだ光景は、僕が別空間に逃がしたんだよ」

俺が理解出来ていない事に気付くと、空間の精霊は“パチンッ”と指を鳴らす。
頭の中に、俺と小さな俺が向かい合っている光景が映る。

「これは・・・?」

「そうだよ、ムーアの見ている光景だよ。カショウの吸収したスキルは“視覚”だよ。契約している、精霊達の見ている光景が一斉に頭の中に流れ込んだんだよ」

「眩しいだけだったけど、あれが光景の集まりなのか?」

「それはリッターのせいだよ。リッターの集まりが、それぞれ見ているものだからね」

「それなら納得出来るな。確かに眩しいだけになるな」

『それで、今回は何故出てきてくれたの?それはアンクレットの中でも出来たんじゃないかしら?』

「視覚のスキルは、これから重要になると思うよ。僕が一緒なら使いこなせるからね」

『それじゃあ、あなたも契約するのかしら?』

「カショウが身に付けている事が、すでに契約していると同等なんだけどね。それじゃあ信用してもらえないか?」

『違うわ!契約する事で、より大きな力が得られる。それをしないという選択はないわ』

ムーアの真剣な眼差しは、言葉と裏腹に中途半端は許さないと言っている。

「分かったよ。契約するよ」

いつも通りで、俺を抜きにして精霊同士で話が進んでいく。

「あのさ、ちょっとイイか?無属性と空属性で相反するけど、契約して大丈夫なのか?」

「今が契約していると同等だから、特に問題ないよ」

『カショウ、早く名付けしてしまって』

そんなに簡単に名前なんて出てこないんだけど・・・とは言えない。

「ナレッジ、名前はナレッジ!」

そして、いつも通りにブレスレットには吸い込まれ・・・ない。

「言っただろ。僕自体がブレスレットだから、そんなに変化はないって。視覚スキルは僕が制御するから安心して大丈夫だよ」

そう言うと、今度はナレッジの姿が消える。一応、魔石からのスキルは吸収出来たようだ。

ゴブリンキングからは、嗅覚スキル。そしてコボルトの王からは、視覚スキル。
この感覚が「古の滅びた記憶」になるなのだろうか?ゴブリンの話す言葉が分かるようになったように、今ならコボルトの話す言葉も理解出来るのだろうか?


そこに誰かの声が響く。

“我の眼を使う者よ、古の滅びた記憶を集めよ。さすれば道は開かれん!”

「今のは、コボルトの王の声?」

『分かるのは、古の滅びた記憶は1つではなく複数あるという事ね。それが、スキルなのか言葉なのか、それとも他にも何かがあるのか?それは分からないわね』

「どうすればイイと思う?今の声を信じて大丈夫だと思うか?」

『簡単に信じるなんて、あなたらしくないわよ』

「結構素直で騙されやすい性格なんだけどな」

『何を悩んでるのかしら?』

精霊達の前で、正直に言って良いかどうか悩む。しかしムーアの前では隠し事は無理だと思う。

「キングやクイーンクラスの魔石が古の滅びた記憶を持っているとして、それ目当てで魔物を倒す事は正しい事なのか?」

『繰り返すけど、あなたらしくないわよ。考えて分からないなら行動するしかないでしょ。見て、知って、それから判断すればイイんじゃない?』

「敵対する魔物を見逃すかもしれないぞ」

『目的は、多くの精霊を集める事よ。魔物を倒す事ではないでしょ』
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