76 / 329
タカオの街のドワーフ
76.廃鉱の終焉
しおりを挟む
ゴオオオォォォーン
ゴオオオォォォーン
爆発ではない。地響きのような音が2回聞こえた後、大部屋全体を振動が走る。
大部屋の天井からパラパラと小さな小石が降ってきて、全体が僅かに振動している。
爆発というよりは、限界まで削りとられた地盤が耐えきれなくなって、崩壊が始まったのかもしれない。
「まずいな、ここは早く出よう」
『そうね、長くは持たないわね!』
それ以上は誰も何も言わない。主の居なくなった廃鉱。その役割を果たそうとしているのか、それとも口封じの為の証拠隠滅。どれを取っても、ここに留まる選択肢はない。
それぞれが役割を果たす為に、全力を尽くす。
俺が臭いを辿り、クオンが周囲の気配を探知する。さらに、ウィプス達が先行して目視による索敵。
そこに、コボルトの王の視覚スキルが加わる。アンクレットの中では、ミュラーが俺の頭の中に流れ込む光景を処理している。ウィプス達の見ている光景を、複数のモニターで見るように監視し、情報はベルのスキルを通じて全員へと伝えられる。
今は、リッター達は休息中だが、哨戒活動に加われば凄い性能になるかもしれない。探知能力だけでいえば、間違いなくアシスでもトップクラスになる。
それだけの精霊達が哨戒するなら、監視する精霊達も必要にはなるが・・・。
坑道が振動し、空気の流れが大きく変わる。複雑に入り組んだ坑道なので、どこで崩落が始まったかは分からないが、近くで崩落が起こったのは間違いない。
もう少しで出口からの光が見えるといったところで、急に光が閉ざされる。
「マトリ」
ローブの中から、ゴブリンキングの持っていた杖を取り出す。
杖に魔力を流すと、杖の周りで風が巻き起こり渦巻く。
「フォリー、ソースイ、全力で行け!」
「かしこまりました」
フォリーが影から出てくる。光が閉ざされた事によって、一切の遠慮がいらない全力の陰魔法。
「シェイド」
行く手を遮った岩や土砂は、一瞬で形を失い砂へと変わる。
そして、今度はソースイが漆黒の盾を前に突き出す。
「ゼロ・グラビティ」
砂が地面に流れ出す前に、重力の影響が軽減される。
そして最後に俺がゴブリンキングの杖での風魔法ウィンドトルネード。
魔法は身を持って体感している。風の流れは、ダークの陰魔法ミストの動きと似たところがあるし、俺のをマジックソードを操るんだから、魔法だって手伝えるだろと勝手に決めつける。
「ウィンドトルネード」
砂山の中へと突っ込んだトルネードは、地面に流れ落ちた砂を巻き上げ、閉ざされた出口へと向かって進む。
俺はただ杖に向かって魔力を流す事だけに専念する。途中から杖へと流れる魔力の流れがスムーズになってくる。確か魔力付加が得意だったよな。
「マトリか、頼んだぞ!」
「うん」
短い言葉のやり取りで十分。俺を助けてくれる精霊達を頼もしく感じ、思わず笑みが浮かぶ。
『仲間外れはイヤよ!』
少し不機嫌なムーアの声がして、ブロッサが俺の周りにポーションを撒き始める。
『士気高揚』
疲労感が緩和され、感覚がが研ぎ澄まされて行く。これが最後のトドメの一押しとなって、ウィンドトルネードは崩れた岩や土砂を突き抜ける。
何とか次の振動や衝撃が起こる前に、出口へと辿り着く。
「これでオルキャンが居た証拠も遺跡も、何もかもが分からなくなるのか?」
ドワーフ達が関係していたのは間違いないが、これで藪の中。
『まだまだこれからよ。この廃鉱が完全に潰れたのなら、それで損害の出る者が必ずいるはずね。また、そこから何が起こると思うわよ♪』
「相変わらず、ムーアは楽しそうだな」
『結果としては、良かったでしょ。精霊も増えたし、これも手に入ったわ♪』
ムーアの手に持つのは銀色の盃。
『これはね錫の盃よ。これでお酒を飲むと、口当たりが良くなって、味に深みが出るのよ。ミュラーを見たときにね、ビビッと来たわ!』
「それが、あの強引な勧誘の本当の理由だったのか?」
『あっ、いけない。神饌を忘れてたわ』
そう言い残して、影の中に潜ってしまう。
銀髪の剣士が何者なのか、ドワーフ達がどこまで関わっているのかと、分かった事も分からない事も多い。ただ精霊達も増え、やれる事も多くなった。
とりあえず、タカオの街に戻ろう。これから何が待っているかは分からないが、そこで新たな変化が起こるのを期待しよう。
ゴオオオォォォーン
爆発ではない。地響きのような音が2回聞こえた後、大部屋全体を振動が走る。
大部屋の天井からパラパラと小さな小石が降ってきて、全体が僅かに振動している。
爆発というよりは、限界まで削りとられた地盤が耐えきれなくなって、崩壊が始まったのかもしれない。
「まずいな、ここは早く出よう」
『そうね、長くは持たないわね!』
それ以上は誰も何も言わない。主の居なくなった廃鉱。その役割を果たそうとしているのか、それとも口封じの為の証拠隠滅。どれを取っても、ここに留まる選択肢はない。
それぞれが役割を果たす為に、全力を尽くす。
俺が臭いを辿り、クオンが周囲の気配を探知する。さらに、ウィプス達が先行して目視による索敵。
そこに、コボルトの王の視覚スキルが加わる。アンクレットの中では、ミュラーが俺の頭の中に流れ込む光景を処理している。ウィプス達の見ている光景を、複数のモニターで見るように監視し、情報はベルのスキルを通じて全員へと伝えられる。
今は、リッター達は休息中だが、哨戒活動に加われば凄い性能になるかもしれない。探知能力だけでいえば、間違いなくアシスでもトップクラスになる。
それだけの精霊達が哨戒するなら、監視する精霊達も必要にはなるが・・・。
坑道が振動し、空気の流れが大きく変わる。複雑に入り組んだ坑道なので、どこで崩落が始まったかは分からないが、近くで崩落が起こったのは間違いない。
もう少しで出口からの光が見えるといったところで、急に光が閉ざされる。
「マトリ」
ローブの中から、ゴブリンキングの持っていた杖を取り出す。
杖に魔力を流すと、杖の周りで風が巻き起こり渦巻く。
「フォリー、ソースイ、全力で行け!」
「かしこまりました」
フォリーが影から出てくる。光が閉ざされた事によって、一切の遠慮がいらない全力の陰魔法。
「シェイド」
行く手を遮った岩や土砂は、一瞬で形を失い砂へと変わる。
そして、今度はソースイが漆黒の盾を前に突き出す。
「ゼロ・グラビティ」
砂が地面に流れ出す前に、重力の影響が軽減される。
そして最後に俺がゴブリンキングの杖での風魔法ウィンドトルネード。
魔法は身を持って体感している。風の流れは、ダークの陰魔法ミストの動きと似たところがあるし、俺のをマジックソードを操るんだから、魔法だって手伝えるだろと勝手に決めつける。
「ウィンドトルネード」
砂山の中へと突っ込んだトルネードは、地面に流れ落ちた砂を巻き上げ、閉ざされた出口へと向かって進む。
俺はただ杖に向かって魔力を流す事だけに専念する。途中から杖へと流れる魔力の流れがスムーズになってくる。確か魔力付加が得意だったよな。
「マトリか、頼んだぞ!」
「うん」
短い言葉のやり取りで十分。俺を助けてくれる精霊達を頼もしく感じ、思わず笑みが浮かぶ。
『仲間外れはイヤよ!』
少し不機嫌なムーアの声がして、ブロッサが俺の周りにポーションを撒き始める。
『士気高揚』
疲労感が緩和され、感覚がが研ぎ澄まされて行く。これが最後のトドメの一押しとなって、ウィンドトルネードは崩れた岩や土砂を突き抜ける。
何とか次の振動や衝撃が起こる前に、出口へと辿り着く。
「これでオルキャンが居た証拠も遺跡も、何もかもが分からなくなるのか?」
ドワーフ達が関係していたのは間違いないが、これで藪の中。
『まだまだこれからよ。この廃鉱が完全に潰れたのなら、それで損害の出る者が必ずいるはずね。また、そこから何が起こると思うわよ♪』
「相変わらず、ムーアは楽しそうだな」
『結果としては、良かったでしょ。精霊も増えたし、これも手に入ったわ♪』
ムーアの手に持つのは銀色の盃。
『これはね錫の盃よ。これでお酒を飲むと、口当たりが良くなって、味に深みが出るのよ。ミュラーを見たときにね、ビビッと来たわ!』
「それが、あの強引な勧誘の本当の理由だったのか?」
『あっ、いけない。神饌を忘れてたわ』
そう言い残して、影の中に潜ってしまう。
銀髪の剣士が何者なのか、ドワーフ達がどこまで関わっているのかと、分かった事も分からない事も多い。ただ精霊達も増え、やれる事も多くなった。
とりあえず、タカオの街に戻ろう。これから何が待っているかは分からないが、そこで新たな変化が起こるのを期待しよう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
悪魔になったらするべきこと?
ファウスト
ファンタジー
剣と魔法の世界。そこで魔法を教える学校に通う主人公ルナ・フラウステッドは魔法使いに憧れてる女の子。次の進級で実技に行く段階になった彼女だったがどうしてか魔法を上手く使えない落第生となってしまった。そんな時、偶然にも雇われた家庭教師の先生が言う方法に運命を任せたところ・・・。
「悪魔になっちゃった!?」
悪魔に変化!だけでも中身はそのままの彼女の運命やいかに!
彼女を狙う影、彼女の体の行く末、それを見守る保護者たち。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか。
これは悪党から両親と自分の将来を守るために悪魔になった少女がその身の上と体の特殊さから
様々な騒動に巻き込まれるお話である。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。
佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。
人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。
すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。
『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。
勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。
異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。
やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる