精霊のジレンマ

さんが

文字の大きさ
122 / 329
迷いの森の精霊

122.上位精霊

しおりを挟む
クオンが何かを探知する。

“危ない、速い”

地面や魔樹を蹴りながら、今までにない速さで何かが向かってくる。四つ足の存在なら精霊か魔物になるが、ここが魔力だまりの森ならば、魔物ではないとは言いきれない。魔樹を蹴りながら変則的に進路を変えて進んでくる。

クオンの探知よりも離れた距離から俺達を見つけ、暗い森の中でも魔樹を的確に足場にして進み、あっという間に距離を詰めてくる。

見つかった時点で逃げきることは難しい。

「精霊か魔物か?敵か味方か?」

『敵じゃなくても、味方はないでしょうね♪』

「確かに間違ってはないけど、楽しそうなのはどうかな?」

「あら、いつも通りよ♪ねえ、ガーラ!」

当たり前でしょいわんばかりの澄ました顔のガーラ。

「さっき、仲間になったばかりだろ」

まあ、クオンが警戒している意味が分かっていて、平常心でいられるなら安心してイイのかもしれない。

敵なら攻撃出来るんだけどな。敵じゃないなら、どうする?
攻撃出来ないなら、守るのか?相手が攻撃してきたら、ただ待って受けるしかないのか?色々な状況を想定して、それぞれの対応策を考え、そして今すべき事は何か?

「分かってるって。時間がないんだろ!」

ウィプス達が影から出てきて、俺の前に出て明滅する。

四つ足の獣は、何故俺達が居る事が分かったのか?クオンのような聴覚なのか、それとも魔力を感じ取ったのか?

「ブロッサ、ポイズンミスト。シナジーは霧を!それと、魔力濃度を上げてくれ」

暗闇の中に濃い霧が立ち込め、辺り一帯が飲み込まれ、俺の周り残留魔力濃度を限界まで高める。
魔力で俺達を探知して見付けだしたのなら、この中に居る俺達をピンポイントで見つけ出す事は出来ないだろう。

そして、四つ足の獣はポイズンミストを十分な距離をとって避ける。
そして霧の前に、四つ足の獣が現れる。霧のシナジーを通して見える姿は、頭がライオンで身体が山羊、尻尾が蛇のキマイラ。

「俺の知識が正しいなら、キマイラなのか?目は赤くないか精霊?」

『付け加えるなら、キマイラは上位精霊ね』

「ガーラ、知ってたか?」

「ここは精霊達が近寄らない森」

“キマイラの縄張りだから”が抜けているけど、確かに間違いではない。
そしてキマイラは様子を探るように、霧の外周をウロウロし始める。

「聴覚による探知じゃないな」

『狙い通りなんでしょ』

「まだ半分だよ。ダーク、頼む!」

ダークの操るマジックソードが、地中に埋めた光の玉を掘り起こして、キマイラの右横へと飛ばす。その瞬間、キマイラの口からはファイヤーボールが放たれ、直撃した光の玉は跡形もなく消え去ってしまう。
普通のファイヤーボールと比べると桁外れに威力が強く、霧には大きな穴が開いてしまう。そのまま魔樹へと直撃し激しく燃え上がったように見えたが、魔樹は何も変わらずに一枚の葉が落ちる事もなく、そこに立っている。

しかし、今の攻撃は光の玉を見てからの攻撃で間違いない。合図を送ると、もう一度ダークが地中から光の玉を掘り起こしてキマイラの右横へと飛ばす。
さらに、今度はシナジーが霧で俺の分身を作り出し、キマイラの右側面を捉えようと操作する。

再びキマイラが光の玉にファイヤーボールを放ち、今度は霧の中から動く人影を見つけて体の向きを変える。

その瞬間に、一斉にリッター達を召喚し、目映い光がキマイラを襲う。暗い森の中に慣れたキマイラの目を眩ませるには十分過ぎる光で、少しだけ動きが止まる。

「ウィンドトルネード」

ダークのマジックソードやウィプス達のサンダーボルトも、キマイラへをウィンドトルネードから逃がすまいと動きを封じるように攻撃してくれる。

最大のチャンスに、俺の出来る攻撃の全てを組み合わせて、キマイラへと放つ一撃。2対4枚の翼が風を送りウィンドトルネードを加速させ、さらに黒翼から剣羽根を放つ。ウィンドトルネードは剣羽根だけではなく、ブロッサのポイズンブレスやフォリーのシェイドを巻き込み、複数の魔法が組合わさる。

キマイラに直撃したウィンドトルネードは、さらにキマイラの周りので複数の嵐をつく出す。
地面から巻き上げた土埃で見えなくなっても、ウィンドトルネードを放ち続ける。

舞い上がった土埃が収まり、少しずつキマイラの姿が見えてくる。そこには、ライオンの鬣すら乱れていないキマイラの姿があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...