2 / 12
2.突き放すために
しおりを挟む
「お父様はどうかしている。ボルガン公爵なんて……あんな汚らわしい人に、ソフィーナを渡すなんて、間違っている」
「セフィーナ、落ち着いて」
「ソフィーナ、どうしてあんなことを言ったの? これは絶対に、受け入れてはならないことよ」
部屋に戻ってから、セフィーナはずっとこんな感じだった。それ程私が、ボルガン公爵の元に行くのが嫌だということだろうか。
「貴族として生まれたからには、婚約の道具として使われるのは当然のことよ」
「ボルガン公爵は、今まで大勢の人のことを不幸にしてきた……彼はあなたを真っ当に嫁に迎える訳ではないわ」
「それでも、私が彼の元に行けば、スウェンリー男爵家の利益に繋がる」
「彼にそんなつもりはないわ。権力によって、一時の汚れた欲求を満たそうとしているだけだわ」
ボルガン公爵の悪評は、私もよく知っている。彼の元に行っても、私は不幸になって、スウェンリー男爵家も何も得られない。その可能性は高いだろう。
ただ権力者であるボルガン公爵からの要請を、お父様は立場上無下にできる訳もない。結局の所、私かセフィーナが彼の元に行くしかないのだ。何を言った所で、それは変わらない。
「……そうやって嘆くのは、私のためなの? それとも自分のため?」
「……え?」
「セフィーナはいいよね。そうやって怒っていれば、それだけでいいんだから。私とは違って、実害はないもんね」
「ソフィーナ……何を言っているの?」
「良い恰好をするなって言っているんだよ。それ、うざいだけだから」
私の言葉に、セフィーナは目を丸めていた。それを見ると、心が痛くなる。
しかしこれは、仕方ないことだ。セフィーナがこれ以上苦しまないためにも、私は彼女のことを突き放さなければならない。
「私は良い恰好なんて……」
「しているよ。いつもいつも、いつだってそうだった。私を庇うふりをして、自分に酔いしれているんでしょう?」
「わ、私はそんなつもりじゃ……」
セフィーナは、かなり動揺しているようだった。
もしかすると、多少図星の部分もあったということだろうか。いや、それは穿った見方をし過ぎている。むしろ私の方が、心のどこかでそう思っていたということなのかもしれない。
それならやはり、私がボルガン公爵家に行くべきなのだろう。犠牲になるのは、妹である私であるべきだ。
「もう、私のことを心配する振りをするのはやめて」
「ソフィーナ……」
「そんなことをされても、私は嬉しくない。それは、セフィーナの自己満足だよ」
「……」
私は、セフィーナに冷たく言い放った。
これで彼女とは、決別することになるだろう。ただそれで良いと思っていた。セフィーナが、私のことなんて背負う必要はないのだから。
お父様から寵愛を受けている彼女は、きっと真っ当に幸せになることができる。その礎になれるというなら、私はそれで構わない。
「セフィーナ、落ち着いて」
「ソフィーナ、どうしてあんなことを言ったの? これは絶対に、受け入れてはならないことよ」
部屋に戻ってから、セフィーナはずっとこんな感じだった。それ程私が、ボルガン公爵の元に行くのが嫌だということだろうか。
「貴族として生まれたからには、婚約の道具として使われるのは当然のことよ」
「ボルガン公爵は、今まで大勢の人のことを不幸にしてきた……彼はあなたを真っ当に嫁に迎える訳ではないわ」
「それでも、私が彼の元に行けば、スウェンリー男爵家の利益に繋がる」
「彼にそんなつもりはないわ。権力によって、一時の汚れた欲求を満たそうとしているだけだわ」
ボルガン公爵の悪評は、私もよく知っている。彼の元に行っても、私は不幸になって、スウェンリー男爵家も何も得られない。その可能性は高いだろう。
ただ権力者であるボルガン公爵からの要請を、お父様は立場上無下にできる訳もない。結局の所、私かセフィーナが彼の元に行くしかないのだ。何を言った所で、それは変わらない。
「……そうやって嘆くのは、私のためなの? それとも自分のため?」
「……え?」
「セフィーナはいいよね。そうやって怒っていれば、それだけでいいんだから。私とは違って、実害はないもんね」
「ソフィーナ……何を言っているの?」
「良い恰好をするなって言っているんだよ。それ、うざいだけだから」
私の言葉に、セフィーナは目を丸めていた。それを見ると、心が痛くなる。
しかしこれは、仕方ないことだ。セフィーナがこれ以上苦しまないためにも、私は彼女のことを突き放さなければならない。
「私は良い恰好なんて……」
「しているよ。いつもいつも、いつだってそうだった。私を庇うふりをして、自分に酔いしれているんでしょう?」
「わ、私はそんなつもりじゃ……」
セフィーナは、かなり動揺しているようだった。
もしかすると、多少図星の部分もあったということだろうか。いや、それは穿った見方をし過ぎている。むしろ私の方が、心のどこかでそう思っていたということなのかもしれない。
それならやはり、私がボルガン公爵家に行くべきなのだろう。犠牲になるのは、妹である私であるべきだ。
「もう、私のことを心配する振りをするのはやめて」
「ソフィーナ……」
「そんなことをされても、私は嬉しくない。それは、セフィーナの自己満足だよ」
「……」
私は、セフィーナに冷たく言い放った。
これで彼女とは、決別することになるだろう。ただそれで良いと思っていた。セフィーナが、私のことなんて背負う必要はないのだから。
お父様から寵愛を受けている彼女は、きっと真っ当に幸せになることができる。その礎になれるというなら、私はそれで構わない。
113
あなたにおすすめの小説
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた
今川幸乃
恋愛
レーナとシェリーは瓜二つの双子。
二人は入れ替わっても周囲に気づかれないぐらいにそっくりだった。
それを利用してシェリーは学問の手習いなど面倒事があると「外せない用事がある」とレーナに入れ替わっては面倒事を押し付けていた。
しぶしぶそれを受け入れていたレーナだが、ある時婚約者のテッドと話していると会話がかみ合わないことに気づく。
調べてみるとどうもシェリーがレーナに成りすましてテッドと会っているようで、テッドもそれに気づいていないようだった。
【完結】妹の代わりなんて、もううんざりです
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
私アイラと妹マリンは、いわゆる双子だった。一卵性で同じ格好をしてしまえば、見分けがつかないほど姿かたちも声もすべて似ていた。
しかし病弱な妹は私よりも人に愛される術にたけていた。だから気づけば両親の愛も、周りの人たちの評判もすべて妹が独占してしまう。
それでも私には、自分を理解してくれる唯一の味方である婚約者のリオンがいる。それだけを支えに生きてきた。
しかしある日、彼はこう告げた。「君よりも妹の方を愛してしまったと」
そこから全てが狂い出す。私の婚約者だった彼は、妹の婚約者となった。そして私の大切なものが全てなくなった瞬間、妹はすべて自分の計画通りだと私をあざ笑った。
許せない、どうしても。復讐をしてしまいたいと思った瞬間、妹はあっけなく死んでしまった。どんどんと狂い出すは歯車に私は――
永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~
畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。
【完結済み】妹の婚約者に、恋をした
鈴蘭
恋愛
妹を溺愛する母親と、仕事ばかりしている父親。
刺繍やレース編みが好きなマーガレットは、両親にプレゼントしようとするが、何時も妹に横取りされてしまう。
可愛がって貰えず、愛情に飢えていたマーガレットは、気遣ってくれた妹の婚約者に恋をしてしまった。
無事完結しました。
【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています
春野オカリナ
恋愛
エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。
社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。
完璧な妹に全てを奪われた私に微笑んでくれたのは
今川幸乃
恋愛
ファーレン王国の大貴族、エルガルド公爵家には二人の姉妹がいた。
長女セシルは真面目だったが、何をやっても人並ぐらいの出来にしかならなかった。
次女リリーは逆に学問も手習いも容姿も図抜けていた。
リリー、両親、学問の先生などセシルに関わる人たちは皆彼女を「出来損ない」と蔑み、いじめを行う。
そんな時、王太子のクリストフと公爵家の縁談が持ち上がる。
父はリリーを推薦するが、クリストフは「二人に会って判断したい」と言った。
「どうせ会ってもリリーが選ばれる」と思ったセシルだったが、思わぬ方法でクリストフはリリーの本性を見抜くのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる