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10.遠い場所へと
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「な、何が……どうなっている?」
ボルガン公爵は、ゆっくりと周囲を見渡していた。
状況を確認しようとしているのだろう。しかし、処置が程化された直後であるからか、満足に体を動かすことができないようだ。
「おはようございます、父上……」
「……その声は、ハルベルトか? お前が私を助けてくれたのか?」
「いいえ父上、僕はそのようなつもりはありません」
ハルベルト様は、首を横に振った。
当然のことながら、彼がボルガン公爵を助けるなんてことはあり得ない。彼が今、ボルガン公爵の前に姿を現したのは、最終通告のためだ。
「父上、あなたはいくつも罪を犯しました……その報いを受ける時が来たのです」
「な、何を言っているのだ? それより、私に良からぬことをした者達がいるのだ。あいつらを捕まえろ。報いを受けさせなければならない」
「彼らを見て、何も思わなかったという訳ですか……あなたという人はつくづくどうしようもない人だ」
ボルガン公爵に処置を行っていたのは、彼の息子と娘である。しかし本人は、そのことにまったく気付いていないようだ。
自身の子を気に掛ける気すらないなんて、ボルガン公爵はどこまでも非道な人である。彼は本当に、自らの欲望のためにしか行動していないということだろう。
「こちらをご覧ください」
「……こ、これは!」
そこでハルベルト様は、鏡を取り出した。それを見たボルガン公爵は、目を丸めている。
それは当然のことだろう。今彼は、まったく違う見た目をした自分自身の姿を見ているのだから。
「なんだこれは、どうなっている?」
「最早あなたは、ボルガン公爵ではないということです」
「ふざけるな! 私を元に戻せ!」
「これからあなたは、遠い場所に行くことになります。あなたがここに戻って来ることはありません。どのような手を用いても無駄です。僕達が総力をあげて、それを止めるのですから」
ハルベルト様は、とても冷たく言葉を発していた。
その口調からは、父親に対する侮蔑や怒りの感情が伝わってくる。
「ああそれから、父上がこれ以上余計なことをしないようにも取り計らっておきました。まあそれでも、女性を近づけさせたりはしないつもりですが……」
「ハ、ハルベルト、お前……親に向かってなんてことをしたのか、わかっているのか! お前などは、私の息子ではない! 他の者をここに連れて来い!」
「ご心配なく、すぐに兄上達とも会うことになりますよ。もっとも、そこであなたに温かい言葉がかけられるなんてことはありませんがね」
「ぬう……」
ボルガン公爵は、その表情を歪ませていた。
彼はこれから、自分の子供達から嫌という程恨み言を聞かされることになるだろう。
しかし同情する気持ちは湧いてこない。全ては彼の自業自得だ。せめてこれからの長い時間の中で、その行いの数々を反省してくれると良いのだが。
ボルガン公爵は、ゆっくりと周囲を見渡していた。
状況を確認しようとしているのだろう。しかし、処置が程化された直後であるからか、満足に体を動かすことができないようだ。
「おはようございます、父上……」
「……その声は、ハルベルトか? お前が私を助けてくれたのか?」
「いいえ父上、僕はそのようなつもりはありません」
ハルベルト様は、首を横に振った。
当然のことながら、彼がボルガン公爵を助けるなんてことはあり得ない。彼が今、ボルガン公爵の前に姿を現したのは、最終通告のためだ。
「父上、あなたはいくつも罪を犯しました……その報いを受ける時が来たのです」
「な、何を言っているのだ? それより、私に良からぬことをした者達がいるのだ。あいつらを捕まえろ。報いを受けさせなければならない」
「彼らを見て、何も思わなかったという訳ですか……あなたという人はつくづくどうしようもない人だ」
ボルガン公爵に処置を行っていたのは、彼の息子と娘である。しかし本人は、そのことにまったく気付いていないようだ。
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「こちらをご覧ください」
「……こ、これは!」
そこでハルベルト様は、鏡を取り出した。それを見たボルガン公爵は、目を丸めている。
それは当然のことだろう。今彼は、まったく違う見た目をした自分自身の姿を見ているのだから。
「なんだこれは、どうなっている?」
「最早あなたは、ボルガン公爵ではないということです」
「ふざけるな! 私を元に戻せ!」
「これからあなたは、遠い場所に行くことになります。あなたがここに戻って来ることはありません。どのような手を用いても無駄です。僕達が総力をあげて、それを止めるのですから」
ハルベルト様は、とても冷たく言葉を発していた。
その口調からは、父親に対する侮蔑や怒りの感情が伝わってくる。
「ああそれから、父上がこれ以上余計なことをしないようにも取り計らっておきました。まあそれでも、女性を近づけさせたりはしないつもりですが……」
「ハ、ハルベルト、お前……親に向かってなんてことをしたのか、わかっているのか! お前などは、私の息子ではない! 他の者をここに連れて来い!」
「ご心配なく、すぐに兄上達とも会うことになりますよ。もっとも、そこであなたに温かい言葉がかけられるなんてことはありませんがね」
「ぬう……」
ボルガン公爵は、その表情を歪ませていた。
彼はこれから、自分の子供達から嫌という程恨み言を聞かされることになるだろう。
しかし同情する気持ちは湧いてこない。全ては彼の自業自得だ。せめてこれからの長い時間の中で、その行いの数々を反省してくれると良いのだが。
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