誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗

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26.腕の正体

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「……先程のことは謝罪しましょう、黒い腕さん。どうやら、僕はあなたのことを誤解していたようです。申し訳ありませんでした」

 レリクス様は、私の背中から生えている腕に謝罪した。
 それに対して、腕は拳を握って親指を上げた。それは、許したということなのだろうか。

「エルファリナさんも、申し訳ありませんでした。少し、やり過ぎてしまったようですね……」
「い、いえ、やり過ぎたのは、こちらの方というか……」
「そうですね……僕も、流石に死ぬかと思いましたよ」
「……本当に、すみませんでした」

 私は、レリクス様に頭を下げた。
 すると、黒い腕もその手首を曲げて、手を下げた。それは、謝っているのだろうか。

 先程から、この腕のことがわからなくなってきた。
 なんというか、もっと不可思議な存在なのだと思っていたが、案外話がわかる奴なのかもしれない。

「さて、黒い腕さん、あなたのことを教えていただけませんか? どうやら、私達の言葉はわかるようですが、文字も書けますか?」
「文字……まさか」

 レリクス様は、紙とペンを取り出した。
 要するに、筆談をしようというのだろう。

 その要求に対して、黒い腕は再び親指をあげた。
 多分、大丈夫ということなのだろう。

「それじゃあ、まずはお名前から聞いてもよろしいでしょうか? ああ、知っているかもしれませんが、僕はレリクスです」
「えっと……ズグヴェル?」

 レリクス様の呼びかけに、黒い腕はそう書き記した。
 そもそも、文字が書けるのか。名前があるのか。そういう色々な疑問や驚きはあったが、とりあえずこの腕の名前はわかった。

「ズグヴェルさん、あなたは一体何者なんですか?」
「うん?」

 レリクス様のさらなる質問に、ズグヴェルさんはまたペンを走らせた。
 何のためらいもなくこの腕が字を書くのは、なんだか違和感がある。
 しかも、字が綺麗だ。あんな乱暴な奴なのに、こういう所は几帳面であるらしい。

「我は、封印されし龍である。遥か昔、悪しき王により、巫女と呼ばれし存在に封じ込められたのだ。ですか」
「龍……」

 黒い腕が記した文字に、私達は驚いた。
 龍、それは伝説上の生き物だ。そもそもの話、そんなものが実在するのかという疑問はあるが、この腕の正体がそんなものだとは、今までまったく思っていなかったものである。

「龍、悪しき王、それに巫女……なるほど、色々と気になる単語が出てきましたね」
「え、ええ……」
「しかし、その龍というのが、どうしてエルファリナさんに宿っているのでしょうか?」
「そうですね……それは、気になる所です」

 レリクス様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 この痣のせいで、私は随分とひどい扱いを受けてきた。その原因は、是非とも知りたい所である。
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