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27.血を受け継ぐ者

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「我は、巫女が死ぬ時、新たなる巫女に受け継がれる……ですか」
「新たなる巫女?」

 私達の質問に、ズグヴェルさんはそう答えてくれた。
 巫女から巫女に受け継がれる。それが、この痣の性質であるらしい。

 ただ、疑問はある。その巫女というものは、一体なんなのだろうか。
 私は、巫女であるという自覚なんてない。それは、どういう基準で決められるものなのだろうか。

「巫女というのは、どういう存在なんですか? 私が巫女に選ばれた理由とか、あるのでしょうか?」
「巫女というのは、最初に我を封じ込められた巫女の血族から選ばれる。その因子を受け継ぐ者が選ばれるのだ……なるほど」
「つまり、オルフェント公爵家のルーツは、その巫女にあるということですね……」

 私は、初代の巫女の血族であるようだ。
 それは、まったく知らなかったことである。
 きっと、それは遥か昔のことなのだろう。少なくとも、私が知っている歴史の中には、そう呼ばれるような人はいなかったはずだ。

「オルフェント公爵家には、時折宿ったことがある。しかし、いつからか、我は呪われし存在という認識をされていた……おっと」
「……いつからか、オルフェント公爵家、もしくはこの国の人々から、誤った認識されるようになったようですね」

 ズグヴェルさんは、私達にゆっくりとそう語ってくれた。
 オルフェント公爵家では、私の痣は呪われた忌むべきものとされている。
 しかし、それがいつそうなったのかは、定かではないようだ。どこかで、誰かがそれを吹聴したりでもしたのだろうか。

「でも、このように説明すればよかったのではありませんか? 紙やペンの傍に行くことくらいあったのではありませんか?」
「えっと……このように繊細な動きができるようになったのは、つい最近のことだ」
「ああ、そうだったんですね……」

 レリクス様の質問に、ズグヴェルさんはすぐに答えてくれた。
 その答えに対して、私は少し考える。最近あったとある出来事のことを。

「……もしかして、セリティナと会ったことが関係していますか?」
「……その通りだ。彼女は、我と同じ龍を宿す存在、同胞であるシェリウェントを宿している」
「同胞……」

 続く私の質問に対して、ズグヴェルさんはそう答えてくれた。
 セリティナも、同じように龍をその身に宿している。それは、なんとなく予想できていたことだった。

 同じように痣を持つ者。私と彼女には、そんな繋がりがあったのだ。
 それは、ゲームでも明かされていなかったことである。どうやら、この世界にはまだまだ私の知らないことがあるらしい。
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