誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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19.友人達の来訪

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「……」
「……」

 イグニスとシスティアは、私の顔を複雑な表情をしながら見てきた。
 それに私は、苦笑いを浮かべる。二人が来た時にどういう顔をするかは考えていたのだが、それはいまいちまとまっていなかった。
 結局私も微妙な表情しかできず、辺りは沈黙に包まれる。何か言うべきなのかもしれないが、言葉は出てこない。それは恐らく、二人も同じだろう。

「ミリーシャ嬢、お疲れ様です」
「あ、はい。アルディス様、どうも……」
「申し訳ありませんね、仕事終わりに……しかし、弟達がどうしてもあなたに会いたいというものですから」

 その沈黙を破ったのは、アルディス様だった。
 私のことを労いながら、彼はイグニスの方を見ている。何かあったのだろうか。少し警戒しているような気がする。

「……兄上にそういうことは言われたくありませんね。俺にも何も言わず、こっちまで来たんですから。ミリーシャも困ったものでしょう?」
「さて、どうだっただろうか……」

 アルディス様に対して、イグニスは鋭い視線を向けていた。どうやら彼は、兄の行いに対して憤りを覚えているらしい。
 それは当然といえば当然だ。アルディス様は今日から三日も前に、ここにやってきた。メセリアが来た次の日なので、その行動は迅速過ぎたといえる。イグニスからすれば、当然複雑な気持ちであるだろう。

「……ミリーシャ、少しいいかしら?」
「え? あ、うん……」
「あなたに対して、色々と言いたいことはあるわ。それをまとめるのは、少し難しいけれど……」

 そこで私に、システィアが話しかけてきた。
 強気な彼女にしては、少々弱気なその声に、私は少し面食らってしまう。システィアの気質を考えると、私に対して怒ってくるのではないかとさえ、思っていたからだ。

「ミリーシャがいなくなったって聞いてから、システィアは落ち込んでいたんだ。まあ俺だって、色々と思った訳だが……」
「ああ、うん。そうだよね……」

 イグニスはシスティアの方を気に掛けながら、事情を話してくれた。
 そういうことを言われると、こちらとしては少し申し訳ない気持ちになってしまう。私がいなくなったことで二人が心を痛めていたであろうことは、今となっては想像できるし。

「しかし、思っていたよりは元気そうで少し安心したな……」
「それに関しては、アルディス様やメセリアのお陰かな」
「ほう? 兄上の突拍子もない行動も少しは役に立ったということか……」
「ひどい言われようだな……」

 イグニスの言葉に、私はゆっくりと頷く。
 メセリア、それからアルディス様の来訪は、私の心を癒してくれたといえる。イグニスやシスティアとこうして向き合えているのも、それがあったからだろう。
 そう考えていると、なんだか少し落ち着いてきた。これで二人とも、しっかりと話すことができそうだ。
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