誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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20.簡単だったこと

 私は、アルディス様とイグニスとシスティアが泊っている宿に来ていた。
 落ち着いて話せる場所として、私の部屋は狭いため、こちらの一室を借りることにしたのだ。
 貴族三人が泊っていることからも明白だが、ここは辺りでも最も上等な宿である。故に私の部屋のように、周囲のことを気にする必要などはない。

 ちなみに一度部屋に戻って、メセリアやリエネッタさんには事情を説明している。イグニスとシスティアの来訪は二人も予期していたのか、それ程驚いてはいなかった。

「色々と聞きたいことがあるわね……でも、とりあえず無事で元気であるということが何よりだわ」
「それに関しては、色々な人が助けてくれたからかな」
「お祖父様のことを頼ったのは、正解だわ。何も知らない、誰も頼れる人がいないような所に行っていたら、どうなっていたことか……」

 システィアは、心底安心したというような顔をしていた。どうやら彼女は、相当心配してくれていたようだ。
 それは正直意外である。システィアはこういったことに関しても、いつものように毅然とした態度を貫くものだと思っていた。しかし、そういう訳ではなかったようである。
 いや、そもそもシスティアを悲しませたのは私だ。まずはそれを反省するべきだろう。

「ごめんね、システィア。色々と心配をかけてしまったみたいで……」
「いいえ、謝ってもらいたい訳ではないわ。私もミリーシャの気持ちについて、何もわかっていなかったのだもの。ごめんなさいね……」
「それこそ、謝ってもらいたいことではないかな。私が勝手に、色々と思い詰めていたというだけだし……」

 システィアには、本当に申し訳ないことをしてしまった。
 彼女やイグニスが、私が失踪して何も思わないなんて、そんなはずはないのである。それがどうして、わからなかったのだろうか。
 今となっては、それがわからない。それだけあの時の私は、混乱していたということなのだろうか。何にせよ、愚かなことをしてしまった。

「何について思い詰めていたのか……聞いても良いものかしら?」
「それは……」
「……言いたくないことならば、無理に言わなくてもいいわ。でも私は――私とイグニスは、あなたの友達で味方だから、何かあったら力になりたいの。それだけは覚えておいて」
「……うん、ありがとう」

 システィアの言葉に、私の心は軽くなっていた。
 私は本当に、こんな私にはもったいないくらい、良い友達を持ったものだ。その友達を頼るだけで、きっと良かったのだろう。それが今、やっとわかった。

「あのね……」

 だから私は、二人に相談してみることにした。
 マートン伯爵家における立ち位置に関する悩み、私はそれをゆっくりと打ち明けるのだった。
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