誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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22.期待されし者

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「ミリーシャは、お父様に認められたいのよね?」
「うん、そういうことになるかな……」
「まあ、気持ちはわかるよ。俺だって父上から期待されていないなんて言われたら、落ち込むだろうし……」

 システィアとイグニスは、私の気持ちに共感してくれているようだった。
 それを聞いて、私の心は少し安らいだ。問題は何も解決していないが、それでも誰かに聞いてわかってもらえただけで、ある程度は落ち着ける。

 初めからこうしていれば良かったのだろう。本当に私は、視野が狭かったものだ。
 それを実感しながら、私は考えていた。これからどうしていくべきかということを。
 当然のことながら、問題は解決しなければならない。今の私には、向き合える程の力がある。

「……ミリーシャ嬢、少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。なんですか?」

 そこで、それまで黙っていたアルディス様が口を開いた。
 彼の方に、私達の視線は集中する。ただアルディス様はイグニスやシスティアの視線は気にせず、真っ直ぐに私を見てきていた。

「言うまでもありませんが、僕はヴェリトン伯爵家の嫡子です」
「……ええ、そうですよね?」
「父上からも、僕は多大な期待を寄せられてきたと自覚しています」
「えっと……」

 アルディス様の言葉に、私は少し怯むことになった。
 彼は何故突然、このようなことを言い出したのだろうか。期待されていない私に、わざわざそのようなことを言う必要があるとは思えないのだが。
 今までは寄り添ってくれていたはずなのに、アルディス様から突き放されたように感じる。それに私は、困惑していた。

「それは良いものだと、あなたは思っているかもしれません。まあ確かに、誇りに思えることではあります。しかし、それだけではない……父上からの期待は、とても重くて、苦しかった」
「苦しかった……?」

 アルディス様は、私から視線を外して言葉を発していた。
 どこか遠くを見つめている彼は、なんだかとても弱々しく見える。
 それに私は驚いていた。いつも飄々としているアルディス様が、そんな顔をするなんて思っていなかったからだ。

 ただその表情を見ていると、先程の言葉の真意というものもわかってきた。
 それはつまり、期待というものが持つ負の側面を私に教えるための前置きだったのだろう。

 それに関して私は、理解しているつもりだった。しかしその認識は、間違っていたのかもしれない。今のアルディス様を見ていると、そう思う。

「時折僕は、空回ることがありました。ヴェリトン伯爵家の嫡子として、気負っていた。そんな時に父上から言われたのです。気負う必要はないと……僕が全てを背負わずとも、いくらでもやりようはあると」
「それは……」
「もしかしたらマートン伯爵は、あなたが思っているような意図で言葉を発した訳ではないのかもしれません。今一度、当時の状況を思い出してみてください。今のミリーシャ嬢なら、何か新しい発見があるかもしれません」

 アルディス様の言葉に、私は改めてお父様の言葉について考えることになった。
 あの時の詳細を思い出す。それは今まで、避けてきたことだ。思い出したくないことだと、思っていたから。
 しかしアルディス様が言っているように、認識の違いがあるのかもしれない。それを解き明かすためにも、私は改めてあの時のことを思い出すのだった。
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