誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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25.覚悟を決めて

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 マートン伯爵家からの連絡は、私がメセリアと話し合ってから程なくしてあった。
 その要求は、端的なものだ。話がしたい。ただそれだけである。
 私はそれに応じることにした。二人と話し合う覚悟を、私は既に決められていたのである。

 という訳で私は、随分と久し振りにマートン伯爵家の屋敷に戻ってきた。
 目の前には、お父様とティシア様がいる。私はこれから、二人と話し合うのだ。

「……」

 覚悟は決めたものの、それでも私は緊張していた。
 何から話すべきなのか、それがわからない。私の頭は真っ白になっていた。

「ミリーシャ、まず聞かせてもらいたい。お前はどうして家を出たのだ?」

 その沈黙を破ったのは、お父様だった。
 私はそれに、少し驚く。いつも威厳に溢れていたお父様が、弱々しく声を発していたからだ。
 その原因は、私ということなのだろうか。もしもそうだとしたら申し訳ないが、同時に少し嬉しい。

「……私がマートン伯爵家に、必要がないからでしょうか?」
「何?」

 私が質問に答えると、お父様は目を見開いた。
 その反応の時点で、理解できる。私が思っていたことが的外れだったということが。
 ただそれでも、私は全てを伝える必要があるのだろう。これからのためにも、それは必要なことだと思う。

「お父様は言っていたはずです。私の婚約には期待していないと……」
「それは……」
「ティシア様もそれに賛同して、メセリアからも言われました。私を頼らないと……」
「……そう、でしたか」

 私の言葉に、今度はティシア様がその表情を曇らせた。
 やはり彼女も、私のことを疎んでいるという訳ではなさそうだ。今ならそれがわかる。

「だから私は、家を出ることにしました。私がいない方が、むしろマートン伯爵家は上手くいくのではないかとも考えて。でも、それが間違っていたことはすぐに理解できました。メセリアが私を追いかけてきたものですから」
「……ああ、正しくその通りだ。どうやら私は――私達は、お前を勘違いさせてしまっていたようだな」
「……そうですね。自分の愚かさというものを痛感しています」

 二人は、ひどく落ち込んでいるようだった。
 そのような姿は、初めて見る。お父様もティシア様も、思っていたよりも繊細な人だったようだ。

 長年一緒に住んでいたというのに、私は案外二人のことを知らなかったらしい。
 思えば私は、メセリアのことも知らなかった。私は家族と、交流することができていなかったということだろう。
 もっと家族と話し合うべきだった。私はそれを改めて痛感するのだった。
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