誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗

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24.聞くべきことと

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「私がお姉様に頼らないと言ったことですか?」
「うん。その言葉の真意について、聞いておきたいんだ。あれは私のことが必要ではないという意味では、なかったんだよね?」
「ええ、それはもちろん……」

 部屋に戻った私は、メセリアに少しだけ自分の気持ちを話した。
 聡い子ではあるが、妹は私の話をそこまで理解してはいないような気がする。故に最も聞きたいことを質問してみることにした。

 その質問に対して、メセリアは首を傾げている。それはなんというか、私の言っていることを不思議に思っているかのようだ。
 恐らく彼女からしてみれば、あの言葉に私を突き放す意図なんてなかったということだろう。それは私を追いかけてきてくれた時点で考えるまでもないことだったが、改めて理解できた。

「あれはその、お母様に言われたことで……」
「ティシア様に?」
「ええ、その、あまりお姉様に頼ってはいけないと言われました。一人でも家を守っていけるように、強さを身に着けていかなければならないと……」
「そうだったんだね……」

 メセリアは少したどたどしく、私に事情を話してくれた。
 あの言葉の裏にティシア様が絡んでいることは、予想していたことである。彼女が私を疎んでいるから、妹も私を疎んでいると、そう思っていたのだ。

 ただそれはきっと、間違いだったのだろう。メセリアの私に対する接し方からして、ティシア様は私のことを少なくともこの子の前で貶めてはいないのだ。

「ティシア様は……」
「お姉様?」
「ううん。やっぱりいいかな、これは……」

 ティシア様が私をどう思っているのか、それをメセリアに聞こうかと思った。
 しかし、それはやめておくことにした。なんというか、卑怯な気がしたからだ。

 ティシア様の気持ちは、彼女自身に聞くべきだろう。彼女が私のことをどう思っているとしても、それは人から聞いていいことではない。

「メセリア、多分もうすぐあなたも帰らないといけないと思う」
「……そうですよね」
「わかっていたんだ?」
「いつまでもこっちにいられる訳はないとは、思っていました」
「そっか……」

 メセリアは私の言葉に、苦笑いを浮かべていた。
 こちらでの生活は、この子にとってもそれなりに楽しいものだったのだろう。それがその表情からは伝わってきた。

 同時にこの妹には、マートン伯爵家を背負う者としての自覚が既に芽生えているということもよくわかった。
 それなら私も、姉としてきちんとした背中を見せていかなければならないだろう。随分と遠回りしてしまったが、それは今からでも遅くはないはずだ。
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