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7.両親の説得
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ローレント侯爵家への急な来客――それも秘密の来客に、両親はあまり良い顔はしなかった。
それは仕方ないことだ。ジオルト様の行動は、端から見れば不可解極まりない訳だし。
「ジオルト公爵令息、あなたが訪ねて来たことには正直驚いています。それもラナシアの馬車に同乗していたなど……一体これはどういう了見なのでしょうか?」
「ローレント侯爵、あなたは何も知らないということですか? 少し意外ですね。あなた程の方が、娘の苦難を見抜けないとは」
「……それは、どういうことですかな?」
お父様からの質問に、ジオルト様は淡々と返答した。
それにお父様は怪訝な顔をする。まだ事情は話していないので、理解できないのだろう。
「ラナシア嬢は、婚約に関して悩んでいらっしゃる。ヴォーラス殿下との婚約は彼女にとって幸福なものではない。彼は実に苛烈な思想を持つ人間です」
「苛烈な思想?」
「あなたのもう一人のご息女と同じと言えばわかりますか?」
「なっ……!」
ジオルト様の言葉に、お父様は目を丸めた。
それからお母様と顔を見合わせる。リオーラについては、二人もよく知っているため、どういうことかはわかったのだろう。
「まさかヴォーラス殿下が、妹と同じように王家の思想に反発しているということですか?」
「正しくその通りです。故にヴォーラス殿下にとって、ラナシア嬢との婚約は喜ぶべきものではありませんでした。しかしそれでも彼は反発することなく受け入れた。それには理由があります。リオーラ嬢の存在は、ヴォーラス殿下にとってとてもありがたいものだったことでしょう」
「……」
全て事情を話すまでもなく、お父様もお母様も理解したようだった。リオーラとヴォーラス殿下が、どういった関係にあるかということを。
二人は気まずそうな表情をする。そういった表情をされるとわかっていたから、私も二人にすぐに事情を話すことができなかった。
「ローレント侯爵、手厳しいようですが、あなたは選択を迫られているといえる。二人の娘の内どちらを支持するか表明していただきたい」
「ジオルト公爵令息、リオーラは……」
「リオーラ嬢があなたにとって、可愛い娘であることは理解しています。しかし侯爵であるならば、時には非情な判断も求められるものでしょう。何故ラナシア嬢があなたにすぐに事情を打ち明けなかったのか、それを考えていただきたい」
「ラナシア……」
ジオルト様の言葉によって、お父様の視線が私の方に向いた。
それからお父様は目を瞑り、ゆっくりと首を振る。それはまるで、リオーラに対する情を振り払っているようだった。
お優しいお父様とお母様にとって、この決断は苦しいものだっただろう。
しかしそれでも二人は、答えを出してくれた。それは私が望んでいた答えだった。
それは仕方ないことだ。ジオルト様の行動は、端から見れば不可解極まりない訳だし。
「ジオルト公爵令息、あなたが訪ねて来たことには正直驚いています。それもラナシアの馬車に同乗していたなど……一体これはどういう了見なのでしょうか?」
「ローレント侯爵、あなたは何も知らないということですか? 少し意外ですね。あなた程の方が、娘の苦難を見抜けないとは」
「……それは、どういうことですかな?」
お父様からの質問に、ジオルト様は淡々と返答した。
それにお父様は怪訝な顔をする。まだ事情は話していないので、理解できないのだろう。
「ラナシア嬢は、婚約に関して悩んでいらっしゃる。ヴォーラス殿下との婚約は彼女にとって幸福なものではない。彼は実に苛烈な思想を持つ人間です」
「苛烈な思想?」
「あなたのもう一人のご息女と同じと言えばわかりますか?」
「なっ……!」
ジオルト様の言葉に、お父様は目を丸めた。
それからお母様と顔を見合わせる。リオーラについては、二人もよく知っているため、どういうことかはわかったのだろう。
「まさかヴォーラス殿下が、妹と同じように王家の思想に反発しているということですか?」
「正しくその通りです。故にヴォーラス殿下にとって、ラナシア嬢との婚約は喜ぶべきものではありませんでした。しかしそれでも彼は反発することなく受け入れた。それには理由があります。リオーラ嬢の存在は、ヴォーラス殿下にとってとてもありがたいものだったことでしょう」
「……」
全て事情を話すまでもなく、お父様もお母様も理解したようだった。リオーラとヴォーラス殿下が、どういった関係にあるかということを。
二人は気まずそうな表情をする。そういった表情をされるとわかっていたから、私も二人にすぐに事情を話すことができなかった。
「ローレント侯爵、手厳しいようですが、あなたは選択を迫られているといえる。二人の娘の内どちらを支持するか表明していただきたい」
「ジオルト公爵令息、リオーラは……」
「リオーラ嬢があなたにとって、可愛い娘であることは理解しています。しかし侯爵であるならば、時には非情な判断も求められるものでしょう。何故ラナシア嬢があなたにすぐに事情を打ち明けなかったのか、それを考えていただきたい」
「ラナシア……」
ジオルト様の言葉によって、お父様の視線が私の方に向いた。
それからお父様は目を瞑り、ゆっくりと首を振る。それはまるで、リオーラに対する情を振り払っているようだった。
お優しいお父様とお母様にとって、この決断は苦しいものだっただろう。
しかしそれでも二人は、答えを出してくれた。それは私が望んでいた答えだった。
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