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6.協力の理由
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ローレント侯爵家の屋敷に帰る馬車の中には、同乗者がいた。
それはジオルト様だ。彼は半ば強引に、この馬車に乗った。
「ヴォーラスの不在時に国王陛下との話し合いを取り付けるとは見事なものだな……」
「……お褒めいただき、ありがとうございます」
「あなたならば、俺の協力などは不要か? というよりも、信用できないといった所か。顔にそう書いてある」
「……まあ、そうですね」
ジオルト様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼のことは、あまり信用できていない。ヴォーラス殿下を排除したい。その言葉に嘘はなさそうなのだが、真意がわからない。
王家とノーラン公爵家は親族の関係だ。ヴォーラス殿下に何かをするということは、ノーラン公爵家にも色々と影響があると思うのだが。
「しかし安心しろ。俺はあなたを裏切りはしない。先も言った通り、ヴォーラスは邪魔な存在だ。奴の思想はあなたも知っているのだろう?」
「えっと……妹のリオーラと概ね同じだと思っていますが」
「そして俺の生まれに関しても、あなたは知っているはずだ。というよりもこれは、知らない者がいない」
「ジオルト様は……ああ」
ジオルト様が与えてくれたヒントによって、私はある程度事情を自分の中で噛み砕くことができた。
彼はノーラン公爵と平民との間に生まれた子供だ。その威厳と気品、ナゼルス様との仲から忘れそうになるが、平民の妾の子という出自は幸福なものとは言い難い。
恐らくヴォーラス殿下などは、ジオルト様のことは快く思っていないだろう。平民を見下す彼がジオルト様に対して敵意を向けることは、容易に想像できる。
そういうことなら、ジオルト様からしてもヴォーラス殿下を排除したいと思うのかもしれない。単純に二人が、敵対関係にあるということなのだろうか。
「理解したようだな。そういうことなら俺達は手を結べる」
「……まだ完全に信頼したという訳ではありませんが」
「それは俺も同じこと――つまりは些細なことだ。あなたは俺を利用すれば良い。俺があなたに対してそうするように。貴族の協力関係とは、そういうものだろう?」
ジオルト様の笑みに対して、私は表情を強張らせる。
そもそもの話、私は陰謀の類は得意な方ではない。ジオルト様のような人には良いように利用されるだけなのではないか。そう思ったのだ。
ただそれを差し引いても、ジオルト様の協力というものは心強かった。
今のやり取りでわかったが、彼は私などよりも余程貴族だ。策謀という面において彼を味方につけられれば、今回の件も上手く着地させられるような気がする。
「……よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む」
結局私は、ジオルト様の手を取ることにした。
彼の介入は、最早避けられない。それならしっかりと手を結ぶ方が良い。そう判断したのだ。
それが正しいのか間違っているのかはわからない。しかしこうなったら、ジオルト様を信じるしかないだろう。私は彼とともに、リオーラとヴォーラス殿下を打ち砕くのだ。
それはジオルト様だ。彼は半ば強引に、この馬車に乗った。
「ヴォーラスの不在時に国王陛下との話し合いを取り付けるとは見事なものだな……」
「……お褒めいただき、ありがとうございます」
「あなたならば、俺の協力などは不要か? というよりも、信用できないといった所か。顔にそう書いてある」
「……まあ、そうですね」
ジオルト様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
彼のことは、あまり信用できていない。ヴォーラス殿下を排除したい。その言葉に嘘はなさそうなのだが、真意がわからない。
王家とノーラン公爵家は親族の関係だ。ヴォーラス殿下に何かをするということは、ノーラン公爵家にも色々と影響があると思うのだが。
「しかし安心しろ。俺はあなたを裏切りはしない。先も言った通り、ヴォーラスは邪魔な存在だ。奴の思想はあなたも知っているのだろう?」
「えっと……妹のリオーラと概ね同じだと思っていますが」
「そして俺の生まれに関しても、あなたは知っているはずだ。というよりもこれは、知らない者がいない」
「ジオルト様は……ああ」
ジオルト様が与えてくれたヒントによって、私はある程度事情を自分の中で噛み砕くことができた。
彼はノーラン公爵と平民との間に生まれた子供だ。その威厳と気品、ナゼルス様との仲から忘れそうになるが、平民の妾の子という出自は幸福なものとは言い難い。
恐らくヴォーラス殿下などは、ジオルト様のことは快く思っていないだろう。平民を見下す彼がジオルト様に対して敵意を向けることは、容易に想像できる。
そういうことなら、ジオルト様からしてもヴォーラス殿下を排除したいと思うのかもしれない。単純に二人が、敵対関係にあるということなのだろうか。
「理解したようだな。そういうことなら俺達は手を結べる」
「……まだ完全に信頼したという訳ではありませんが」
「それは俺も同じこと――つまりは些細なことだ。あなたは俺を利用すれば良い。俺があなたに対してそうするように。貴族の協力関係とは、そういうものだろう?」
ジオルト様の笑みに対して、私は表情を強張らせる。
そもそもの話、私は陰謀の類は得意な方ではない。ジオルト様のような人には良いように利用されるだけなのではないか。そう思ったのだ。
ただそれを差し引いても、ジオルト様の協力というものは心強かった。
今のやり取りでわかったが、彼は私などよりも余程貴族だ。策謀という面において彼を味方につけられれば、今回の件も上手く着地させられるような気がする。
「……よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく頼む」
結局私は、ジオルト様の手を取ることにした。
彼の介入は、最早避けられない。それならしっかりと手を結ぶ方が良い。そう判断したのだ。
それが正しいのか間違っているのかはわからない。しかしこうなったら、ジオルト様を信じるしかないだろう。私は彼とともに、リオーラとヴォーラス殿下を打ち砕くのだ。
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