「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵令息から溺愛されています。

木山楽斗

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16.兄からの言葉

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 ベランダで風を浴びながら、私は昔のことを色々と思い出していた。
 カルディアスと出会ってから今日まで、様々なことがあった。そのどれもが、いい思い出である。

「ふぅ……」

 私は、ゆっくりとため息をついた。
 カルディアスは、席を外している。彼が気を遣って、私を一人にしてくれているのだ。
 だが、彼をいつまでも待たせている訳にはいかない。私も、そろそろ結論を出さなければならないだろう。

「……うん、行こう」

 私は、ゆっくりと歩を進めた。客室の中に、戻ったのである。
 カルディアスは、ここにはいない。部屋の中で待ってもらっていても良かったのだが、席を外しているようだ。
 代わりに、そこには一人の男性がいた。それは、アルベルドお兄様である。

「お兄様、どうしてこちらに?」
「カルディアスから覚悟を決めて、自らの思いを告白したと聞いてな……少し、お前と話がしたいと思ったのだ」

 私は、お兄様がここにいたことに驚いていた。
 だが、よく考えてみれば、今回の件はお兄様にとっても重要なことだ。色々と言いたいことがあるのは、当然なのかもしれない。

「とりあえず、そちらに座ってもらえるか?」
「は、はい……」

 お兄様に促されて、私は彼の向かいの椅子に座った。
 正直、少し緊張している。私は一体、何を言われるのだろうか。

「前提として知っておいて欲しいのは、今回の婚約に関して、何も心配する必要はないということだ」
「何も心配する必要はない?」
「ああ、どのような形になっても、俺は構わない。お前の好きなようにするがいい」
「それは……」

 アルベルドお兄様は、笑顔でそのようなことを言ってきた。
 今回の件は、王族と侯爵家の問題である。決して、私とカルディアス個人の問題ではない。
 だが、お兄様は個人の問題だと言っているのだろう。私の選択によって、両家の運命が決まる。それでいいと言ってくれているのだ。

「これは、カルディアスが出した答えでもある。奴は真面目な奴だからな……今回の件の返答を区切りとしたいのだろう」
「でも、それって……」
「馬鹿な奴だろう」
「……そうかもしれませんね」

 私とお兄様は、笑い合った。
 カルディアスは、本当に真面目な人である。そう思ったら、私は自然と笑みを零してしまったのだ。

「さて、もう結論は出ているのだろう? それなら、行くといい。あいつは、中庭にいる」
「中庭ですか……わかりました」

 お兄様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 こうして、私はカルディアスの元に向かうのだった。
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