嫌われ者の王弟殿下には、私がお似合いなのでしょう? 彼が王になったからといって今更離婚しろなんて言わないでください。

木山楽斗

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34.突然の訪問者

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「さて、ホルルナ嬢……俺に何か用か? いや、俺達というべきだろうか?」
「ええ、私はロナード様とお姉様に用があります」

 私達の目の前で、ホルルナは堂々とそう宣言した。
 国王の前であるというのに、胸を張れる度胸は大したものである。ただ、怖いもの知らずというだけなのかもしれない。

「まずロナード様に進言したいのですが、お姉様は碌な人間ではありません」
「ほう?」
「彼女は、カルランド公爵家の血を継いでいません。お父様という存在がありながら、どこぞの馬の骨ともわからない男と関係を持った愚かな女の娘です」

 ホルルナは、私の母のことを糾弾した。それに対して私は怒りを覚えたが、何も言い返すことができない。母がそういうことをしたということは、こちらも許容したことだからだ。
 私は、母のことを利用すること決めた。だから、母を糾弾されても何も言わない。私がカルランド公爵家から抜け出すために、それはしっかりと肝に銘じておく必要がある。

「だが、そのどこぞの馬の骨かわからない男こそが、王族であった訳だ。彼女は、王族の血を引いている。無論出自に多少問題はあるが、それでも高貴な存在なのだ」
「そんな事実はまやかしです」
「王家が調べた事実だぞ?」
「王家であっても、間違いは犯すはずです」
「その間違いの証拠を示してもらえなければ、こちらも納得することはできないな……」

 ホルルナはまず私が王家の血筋ではないことを主張してくるつもりのようだ。当然そんな訳がないことは彼女も知っているので、そこから切り崩そうとしているのだろう。
 ただ、それは無理だ。ロナード様はきちんとした証拠を作っている。その証拠を偽装であると主張するのは簡単だが、それだと結論は出ない。泥沼になるだけだろう。

「仮に王族の血を受け継いでいたとしても、彼女は愚かな女の血を継いでいるのですよ? 不義の子である彼女が王妃に相応しいとは思いません」
「出自に問題があろうとも彼女が俺を支えてくれていたのは事実だ。本人の人格には、何ら問題はない。それに、俺は王位争いで散った王族達に対して、一定の同情心を持っている。故に、その血を継ぐ彼女を無下にしたいとは思わないのさ」

 私が王妃に相応しいかどうか、それはこの国の中でも多くの者が疑問に思っていることだろう。
 だが、その状況を打破するためのエピソードをロナード様は持っている。僻地において、私に支えられてきた日々。彼はそれを使って、人々の人情に訴えようとしているのだ。
 しかし、それはホルルナには通用しない。彼女は、そんなエピソードを気にするような人間ではないのである。
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