30 / 50
30.屋敷に戻って
しおりを挟む
「随分と長い間、出かけていたものだな?」
「ええ、手紙にも書いた通り、少し旅行してきたのです。この所色々とあって、疲れましたからね。これはお土産です」
「おお、それはありがたい」
私は、ヴェリオン伯爵家の屋敷に戻って来ていた。
しばらく屋敷を離れていたことは、旅行であるとお父様には伝えてある。
それを疑っているという感じはなさそうだ。お父様は鈍感なので、私の適当な嘘を信じ込んでいるのだろう。
「いや、愉快愉快、そうだ。ペルリナとロメリアのことだがな。どうやら丸く収まりそうだ」
「丸く収まる?」
「ここから出て行った後、偶然山賊に襲われたらしくてな。どうやら二人とも、死んだらしい。ははっ、愉快なものだ。我々を騙していたろくでなしどもには相応しい末路だといえるだろう」
クレンド様の指示によって、警察からお父様には虚偽の連絡が行われている。
そちらもお父様は、信じ切っているらしい。ここまで単純な人だとは、正直驚きである。
「お義母様……いいえ、もうペルリナさんですか。彼女はお父様に何かを言いかけていましたが、あれは一体何だったのですか?」
「うん? ああ、それについてはまったく持ってお前が気にする必要がないことだ。これ以上、あの親子のことでお前が心配する必要などはない」
「そうですか」
「ふん、無様に死に絶えたのだろうな。笑えてくる。まさか、山賊なんぞにやられるとはなぁ」
試しに揺さぶりをかけてみたが、お父様は豪快に笑うだけだった。
いくら自分を騙していた親子とはいえ、その死を嘲笑うお父様は、最低の人間であるといえるだろう。
少なくとも、私はその笑みを軽蔑する。やはりこの人とは、一生分かり合うことができないだろう。元々分かり合う気なんてなかったが、改めてそう思った。
「ああ、あの二人が私達のことを騙していたことは、公表するなよ。せっかく死んだんだ。その死を利用させてもらうことにしよう。悲惨な死を遂げた伯爵夫人と令嬢として、世間の同情を誘えるだろうしな。そう意味では、あの二人は初めて役に立ったといえる」
「なるほど……ああ、そうだ。お父様、私とクレンド様の婚約のことですが」
「ああ、それについてはエヴォート侯爵から快く了承してもらえた。お前は本当に良い仕事をする」
「それなら良かったです」
私とクレンド様の婚約が成立した。その報告を聞いて、私は安心する。
これで後は、計画を実行に移すだけだ。そろそろお父様には、今までしてきたことへの報いを受けてもらうことにしよう。
「ええ、手紙にも書いた通り、少し旅行してきたのです。この所色々とあって、疲れましたからね。これはお土産です」
「おお、それはありがたい」
私は、ヴェリオン伯爵家の屋敷に戻って来ていた。
しばらく屋敷を離れていたことは、旅行であるとお父様には伝えてある。
それを疑っているという感じはなさそうだ。お父様は鈍感なので、私の適当な嘘を信じ込んでいるのだろう。
「いや、愉快愉快、そうだ。ペルリナとロメリアのことだがな。どうやら丸く収まりそうだ」
「丸く収まる?」
「ここから出て行った後、偶然山賊に襲われたらしくてな。どうやら二人とも、死んだらしい。ははっ、愉快なものだ。我々を騙していたろくでなしどもには相応しい末路だといえるだろう」
クレンド様の指示によって、警察からお父様には虚偽の連絡が行われている。
そちらもお父様は、信じ切っているらしい。ここまで単純な人だとは、正直驚きである。
「お義母様……いいえ、もうペルリナさんですか。彼女はお父様に何かを言いかけていましたが、あれは一体何だったのですか?」
「うん? ああ、それについてはまったく持ってお前が気にする必要がないことだ。これ以上、あの親子のことでお前が心配する必要などはない」
「そうですか」
「ふん、無様に死に絶えたのだろうな。笑えてくる。まさか、山賊なんぞにやられるとはなぁ」
試しに揺さぶりをかけてみたが、お父様は豪快に笑うだけだった。
いくら自分を騙していた親子とはいえ、その死を嘲笑うお父様は、最低の人間であるといえるだろう。
少なくとも、私はその笑みを軽蔑する。やはりこの人とは、一生分かり合うことができないだろう。元々分かり合う気なんてなかったが、改めてそう思った。
「ああ、あの二人が私達のことを騙していたことは、公表するなよ。せっかく死んだんだ。その死を利用させてもらうことにしよう。悲惨な死を遂げた伯爵夫人と令嬢として、世間の同情を誘えるだろうしな。そう意味では、あの二人は初めて役に立ったといえる」
「なるほど……ああ、そうだ。お父様、私とクレンド様の婚約のことですが」
「ああ、それについてはエヴォート侯爵から快く了承してもらえた。お前は本当に良い仕事をする」
「それなら良かったです」
私とクレンド様の婚約が成立した。その報告を聞いて、私は安心する。
これで後は、計画を実行に移すだけだ。そろそろお父様には、今までしてきたことへの報いを受けてもらうことにしよう。
642
あなたにおすすめの小説
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるラルリアは、優秀な妹に比べて平凡な人間であった。
これといって秀でた点がない彼女は、いつも妹と比較されて、時には罵倒されていたのである。
しかしそんなラルリアはある時、王太子の婚約者に選ばれた。
それに誰よりも驚いたのは、彼女自身である。仮に公爵家と王家の婚約がなされるとしても、その対象となるのは妹だと思っていたからだ。
事実として、社交界ではその婚約は非難されていた。
妹の方を王家に嫁がせる方が有益であると、有力者達は考えていたのだ。
故にラルリアも、婚約者である王太子アドルヴに婚約を変更するように進言した。しかし彼は、頑なにラルリアとの婚約を望んでいた。どうやらこの婚約自体、彼が提案したものであるようなのだ。
【7話完結】婚約破棄?妹の方が優秀?あぁそうですか・・・。じゃあ、もう教えなくていいですよね?
西東友一
恋愛
昔、昔。氷河期の頃、人々が魔法を使えた時のお話。魔法教師をしていた私はファンゼル王子と婚約していたのだけれど、妹の方が優秀だからそちらと結婚したいということ。妹もそう思っているみたいだし、もう教えなくてもいいよね?
7話完結のショートストーリー。
1日1話。1週間で完結する予定です。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
私の婚約者とキスする妹を見た時、婚約破棄されるのだと分かっていました
あねもね
恋愛
妹は私と違って美貌の持ち主で、親の愛情をふんだんに受けて育った結果、傲慢になりました。
自分には手に入らないものは何もないくせに、私のものを欲しがり、果てには私の婚約者まで奪いました。
その時分かりました。婚約破棄されるのだと……。
妹の婚約者自慢がウザいので、私の婚約者を紹介したいと思います~妹はただ私から大切な人を奪っただけ~
マルローネ
恋愛
侯爵令嬢のアメリア・リンバークは妹のカリファに婚約者のラニッツ・ポドールイ公爵を奪われた。
だが、アメリアはその後に第一王子殿下のゼラスト・ファーブセンと婚約することになる。
しかし、その事実を知らなかったカリファはアメリアに対して、ラニッツを自慢するようになり──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる