13 / 19
13.父からの呼び出し
しおりを挟む
お父様に呼び出されると、少しだけドキドキしてしまう。
他の家族と違って、お父様は一家を率いる立場である。その人に呼び出されるということは、オーデン伯爵家の何かしらに関わる可能性が、他の人よりも高いからだ。
「……エレティア、実は君に婚約の話がきた」
「こ、婚約の話ですか?」
お父様に言われたことに、私は少し驚くことになった。
もちろん、婚約できるならしたいと思っていた。結婚こそが、最もオーデン伯爵家に貢献できる手段であるからだ。
ただ、痣のこともあるため、それがこんなにも早く持ち掛けられるなんて思ってもいなかった。
その予想外の出来事に、私の思考はあまり追いついていない。
だが、そんなことでは駄目である。私もオーデン伯爵家の一員なのだ。しっかりとお父様と話さなければならない。
そうして一度冷静になると、今回の婚約に繋がることを思い出した。
それは先日の舞踏会である。あそこで私は、二名の男性と繋がりを持った。
もしかしたら、その二人の内のどちらかが婚約を申し込んできたのではないだろうか。
それがジオート様だったら、私としては嬉しい限りだ。彼のような方から婚約を申し込まれたなら、光栄としか言いようがない。
ただ、ルベルス様である場合は警戒しなければならないだろう。あの彼が婚約を申し込んできたというならば、私は素直に喜ぶことなど不可能である。
「お父様、一体どこのどなたが私に婚約を」
「ラガルス伯爵家ルベルス伯爵令息だ」
「ルベルス様ですか……」
私の予想は、負の面において当たっていた。
それはまったく嬉しいことではない。それを察したのか、お父様はため息をついている。
「……ラガルス伯爵家というものに、私はあまりいい印象を抱いていない。ボルファンドの件は、他の貴族達からも批判されているくらいだ」
「先日の舞踏会で会いましたが、ルベルス様にもいい印象は持てませんでした。彼はなんというか……」
お父様の言葉に対して、私は返答をしようと思った。
しかし言葉が詰まってしまう。それはルベルス様にいい印象を抱いていなかった理由が、私の痣を見て嫌な目をしていたからだからだ。
「皆まで言う必要はない。この婚約の申し出には、あまり乗れなさそうだね。君が嫌だというなら、この婚約については丁重にお断りするとしよう」
「……いえ、せっかくの機会です。無下にするというのは心苦しく思います。ただでさえ、私には事情がありますから」
「私は君に無理をして欲しい訳ではないけれど……そうだね。とりあえず場を設けるくらいは、してもいいだろうか」
お父様は少し悩んだ後に、そんな結論を出してくれた。それは私としては、ありがたいことである。
色々と難しい問題はあるが、私に婚約の話はもう訪れないかもしれない。だからこそ、私は今回の件にぶつかっていきたかったのである。
他の家族と違って、お父様は一家を率いる立場である。その人に呼び出されるということは、オーデン伯爵家の何かしらに関わる可能性が、他の人よりも高いからだ。
「……エレティア、実は君に婚約の話がきた」
「こ、婚約の話ですか?」
お父様に言われたことに、私は少し驚くことになった。
もちろん、婚約できるならしたいと思っていた。結婚こそが、最もオーデン伯爵家に貢献できる手段であるからだ。
ただ、痣のこともあるため、それがこんなにも早く持ち掛けられるなんて思ってもいなかった。
その予想外の出来事に、私の思考はあまり追いついていない。
だが、そんなことでは駄目である。私もオーデン伯爵家の一員なのだ。しっかりとお父様と話さなければならない。
そうして一度冷静になると、今回の婚約に繋がることを思い出した。
それは先日の舞踏会である。あそこで私は、二名の男性と繋がりを持った。
もしかしたら、その二人の内のどちらかが婚約を申し込んできたのではないだろうか。
それがジオート様だったら、私としては嬉しい限りだ。彼のような方から婚約を申し込まれたなら、光栄としか言いようがない。
ただ、ルベルス様である場合は警戒しなければならないだろう。あの彼が婚約を申し込んできたというならば、私は素直に喜ぶことなど不可能である。
「お父様、一体どこのどなたが私に婚約を」
「ラガルス伯爵家ルベルス伯爵令息だ」
「ルベルス様ですか……」
私の予想は、負の面において当たっていた。
それはまったく嬉しいことではない。それを察したのか、お父様はため息をついている。
「……ラガルス伯爵家というものに、私はあまりいい印象を抱いていない。ボルファンドの件は、他の貴族達からも批判されているくらいだ」
「先日の舞踏会で会いましたが、ルベルス様にもいい印象は持てませんでした。彼はなんというか……」
お父様の言葉に対して、私は返答をしようと思った。
しかし言葉が詰まってしまう。それはルベルス様にいい印象を抱いていなかった理由が、私の痣を見て嫌な目をしていたからだからだ。
「皆まで言う必要はない。この婚約の申し出には、あまり乗れなさそうだね。君が嫌だというなら、この婚約については丁重にお断りするとしよう」
「……いえ、せっかくの機会です。無下にするというのは心苦しく思います。ただでさえ、私には事情がありますから」
「私は君に無理をして欲しい訳ではないけれど……そうだね。とりあえず場を設けるくらいは、してもいいだろうか」
お父様は少し悩んだ後に、そんな結論を出してくれた。それは私としては、ありがたいことである。
色々と難しい問題はあるが、私に婚約の話はもう訪れないかもしれない。だからこそ、私は今回の件にぶつかっていきたかったのである。
46
あなたにおすすめの小説
可愛い妹を母は溺愛して、私のことを嫌っていたはずなのに王太子と婚約が決まった途端、その溺愛が私に向くとは思いませんでした
珠宮さくら
恋愛
ステファニア・サンマルティーニは、伯爵家に生まれたが、実母が妹の方だけをひたすら可愛いと溺愛していた。
それが当たり前となった伯爵家で、ステファニアは必死になって妹と遊ぼうとしたが、母はそのたび、おかしなことを言うばかりだった。
そんなことがいつまで続くのかと思っていたのだが、王太子と婚約した途端、一変するとは思いもしなかった。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
幼なじみは、私に何を求めているのでしょう?自己中な彼女の頑張りどころが全くわかりませんが、私は強くなれているようです
珠宮さくら
恋愛
厄介なんて言葉で片付けられない幼なじみが、侯爵令嬢のヴィディヤ・カムダールにはいた。
その人物に散々なまでに振り回されて、他の者たちに頼られていたことで、すっかり疲弊していたが頼りになる従兄が助けてくれてりしていた。
だが、自己中すぎる幼なじみは、誰もが知っている彼女の母親すらとっくに越えていたようだ。
それだけでなく、ヴィディヤの周りには幼なじみによって、そこまでではないと思われてしまいがちな人たちがいたようで……。
私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです
珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。
そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。
でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。
厄介者扱いされ隣国に人質に出されたけど、冷血王子に溺愛された
今川幸乃
恋愛
オールディス王国の王女ヘレンは幼いころから家族に疎まれて育った。
オールディス王国が隣国スタンレット王国に戦争で敗北すると、国王や王妃ら家族はこれ幸いとばかりにヘレンを隣国の人質に送ることに決める。
しかも隣国の王子マイルズは”冷血王子”と呼ばれ、数々の恐ろしい噂が流れる人物であった。
恐怖と不安にさいなまれながら隣国に赴いたヘレンだが、
「ようやく君を手に入れることが出来たよ、ヘレン」
「え?」
マイルズの反応はヘレンの予想とは全く違うものであった。
病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。
没落寸前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更手のひらを返しても遅いのです。
木山楽斗
恋愛
両親が亡くなってすぐに兄が失踪した。
不幸が重なると思っていた私に、さらにさらなる不幸が降りかかってきた。兄が失踪したのは子爵家の財産のほとんどを手放さなければならい程の借金を抱えていたからだったのだ。
当然のことながら、使用人達は解雇しなければならなくなった。
多くの使用人が、私のことを罵倒してきた。子爵家の勝手のせいで、職を失うことになったからである。
しかし、中には私のことを心配してくれる者もいた。
その中の一人、フェリオスは私の元から決して離れようとしなかった。彼は、私のためにその人生を捧げる覚悟を決めていたのだ。
私は、そんな彼とともにとあるものを見つけた。
それは、先祖が密かに残していた遺産である。
驚くべきことに、それは子爵家の財産をも上回る程のものだった。おかげで、子爵家は存続することができたのである。
そんな中、私の元に帰ってくる者達がいた。
それは、かつて私を罵倒してきた使用人達である。
彼らは、私に媚を売ってきた。もう一度雇って欲しいとそう言ってきたのである。
しかし、流石に私もそんな彼らのことは受け入れられない。
「今更、掌を返しても遅い」
それが、私の素直な気持ちだった。
※2021/12/25 改題しました。(旧題:没落貴族一歩手前でしたが、先祖の遺産が見つかったおかげで持ち直すことができました。私を見捨てた皆さん、今更掌を返してももう遅いのです。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる