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12.もやもやすること

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「……というか、私達の結婚についても色々と考えなければならないけれど、お兄様だって相手を見つける必要があるのではありませんか?」
「む……」

 お兄様に一しきり反論したお姉様は、思い出したようにそんなことを言った。
 その言葉に、お兄様は面食らったような顔をしている。それは多分、私も同じだ。

 しかし考えてみると、お姉様の指摘はもっともである。
 お兄様だって、妻を迎えてオーデン伯爵家の後継者を作る必要があるのだ。それも貴族として、とても大切な役目だといえる。

「……もちろん、俺も何れは妻を迎えるつもりだ」
「候補などは、いらっしゃらないのですか?」
「それは父上とも相談しているが、決めかねている。いい相手というのは、そう簡単に見つかるものではない」

 お姉様の質問に対して、お兄様は少し歯切れが悪い回答を述べていた。
 そういった反応は、お兄様にしては珍しい反応である。それだけ婚約に関しては、不明慮であるということなのだろうか。

「……エレティア、どうかしたの?」
「え?」

 そこでお姉様は、私の方に声をかけていた。
 その質問に私はすぐに答えられない。質問の意図が、よくわからなかったからだ。

「なんというか、少し不機嫌そうな気がするのだけれど……」
「そ、そうですか?」
「ええ……あ、もしかして」

 私が首を傾げていると、お姉様は手を叩いた後笑顔を浮かべた。明らかに、何かを思いついたというような動作である。
 しかし私は声をかけられた理由からも納得できていない。最初から説明してもらいたい所である。

「お兄様が婚約することに対して、エレティアとしても少しもやもやがあった、ということかしら?」
「もやもや、ですか?」
「ええ、お兄様の隣に、私でもエレティアでもない女性がいるのが、気に入らないのではないかしら?」
「それは……」

 お姉様の言葉に、私は少し想像することになった。
 すると、確かになんだか少し嫌な気持ちが芽生えてくる。でも仕方ないことではあるし、複雑な心境になってしまう。

「確かに、少しもやもやしてしまいます」
「やっぱり、そうなね。まあ、私も思う所がない訳ではないし……お兄様、そういうことなのですけれど、どうでしょうか?」
「……別に俺は、そのことに対して何か述べることは何もないが」
「ふふ……お兄様は素直ではありませんね」

 お兄様に対しても、お姉様は笑顔を向けていた。なんだかとても楽しそうである。
 考えてみると、お兄様とお姉様はいつもそんな感じだ。実の所お兄様は、お姉様にまったく頭が上がらないのである。
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