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13.父からの呼び出し

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 お父様に呼び出されると、少しだけドキドキしてしまう。
 他の家族と違って、お父様は一家を率いる立場である。その人に呼び出されるということは、オーデン伯爵家の何かしらに関わる可能性が、他の人よりも高いからだ。

「……エレティア、実は君に婚約の話がきた」
「こ、婚約の話ですか?」

 お父様に言われたことに、私は少し驚くことになった。
 もちろん、婚約できるならしたいと思っていた。結婚こそが、最もオーデン伯爵家に貢献できる手段であるからだ。

 ただ、痣のこともあるため、それがこんなにも早く持ち掛けられるなんて思ってもいなかった。
 その予想外の出来事に、私の思考はあまり追いついていない。
 だが、そんなことでは駄目である。私もオーデン伯爵家の一員なのだ。しっかりとお父様と話さなければならない。

 そうして一度冷静になると、今回の婚約に繋がることを思い出した。
 それは先日の舞踏会である。あそこで私は、二名の男性と繋がりを持った。
 もしかしたら、その二人の内のどちらかが婚約を申し込んできたのではないだろうか。

 それがジオート様だったら、私としては嬉しい限りだ。彼のような方から婚約を申し込まれたなら、光栄としか言いようがない。
 ただ、ルベルス様である場合は警戒しなければならないだろう。あの彼が婚約を申し込んできたというならば、私は素直に喜ぶことなど不可能である。

「お父様、一体どこのどなたが私に婚約を」
「ラガルス伯爵家ルベルス伯爵令息だ」
「ルベルス様ですか……」

 私の予想は、負の面において当たっていた。
 それはまったく嬉しいことではない。それを察したのか、お父様はため息をついている。

「……ラガルス伯爵家というものに、私はあまりいい印象を抱いていない。ボルファンドの件は、他の貴族達からも批判されているくらいだ」
「先日の舞踏会で会いましたが、ルベルス様にもいい印象は持てませんでした。彼はなんというか……」

 お父様の言葉に対して、私は返答をしようと思った。
 しかし言葉が詰まってしまう。それはルベルス様にいい印象を抱いていなかった理由が、私の痣を見て嫌な目をしていたからだからだ。

「皆まで言う必要はない。この婚約の申し出には、あまり乗れなさそうだね。君が嫌だというなら、この婚約については丁重にお断りするとしよう」
「……いえ、せっかくの機会です。無下にするというのは心苦しく思います。ただでさえ、私には事情がありますから」
「私は君に無理をして欲しい訳ではないけれど……そうだね。とりあえず場を設けるくらいは、してもいいだろうか」

 お父様は少し悩んだ後に、そんな結論を出してくれた。それは私としては、ありがたいことである。
 色々と難しい問題はあるが、私に婚約の話はもう訪れないかもしれない。だからこそ、私は今回の件にぶつかっていきたかったのである。
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