婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから

「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」

 男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。

 将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。

 そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。

 リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。

 エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。

 カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。

 事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。

「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」

 荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。

 だからエナは宣言することにした。

「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」

※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。
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