七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗

文字の大きさ
18 / 26

18.国王の乱心

しおりを挟む
「父上、ご無事ですか?」
「……レムバルか」

 私とレムバル様は、国王様の私室に来ていた。
 ロメリア様に取りついた悪魔はここにやって来て、国王様に飛び掛かったらしい。
 当然、兵士達は悪魔と止めたり国王様を守ったりしたそうだ。しかし相手がロメリア様に取りついているため、ほとんど手出しができず手をこまねいているというのが現状のようである。

「私のことはいい。それよりもロメリアのことを頼む……あの化け物は、私の愛娘を食い物にしようとしている」
「父上……」
「あの化け物は許さない……捕まえて八つ裂きにしてやる」

 国王様の言葉に対して、レムバル様は複雑な表情を浮かべていた。
 その顔からは、呆れと悲しみのような感情が読み取れる。恐らくこんな時まで娘に対する偏愛を語る父に対して、色々と思う所があるのだろう。

「近頃ロメリアの様子がおかしかったのも、あいつが原因に違いない。考えてみればおかしかったのだ。王城の魔法使い達などをクビにしろなど、優しく寛大なあの子が言うようなことではなかった」
「……」
「ロメリアは昔から優しく穏やかな子だった。そうだろう?」

 国王様の語るロメリア様は、実際の彼女とはかけ離れたものだった。
 それはつまり、彼女は父親の前では本性を隠していたということなのだろう。もしかしたら彼女は、媚を売ることによって自分のわがままを押し通せるとわかっていたのかもしれない。

「父上……お言葉ですが、ロメリアが今までしてきた横暴は全て彼女の意思によるものです。あの悪魔の影響ではありません」
「……そんなはずはないだろう」
「ラムーナさん、そうですよね?」
「ええ、あの悪魔がこの王都に入って来られたのは私が張った結界の効力がなくなってから。つまりは私が辞めてしばらくしてからということになります」
「何かの間違いだ。そもそも、お主が張った結界が不完全だったのではないか?」

 私の言葉に対して、国王様は表情を歪めていた。
 その怒りに満ち溢れた顔を、私は哀れに感じていた。こうやって面を向かって話すことによって、私は理解したのだ。国王様は、現実を受け入れられていないのだと。

「父上、ラムーナさんを侮辱するなどあってはならないことです。それがわからないのですか? わからない程に、父上は落ちぶれてしまったのですか?」
「そもそもの話、お主が聖女に決まったことが全ての過ちだった。元々ロメリアを聖女に据えるという話にしていれば、あの子も変に嫉妬を拗らせなかっただろうに……」
「父上、何を言っているのですか?」

 国王様は、ゆっくりと言葉を吐き出していた。
 恐らく今の彼には誰の声も聞こえていないだろう。自分の世界に籠って、空想の世界に浸っているだけだ。

「……レムバル、今の父上に何を言っても無駄だ」
「……兄上?」

 そこで私とレムバル様は、部屋に入って来た一人の男性に注目することになった。
 その人物は、この国の第一王子であるルドベルド様だ。 どうやら、彼も騒ぎを聞きつけてここに来たらしい。
 ルドベルト様は、その鋭い目で父親を見つめている。その視線にも色々な感情が込められているのだろう。怒っているのか悲しんでいるのか、判断がつかないような視線だ。
 ただその視線には、決意のようなものが籠っている気がする。その決意があまり明るいものではないような気がして、私は少しだけ不安を覚えるのだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

義妹が聖女を引き継ぎましたが無理だと思います

成行任世
恋愛
稀少な聖属性を持つ義妹が聖女の役も婚約者も引き継ぐ(奪う)というので聖女の祈りを義妹に託したら王都が壊滅の危機だそうですが、私はもう聖女ではないので知りません。

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

婚約者の姉に薬品をかけられた聖女は婚約破棄されました。戻る訳ないでしょー。

十条沙良
恋愛
いくら謝っても無理です。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら

黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。 最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。 けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。 そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。 極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。 それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。 辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの? 戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる? ※曖昧設定。 ※別サイトにも掲載。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井ゆの花
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

処理中です...