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19.対峙する兄弟
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「聖女ラムーナ、申し訳ない。父上の無礼に関しては俺が謝罪しよう。あなたは聖女に選ばれるべき存在であり、誰よりも聖女としての役目をこなしている」
「あ、いえ……」
「愚妹によって、あなたが迷惑を被ったことも合わせて謝罪したい。情けない限りではあるが、我ら一族はその愚行を重ねてしまった」
ルドベルド様は、私に対してそう謝罪してきた。
彼もレムバル様とともに、国王様に抗議していた人物だ。
故に、私は彼に謝罪してもらいたいとは思っていなかった。むしろ私達を気遣ってくれたことに感謝したいくらいだ。
「かつて父上は、名君と呼ばれていた……いや、今もまだそれは変わっていないか。王城での横暴は、幸いか不幸かまだ群衆には伝わっていない。ただ、俺やお前はずっと知っていた。父上の危うい面を」
「そうですね……」
「無論俺達は、双方に働きかけてその横暴を止めようとしていた。だがそれは叶わなかった。俺達は無力だったのだ」
「はい、そう思います」
ルドベルド様は、すぐに私からレムバル様へと視線を移した。
何やら重要な話をしているようなので、私はとりあえず黙って成り行きを見守ることにする。王族の問題に、私が介入するべきではないと思ったのだ。
「全ての歯車が狂ったのは、思えば母上が身罷られた時だったのかもしれない。お前は覚えていないかもしれないが、あの時父上はかなり気落ちしていた」
「……その反動で、ロメリアを溺愛したということですか?」
「俺はそのように考えている。もっとも、最早理由などどうでもいいことではあるだろう。狂った歯車が戻れない以上、何を言っても無駄なことだ」
「兄上……?」
そこでルドベルド様は、懐から短剣を取り出した。
彼はそれをゆっくりと父親に向ける。何をしようとしているかは明白だ。
「兄上、何をしようというのですか!」
「決まっている。この暗君を葬り去るのだ」
「葬り去るなんて……」
「この国に残るのは、名君だった父上だけでいい。これ以上愚行を重ねる前に、父上には消えてもらう必要がある」
「そんな……」
ルドベルド様の冷たい視線に、レムバル様は少し怯んでいた。
やはり、彼は優しいのだろう。どれだけ落ちぶれても、父親を見捨てるなんてことはできないようである。
「悪魔によって父上は殺された。悲劇とするには丁度いい状況だ」
「父上を……いけません、兄上」
「レムバル、部屋から出て行け」
レムバル様は、手を広げてルドベルド様の前に立ちはだかった。
それによって、ルドベルド様も少し怯んだような気がする。立ちはだかる弟の前で、彼は兄に戻ってしまったのかもしれない。
「……ルドベルド様、レムバル様、もうやめてください」
「聖女ラムーナ、これは我々王族の問題だ。いくらあなたでも口出しするのはやめてもらいたい」
「いえ……そうではないのです。お二人とも国王様のことをよく見てください」
「何……?」
そこで私は、二人の間に割って入った。
ルドベルド様の言う通り、本来私はそのようなことをするべき立場ではない。それはわかっていた。成り行きを見守るつもりでいたのだ。
しかし私は気付いてしまった。見てしまったのだ。兄弟のやり取りを目の前で見せつけられて、何かが壊れたような国王様の表情を。
「父上……?」
「……」
「何が起こって……」
二人の呼びかけに、国王様は応えない。ただ虚空を見つめているだけである。
恐らく、国王様も本当はわかっていたのだろう。自分の今までの行いが、どういったものであったかということを。
その上で兄弟が自分のことで言い争っているのを聞いて、国王様は本当に壊れてしまったのだ。辛うじて保っていた精神の均衡が、完全に崩れ去ってしまったのだろう。
「あ、いえ……」
「愚妹によって、あなたが迷惑を被ったことも合わせて謝罪したい。情けない限りではあるが、我ら一族はその愚行を重ねてしまった」
ルドベルド様は、私に対してそう謝罪してきた。
彼もレムバル様とともに、国王様に抗議していた人物だ。
故に、私は彼に謝罪してもらいたいとは思っていなかった。むしろ私達を気遣ってくれたことに感謝したいくらいだ。
「かつて父上は、名君と呼ばれていた……いや、今もまだそれは変わっていないか。王城での横暴は、幸いか不幸かまだ群衆には伝わっていない。ただ、俺やお前はずっと知っていた。父上の危うい面を」
「そうですね……」
「無論俺達は、双方に働きかけてその横暴を止めようとしていた。だがそれは叶わなかった。俺達は無力だったのだ」
「はい、そう思います」
ルドベルド様は、すぐに私からレムバル様へと視線を移した。
何やら重要な話をしているようなので、私はとりあえず黙って成り行きを見守ることにする。王族の問題に、私が介入するべきではないと思ったのだ。
「全ての歯車が狂ったのは、思えば母上が身罷られた時だったのかもしれない。お前は覚えていないかもしれないが、あの時父上はかなり気落ちしていた」
「……その反動で、ロメリアを溺愛したということですか?」
「俺はそのように考えている。もっとも、最早理由などどうでもいいことではあるだろう。狂った歯車が戻れない以上、何を言っても無駄なことだ」
「兄上……?」
そこでルドベルド様は、懐から短剣を取り出した。
彼はそれをゆっくりと父親に向ける。何をしようとしているかは明白だ。
「兄上、何をしようというのですか!」
「決まっている。この暗君を葬り去るのだ」
「葬り去るなんて……」
「この国に残るのは、名君だった父上だけでいい。これ以上愚行を重ねる前に、父上には消えてもらう必要がある」
「そんな……」
ルドベルド様の冷たい視線に、レムバル様は少し怯んでいた。
やはり、彼は優しいのだろう。どれだけ落ちぶれても、父親を見捨てるなんてことはできないようである。
「悪魔によって父上は殺された。悲劇とするには丁度いい状況だ」
「父上を……いけません、兄上」
「レムバル、部屋から出て行け」
レムバル様は、手を広げてルドベルド様の前に立ちはだかった。
それによって、ルドベルド様も少し怯んだような気がする。立ちはだかる弟の前で、彼は兄に戻ってしまったのかもしれない。
「……ルドベルド様、レムバル様、もうやめてください」
「聖女ラムーナ、これは我々王族の問題だ。いくらあなたでも口出しするのはやめてもらいたい」
「いえ……そうではないのです。お二人とも国王様のことをよく見てください」
「何……?」
そこで私は、二人の間に割って入った。
ルドベルド様の言う通り、本来私はそのようなことをするべき立場ではない。それはわかっていた。成り行きを見守るつもりでいたのだ。
しかし私は気付いてしまった。見てしまったのだ。兄弟のやり取りを目の前で見せつけられて、何かが壊れたような国王様の表情を。
「父上……?」
「……」
「何が起こって……」
二人の呼びかけに、国王様は応えない。ただ虚空を見つめているだけである。
恐らく、国王様も本当はわかっていたのだろう。自分の今までの行いが、どういったものであったかということを。
その上で兄弟が自分のことで言い争っているのを聞いて、国王様は本当に壊れてしまったのだ。辛うじて保っていた精神の均衡が、完全に崩れ去ってしまったのだろう。
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