お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

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5.とある町に訪れて

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 ゴートン侯爵家の領地であるカルタジャという町は、大きな町であった。
 町の大通りには賑わっており、人々の喧騒が感じられる。こんな町で住む場所を与えてもらえるなんて、なんとも贅沢な話だ。

「まさか、クルード様がいらっしゃるなんて思っていませんでした」
「申し訳ありません、突然の訪問で……」
「いえ、お気になさらないでください。クルード様ならいつでも歓迎ですよ。満足にもてなせないことが申し訳ありませんが……」
「それこそ気にするべきではないことです」

 カルタジャの町長バルザールさんは、三十歳から四十歳くらいに見えた。
 町長としては、どちらかと言えば若い部類に入るだろう。そんな彼は、巨体とは裏腹にクルード様に対して柔和な笑みを向けている。

「それで、そちらの方は……」
「こちらはアゼリアさんです。訳あってゴートン侯爵家が保護することになりました。とはいえ、当家の屋敷で暮らしていただくということには不都合があるのです。そこでこちらの町で、と思いまして」
「……なるほど、住む場所や仕事などを工面すれば良い、ということですかな?」
「ええ、お願いします」

 バルザールさんは、私のことを観察しているようだった。
 恐らく既に、どこかの貴族の令嬢だということくらいは把握しているのだろう。その目が鋭く光ったことで、私はそれを察することになった。
 貴族の令嬢の保護なんて、なんとも難しいことであるだろう。しかし領主の嫡子からの要請を無下にできるはずもない。

「アゼリア……さんで、良いでしょうか? 読み書きと計算など、どれくらいできますかな?」
「……人並みにはできると思います。幸いなことに、教育に関しては上等なものを受けさせていただいていましたから」
「そういうことなら、役所で働いてもらいましょう。寮もありますから、そちらに入ってもらうのが得策かと」
「ご寛大な措置に感謝いたします、バルザール町長」

 バルザールさんの判断は、なんとも早いものであった。
 こういったことには、慣れているのだろうか。特に動揺もしていないようだし、彼の町長としての度量が読み取れる。

「寮の部屋にはもう一つ空きがありますか?」
「……クルード様も、こちらに滞在されるということですか?」
「ええまあ、彼女が独り立ちできるとわかるくらいまでは、傍にいるつもりです」
「なるほど、それならお二人が隣の部屋ということにしましょうか」
「ええ、防犯の観点などからも、それが良いかと……」

 クルード様、ゴートン侯爵からしばらく私とともに町に滞在するように言い渡された。
 これに関しては、単に私のためという訳でもないらしいのだが、彼も中々に大変である。私としては、やはり申し訳なく思う。
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