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10.長い道のりを経て
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「……なんだか随分と長い道のりになってしまいましたね」
「そうですね……」
結局住処となる寮に辿り着けたのは、町に着いてから三日目の晩であった。
事件への対処は、討伐が果たせた後も続いて、それに参加している内に太陽は沈み始めていた。
私達はまだ生活の準備などもほとんどできていない。部屋の中には最低限のものしかないだろう。
ただ必要なものなどを揃えるのは、また別の機会となりそうだ。何せ明日からも、まだやることがあるのだから。
「町であの一団を見つけた時は、こんな大事になるとは思っていませんでしたが……」
「アゼリア嬢、ありがとうございます。あなたのお陰で、領地にすくう悪を打ち倒し、領民達を守ることができました」
「いえ、私は大したことは……」
「してくれましたよ。あの一団を見つけたことだけではありません。あなたはここまで、付き合ってくれました。町長からも聞いています。あなたは文句一つ言わず、職員達を手伝ってくれたと」
「これからお世話になるのですから、当然のことですよ」
クルード様に改めて感謝を述べられた私は、少しだけ照れてしまっていた。
それはヒューバート様が変なことを言ったからなのかもしれない。いやもちろん、単純になんだか気恥ずかしいという面もあるが。
「あれだけのことを当然といえる胆力は見事なものです」
「……すみません。少しだけ強がっていたのかもしれません。確かに自分でも頑張ったと今になって思えてきました」
クルード様の言葉に、私は今日までやってきた仕事の量を思い出していた。
それを当然とするのは、今後のためにも良くない。いくらなんでも忙し過ぎた。平時はこうではないことを願っておかなければならない。
「……そんなあなたがラウファス伯爵家から追放されているという状況は、やはり気持ちが良いものではありませんね」
「クルード様……」
「父上が上手くやってくれると良いのですが……いや、そうではありませんか。そもそもの問題を解決しない限りは……すみません。余計なことを言ってしまいましたね」
「いえ……」
私の境遇に関して、クルード様は嘆いているようだった。
それだけ私を評価してくれているということだろうか。そういうことなら、少し嬉しく思う。
貴族としての誇りは、今でも持っているつもりだ。その誇りに恥じない人間でありたい。私はずっとそう思って生きてきたから。
「アゼリア嬢、どうか今夜はゆっくりとお休みください」
「クルード様も、ご自愛ください」
「ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
挨拶を交わしてから、私達はそれぞれの部屋に入っていった。
とにかく今は、休息するべきだろう。余計なことは考えず、私は迅速に就寝の準備をするのだった。
「そうですね……」
結局住処となる寮に辿り着けたのは、町に着いてから三日目の晩であった。
事件への対処は、討伐が果たせた後も続いて、それに参加している内に太陽は沈み始めていた。
私達はまだ生活の準備などもほとんどできていない。部屋の中には最低限のものしかないだろう。
ただ必要なものなどを揃えるのは、また別の機会となりそうだ。何せ明日からも、まだやることがあるのだから。
「町であの一団を見つけた時は、こんな大事になるとは思っていませんでしたが……」
「アゼリア嬢、ありがとうございます。あなたのお陰で、領地にすくう悪を打ち倒し、領民達を守ることができました」
「いえ、私は大したことは……」
「してくれましたよ。あの一団を見つけたことだけではありません。あなたはここまで、付き合ってくれました。町長からも聞いています。あなたは文句一つ言わず、職員達を手伝ってくれたと」
「これからお世話になるのですから、当然のことですよ」
クルード様に改めて感謝を述べられた私は、少しだけ照れてしまっていた。
それはヒューバート様が変なことを言ったからなのかもしれない。いやもちろん、単純になんだか気恥ずかしいという面もあるが。
「あれだけのことを当然といえる胆力は見事なものです」
「……すみません。少しだけ強がっていたのかもしれません。確かに自分でも頑張ったと今になって思えてきました」
クルード様の言葉に、私は今日までやってきた仕事の量を思い出していた。
それを当然とするのは、今後のためにも良くない。いくらなんでも忙し過ぎた。平時はこうではないことを願っておかなければならない。
「……そんなあなたがラウファス伯爵家から追放されているという状況は、やはり気持ちが良いものではありませんね」
「クルード様……」
「父上が上手くやってくれると良いのですが……いや、そうではありませんか。そもそもの問題を解決しない限りは……すみません。余計なことを言ってしまいましたね」
「いえ……」
私の境遇に関して、クルード様は嘆いているようだった。
それだけ私を評価してくれているということだろうか。そういうことなら、少し嬉しく思う。
貴族としての誇りは、今でも持っているつもりだ。その誇りに恥じない人間でありたい。私はずっとそう思って生きてきたから。
「アゼリア嬢、どうか今夜はゆっくりとお休みください」
「クルード様も、ご自愛ください」
「ありがとうございます。それでは、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
挨拶を交わしてから、私達はそれぞれの部屋に入っていった。
とにかく今は、休息するべきだろう。余計なことは考えず、私は迅速に就寝の準備をするのだった。
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