お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

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11.寂しさを自覚して

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 最初は色々とあったものの、カルタジャでの生活は、順調なものだといえた。
 あの一件により役所の職員達から信頼を得られた私は、今では職場にも馴染めていると思っている。
 そもそもカルタジャではゴートン侯爵家から訳ありの人物を預かることが稀にあるそうで、私のことを受け入れる体勢もできていたらしい。

「ふう……」
「浮かない顔をされていますね、アゼリアさん」
「クルード様……」

 役所の廊下でため息をついていると、クルード様が声をかけてきた。
 彼は今、この役所で色々と学んでいるらしい。それがゴートン侯爵から言い渡されたことだそうだ。
 こういった市井の場では、確かに貴族として役立つことが学べるといえるだろう。それは実際に働いている私にはわかることだ。

「ラウファス伯爵家のことが気になっていますか?」
「そうですね……まあ、ゴートン侯爵の説得が上手くいくとは元より思っていませんでしたが」
「残念です。あなたは立派な方であるというのに……」

 ラウファス伯爵家は、正式に私の追放を発表した。
 その理由は公表されていない。結局あの二人は、真っ当な理由すら作れなかったようだ。
 ゴートン侯爵は発表の前から、ラウファス伯爵に働きかけていたようだが、それにも効果はなかったらしい。

「アゼリア嬢、あなたは優れた貴族の令嬢だ。役所の職員達も、あなたには一目置いています。盗賊団の一件の後もあなたは活躍されている」
「……それは私が、恵まれた環境にあったというだけです。上等な教育を受けられたから、色々と考えられるだけで、私自身が優れているという訳ではありません」
「恵まれた環境にいるから、必ず優れた人間になるとは限りません。少なくとも、俺はあなたが優れた人間になろうと努力したのだと思っています」

 クルード様は、私になんとも力強い言葉をかけてくれた。
 彼の評価は、過大なようにも思えるが、それでも嬉しいものである。

「ヒューバート公爵令息も、あなたのことは評価しています。父上だってそうだといえるでしょう。三人もの人間が評価しているのですから、それは客観的な事実だといえます」
「そうですね、少しは自信を持ってもいいのかもしれません……とはいえ、その自信を持つことに対して今はそれ程意味を見出せないというのが正直な所です。ラウファス伯爵家にいた頃は、弟や妹に背中を見せなければという意識があったのですが……」
「アゼリア嬢……」

 私は弟と妹の前では、立派な姉として振る舞えていたような気がする。
 二人と離れてから、心から自信が湧き上がってくるようなことはなかった。それはもしかしたら、問題なのかもしれない。
 別れる時は大丈夫だと思っていたのだが、案外そうではなかったようだ。私は今更になって、二人に会えない寂しさを感じたのだった。
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