お前なんか娘じゃないと追い出しておいて、才能があるから戻って来いと言われましても

木山楽斗

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12.屋敷の近辺まで来て

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 心にできた寂しさを自覚した私は、休暇を利用してラウファス伯爵家の屋敷の近辺まで来ていた。
 それは我ながら、なんとも不可解な行動であった。ふと正気に戻ると、自分が何をしているのかわからなくなってくる。

 それでもルオードとレネシアが平和に暮らしているのかは、気になった。ゴートン侯爵家によって、少なくとも一大事などは起こっていないことは知っているのだが、心の平穏という意味ではどうなのだろうか。

「……アゼリア嬢」
「……え?」

 屋敷の近くまで来た私は、どうやって様子を伺おうかと思案していた。
 そんな私の肩を叩いてきたのは誰かと思えば、クルード様であった。彼がどうしてここにいるのか、それを一瞬考えたが理由は一つだ。

「……クルード様、私のことを付けていたのですか?」
「ええ、なんだか少し心配でしたからね」
「……すみません。勝手な行動をしてしまって」
「いえ、故郷に帰りたいと思うのは当たり前のことですよ。しかし、このまま屋敷の周辺をうろつくのは問題です。場合によっては拘束などされかねません。先に話を通しておくべきだ」

 クルード様が言っていることは、もっともであった。
 伯爵家の屋敷を不審者が歩いているなんて問題だ。きっとすぐに拘束されたことだろう。私もそれがわかっていたから、踏み止まっていたのである。
 ただ話を通すというのは、できれば避けたいものであった。あの両親が、私の来訪を受け入れるなんてことはあり得ないからだ。

「クルード様、それは……」
「実はラウファス伯爵家の使用人とは、存外通じ合えているのですよ」
「え?」
「彼ら彼女らも、ラウファス伯爵夫妻に不満を持っていないという訳ではありません。表立って言えば職を失う故に口は塞がっていますが、逆に裏からならなんとかなるものです」
「そうだったのですか……」

 ゴートン侯爵家は、既に私などよりもラウファス伯爵家の内情を把握しているようだった。
 使用人達の事情なんて、私はまったく知らなかった。しかし考えてみれば、当然なのかもしれない。むしろあの両親の振る舞いを心から肯定する方が、おかしい訳ではあるし。

「しかしこれには時間がかかるものです。夫妻にばれないようにというのは、難しいですからね。今日は出直した方が良いかと……うん?」
「クルード様? ……え?」

 クルード様が言葉を止めたと思った瞬間、私の体に何かがぶつかってきた。
 理解するまでに一瞬要したが、どうやら後ろから誰かが私の体を抱きしめてきたらしい。辺りの草むらから素早くでてきたその子が、誰であるかはすぐにわかった。

「……レネシア?」
「お姉様……」

 妹のレネシア、その温もりを私の体はしっかりと覚えていた。
 久方振りに会った妹は、なんとも弱々しく震えている。それは再会への歓喜や今までの寂しさからのものでは、ないような気がする。
 私の精神は、少しだけ引き締まっていた。どうやらレネシアと恐らくルオードは、困難に直面しているようだ。
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