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16.未来を守るために
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ゴートン侯爵家とフェリトン公爵家の協力もあって、父と母を失脚させることは成功した。
子供に対する非道な行いの数々、それによってラウファス伯爵を剥奪されたお父様には最早権力などはない。お母様とともに、今は必死に生き残るために走り回っているようだ。
こうして私達は、晴れて没落貴族となった訳である。ただ、ラウファス伯爵家であった時よりも今は気持ちが晴れやかだ。
ルオードやレネシア――両親は二人に見向きもせずに逃げ出した訳だが、弟と妹と私での暮らしというものは楽しいものだろう。
幸いにもカルタジャの役所勤めの給料というのはそれなりの額だ。贅沢な暮らしはできないが、それでも三人で暮らしていくことができない訳ではない。
別に私は二人を甘やかしたい訳でもないので、働いてもらうという手もある。何にせよ三人寄り添って頑張ればなんとかなるだろう。
「アゼリア嬢、俺と結婚してください」
「……え?」
そんな風に考えていた私だったが、ルオードとレネシアとともに招かれたゴートン侯爵家の屋敷でクルード様から求婚されていた。
その言葉に驚きながら、私は彼の方を見る。すると至って真剣な視線をクルード様は返してきた。
「あなたは強き女性だ。ともに過ごしていて、それがよくわかりました。そんなあなたを妻に迎え入れたいと俺は思っています」
「そ、それは……それはありがたい限りですが、しかしラウファス伯爵家は没落しました。その婚約に応えることはできません」
「その辺りに関しましては、またなんとかしますよ。幸いにも今、ラウファス伯爵家の領地はゴートン侯爵家とフェリトン公爵家の管理下にある。機を見て、それをルオードに明け渡します。その方が色々と都合もいいですからね」
クルード様の言葉に、私は目を見開いた。
まさか私達が、再び貴族として活動することになるとは考えていなかったからだ。
驚きながら私は、弟のルオードの方を見た。すると彼は、力強く頷いてくれる。
「既にゴートン侯爵から話は聞きました。今以上の混乱を起こさないためには、元鞘に収まるのが丁度良いといのことで……それがどこまで本当かはわかりませんが、任せていただけるなら務めたいと思っています。曲がりなりにもラウファス伯爵家の誇りを受け継いだ者として……」
「なるほど、そういうことなら……」
ルオードの言葉に、私の決意はすぐに固まった。
彼がそのような立場になるというなら、私がやるべきことは単純だ。ゴートン侯爵家との繋がりのために、クルード様と結婚するとしよう。
迷いなどはなかった。それには理由がある。とても単純明快な理由が。
「クルード様、あなたの気持ちを私は嬉しく思います。そして私も同じ気持ちです。クルード様、あなたの優しき清き心を私は尊敬して同時に憧憬していました。あなたと夫婦になりたい。それが私の嘘偽りのない気持ちです」
「アゼリア嬢、ありがとうございます……」
「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。クルード様には何か何までお世話になったのですから……」
私とクルード様は、笑い合っていた。
色々とあったが、それでも私はこうして笑えている。ルオードとレネシアを助けて、そして尊敬できるクルード様と婚約できた。それはなんとも幸福なものだ。
今度はこの未来を守れるように、務めていかなければならない。伯爵家の一員として、クルード様の妻として、これから改めて頑張っていくとしよう。
END
子供に対する非道な行いの数々、それによってラウファス伯爵を剥奪されたお父様には最早権力などはない。お母様とともに、今は必死に生き残るために走り回っているようだ。
こうして私達は、晴れて没落貴族となった訳である。ただ、ラウファス伯爵家であった時よりも今は気持ちが晴れやかだ。
ルオードやレネシア――両親は二人に見向きもせずに逃げ出した訳だが、弟と妹と私での暮らしというものは楽しいものだろう。
幸いにもカルタジャの役所勤めの給料というのはそれなりの額だ。贅沢な暮らしはできないが、それでも三人で暮らしていくことができない訳ではない。
別に私は二人を甘やかしたい訳でもないので、働いてもらうという手もある。何にせよ三人寄り添って頑張ればなんとかなるだろう。
「アゼリア嬢、俺と結婚してください」
「……え?」
そんな風に考えていた私だったが、ルオードとレネシアとともに招かれたゴートン侯爵家の屋敷でクルード様から求婚されていた。
その言葉に驚きながら、私は彼の方を見る。すると至って真剣な視線をクルード様は返してきた。
「あなたは強き女性だ。ともに過ごしていて、それがよくわかりました。そんなあなたを妻に迎え入れたいと俺は思っています」
「そ、それは……それはありがたい限りですが、しかしラウファス伯爵家は没落しました。その婚約に応えることはできません」
「その辺りに関しましては、またなんとかしますよ。幸いにも今、ラウファス伯爵家の領地はゴートン侯爵家とフェリトン公爵家の管理下にある。機を見て、それをルオードに明け渡します。その方が色々と都合もいいですからね」
クルード様の言葉に、私は目を見開いた。
まさか私達が、再び貴族として活動することになるとは考えていなかったからだ。
驚きながら私は、弟のルオードの方を見た。すると彼は、力強く頷いてくれる。
「既にゴートン侯爵から話は聞きました。今以上の混乱を起こさないためには、元鞘に収まるのが丁度良いといのことで……それがどこまで本当かはわかりませんが、任せていただけるなら務めたいと思っています。曲がりなりにもラウファス伯爵家の誇りを受け継いだ者として……」
「なるほど、そういうことなら……」
ルオードの言葉に、私の決意はすぐに固まった。
彼がそのような立場になるというなら、私がやるべきことは単純だ。ゴートン侯爵家との繋がりのために、クルード様と結婚するとしよう。
迷いなどはなかった。それには理由がある。とても単純明快な理由が。
「クルード様、あなたの気持ちを私は嬉しく思います。そして私も同じ気持ちです。クルード様、あなたの優しき清き心を私は尊敬して同時に憧憬していました。あなたと夫婦になりたい。それが私の嘘偽りのない気持ちです」
「アゼリア嬢、ありがとうございます……」
「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。クルード様には何か何までお世話になったのですから……」
私とクルード様は、笑い合っていた。
色々とあったが、それでも私はこうして笑えている。ルオードとレネシアを助けて、そして尊敬できるクルード様と婚約できた。それはなんとも幸福なものだ。
今度はこの未来を守れるように、務めていかなければならない。伯爵家の一員として、クルード様の妻として、これから改めて頑張っていくとしよう。
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