旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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16.話すべきこと

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「……リメリア嬢には俺のことを話しておく必要があるだろうな」

 クルメア様とのじゃれ合いが一段落ついてから、バルハルド様はそのように呟いた。
 その言葉に、私は驚いた。知りたかったことではあるのだが、こんなにも早く聞かせてもらえるなんて思ってもいなかったからだ。

「兄上、本当にいいのですか?」
「別に隠しておく必要があることでもない。俺としては、このままリメリア嬢に色々と気を遣わせる方が申し訳ないからな」
「そうですか。わかりました。それなら、お話しましょうか」

 バルハルド様の言葉に、ファナト様はゆっくりと頷いた。どうやら覚悟を決めたようだ。
 そんな弟とは対照的に、バルハルド様は落ち着いていた。どちらかというと、これはファナト様の方が気張らなければならない話であるようだ。
 もしかしたらバルハルド様としては、もっと早くに話しても良かったことなのかもしれない。なんとなくだが、彼はファナト様の許可が得られるこの場まで、待っていたような気がする。

「リメリアさん、兄上がベルージュ侯爵家の本筋ではないということは、既に知っていることだと思います。その事情について、僕から話させてもらいます」
「はい、よろしくお願いします」
「といっても、何から話したらいいのか……そうですね。まずは父上と兄上の母君との関係から、話しましょうか」

 ファナト様は、少し神妙な面持ちで話し始めた。
 バルハルド様の両親の話、それはなんとなく察しがついている。
 ベルージュ侯爵は、悪い人という訳ではなさそうだ。バルハルド様の年齢から考えても、不貞を働いたとか、そういう訳ではないのだろう。

「僕の母上との婚約が決まる前に、二人は親密な関係にありました。貴族と平民の関係でしたから、決して結ばれる関係ではないと、お互いにわかっていたそうです。父上の婚約が決まれば、その関係は終わる。それを了承した上での関係だったようです」
「実際に、お二人の関係は終わったのですか?」
「ええ、しかし問題……という言い方は、良くないですが、とにかく兄上の母君は、兄上を妊娠していました。それは父上と別れた後に、わかったことであるようです」

 ベルージュ侯爵は、バルハルド様と割り切った関係でいたつもりだったのだろう。
 ただ彼は、詰めが甘かったといえる。決定的な失敗をしてしまったのだ。

 いや、そういう言い方はファナト様の言う通り良くない。ベルージュ侯爵が貴族として落ち度がある行動をしたのは事実だが、バルハルド様のことを私は否定したくはない。
 肯定的に捉えることはできないが、そうならない方が良かったとは思わないようにしよう。少なくとも私は、バルハルド様と出会えたことに感謝しているのだから、その方が絶対にいい。
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