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15.彼らの間違い(モブ視点)
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ヴォンドラ伯爵ウルガドは、窮地に立たされていた。
エルヴァイン公爵との一件をなんとか乗り切った彼だったが、今まで友好的に接してきた貴族達との関係が、悪くなったのである。
「どうしてこんなことになっているの?」
「母上……それは僕にもわかりません」
前ヴォンドラ伯爵であるレルーナの言葉に、ウルガドは苦悶の表情を浮かべていた。
彼自身は、実の所その理由に心当たりがない訳ではない。しかしながら、それを認めるのが癪であるため、口に出せなかったのだ。
「……兄上、理由などは明白でしょう」
「お前は……エルガド」
そんなウルガドの前に現れたのは、彼の弟であるエルガドだった。
亡きヴォンドラ伯爵の忘れ形見である彼は、普段は表に出て来ない。世間にも知られていない隠された存在である。
彼がわざわざ出てきたということに、ウルガドもレルーナも驚いていた。その行為によって、何が待っているか理解しているはずのエルガドが、出てくるはずがないからだ。
「義姉上との離婚が、全てのきっかけでしょう。義姉上の存在の大きさを兄上は履き違えていたのです」
「な、なんだと……」
「エルガド、自分の立場も弁えず出て来たと思ったら、何を言っているの? これだから、売女の子は……」
エルガドの発言に、二人は怒りを露わにした。
ただでさえ、二人はこの妾の子に対して敵意を抱いている。そんな存在が、自分達の行動を非難している。その事実に、二人の怒りはどんどんとヒートアップしていった。
「エルガド、お前はいくつも罪を犯した。一つは我々に断りもなく、出てきたということだ。もう一つは正しい行動をしたこの僕を侮辱したことだ。これは許されることではないぞ」
「あなたのような聞き分けのない子には、しつけが必要ね……まったく、私の手を煩わせないで欲しいものだわ」
父親であるヴォンドラ伯爵が亡くなってから、エルガドはそれまでにも増して苦しい生活を送ることになっていた。
世間に存在をひた隠ししていたものの、ヴォンドラ伯爵がいる間は、彼の庇護によってまだ平和に暮らすことができていたのだ。
その庇護がなくなってからも、エルガドは必死に耐えていた。それは、自分が血を引くヴォンドラ伯爵家を守りたいという思いがあったからだ。
「申し訳ありませんが、僕はもうこれ以上ここにいる気はありません」
「何っ?」
エルガドは、隠していた煙玉を地面にたたきつけて、煙幕を辺りに引き起こした。
そのまま彼は、ゆっくりと後ろに下がっていく。このヴォンドラ伯爵家から、抜け出すために。
「兄上、母上はまだしも、あなたにはまだやり直せるチャンスがあった。良き友人や良き妻に恵まれたというのに、どうしてあなたは間違いを犯してしまったのですか?」
「何を言っている?」
最後に一言を残して、エルガドは逃げ出した。
彼はヴォンドラ伯爵家を断ち切り、生きていくことを決めたのである。
エルヴァイン公爵との一件をなんとか乗り切った彼だったが、今まで友好的に接してきた貴族達との関係が、悪くなったのである。
「どうしてこんなことになっているの?」
「母上……それは僕にもわかりません」
前ヴォンドラ伯爵であるレルーナの言葉に、ウルガドは苦悶の表情を浮かべていた。
彼自身は、実の所その理由に心当たりがない訳ではない。しかしながら、それを認めるのが癪であるため、口に出せなかったのだ。
「……兄上、理由などは明白でしょう」
「お前は……エルガド」
そんなウルガドの前に現れたのは、彼の弟であるエルガドだった。
亡きヴォンドラ伯爵の忘れ形見である彼は、普段は表に出て来ない。世間にも知られていない隠された存在である。
彼がわざわざ出てきたということに、ウルガドもレルーナも驚いていた。その行為によって、何が待っているか理解しているはずのエルガドが、出てくるはずがないからだ。
「義姉上との離婚が、全てのきっかけでしょう。義姉上の存在の大きさを兄上は履き違えていたのです」
「な、なんだと……」
「エルガド、自分の立場も弁えず出て来たと思ったら、何を言っているの? これだから、売女の子は……」
エルガドの発言に、二人は怒りを露わにした。
ただでさえ、二人はこの妾の子に対して敵意を抱いている。そんな存在が、自分達の行動を非難している。その事実に、二人の怒りはどんどんとヒートアップしていった。
「エルガド、お前はいくつも罪を犯した。一つは我々に断りもなく、出てきたということだ。もう一つは正しい行動をしたこの僕を侮辱したことだ。これは許されることではないぞ」
「あなたのような聞き分けのない子には、しつけが必要ね……まったく、私の手を煩わせないで欲しいものだわ」
父親であるヴォンドラ伯爵が亡くなってから、エルガドはそれまでにも増して苦しい生活を送ることになっていた。
世間に存在をひた隠ししていたものの、ヴォンドラ伯爵がいる間は、彼の庇護によってまだ平和に暮らすことができていたのだ。
その庇護がなくなってからも、エルガドは必死に耐えていた。それは、自分が血を引くヴォンドラ伯爵家を守りたいという思いがあったからだ。
「申し訳ありませんが、僕はもうこれ以上ここにいる気はありません」
「何っ?」
エルガドは、隠していた煙玉を地面にたたきつけて、煙幕を辺りに引き起こした。
そのまま彼は、ゆっくりと後ろに下がっていく。このヴォンドラ伯爵家から、抜け出すために。
「兄上、母上はまだしも、あなたにはまだやり直せるチャンスがあった。良き友人や良き妻に恵まれたというのに、どうしてあなたは間違いを犯してしまったのですか?」
「何を言っている?」
最後に一言を残して、エルガドは逃げ出した。
彼はヴォンドラ伯爵家を断ち切り、生きていくことを決めたのである。
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