旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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18.彼らの輪の中に

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「お義兄様の件については、私も苦労させられましたよ」

 バルハルド様の話した一段落した時、クルメア様が言葉を発した。
 彼女は、少し呆れたような笑みを浮かべている。それに対して、バルハルド様は少しだけ不愉快そうな表情をした。

「義妹殿に苦労をかけた記憶はないが」
「いえ、そんなことはありませんよ。義兄殿は、いつも不機嫌そうにしていましたからね。そのことに落ち込んだファナトを慰めるのは、私の役目でしたから」

 バルハルド様の言葉に、クルメア様は露骨な程に嫌味を含んだ答えを返していた。
 ただ、それはよく考えてみれば、ただの惚気だ。ファナト様が顔を赤くしていることに、クルメア様は気付いていないのだろうか。

 ただ、クルメア様の言葉がどうしてそんな感じなのか、その意図は理解できた。
 彼女は恐らく、重くなった空気を和らげてくれているのだ。決して、バルハルド様を煽る隙を見つけたから言葉を発したとか、そういう訳ではないと思う。

「ただ思い返してみると、あの頃のお義兄様は今よりも紳士的だったような気がしますね。少なくとも、そんな風に睨んでくる人ではなかった」
「それは順序が逆というものだ。あの頃の義妹殿が淑女であったから、俺もそのように振る舞っていたに過ぎない」
「おやおや、私は今でもしっかりとした淑女ですよ?」
「淑女にしては、荒々しいことばかり言っていると思うが、もしかして淑女というものへの捉え方が異なっているのだろうか?」
「女性である私の方が、淑女に対する造詣が深いのは当然のことです。恥じる必要はありませんよ、お義兄様」

 私が色々と考えている内に、二人は言い合いを始めていた。
 それにファナト様は、苦笑いを浮かべている。
 このまま止めなければ、二人はいつまでも言い合ってそうだ。その場合、どちらが先にばてるのだろうか。それは少し、気になる所だ。

「まあ何はともあれ、僕とお義兄様、それにクルメアは今はこうして仲良くやれているんです。色々とありましたが、丸く収まったといっていいでしょう」
「そのようですね。私も、お三方の輪に入れるようになりたいものです」
「……そういうことなら心配はいらない。あなたはもう入れている」
「お義兄様に同意するのは癪ではありますが、彼の言う通りです。リメリアさんは、既に私達の家族の一員ですからね」

 私の言葉に、バルハルド様とクルメア様は、すぐに言葉を返してくれた。
 その言葉が嬉しくて、私は笑顔を浮かべるのだった。
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