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30.夜分に訪ねて
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「夜分遅くに、申し訳ありません」
「いや、別に俺は構わない」
夕食や入浴を終えた夜、私はバルハルド様の部屋を訪ねていた。
彼とは、一度話しておかなければならないことがある。そのための話をしたいずっと思っていたのだが、色々とあってこんな時間までもつれ込んでしまったのだ。
夜に婚約者の部屋を訪ねるということには、少々の緊張がある。しかしバルハルド様は平然としているし、あまり気にする必要などはないのかもしれない。
「実はどうしても話しておきたいことがあって」
「ほう、重要な話であるようだな?」
「ええ、重要な話です。その……バルハルド様のお母様のことで」
「む……」
私の言葉に、バルハルド様は彼にしては珍しい程に、目を丸めていた。そんなに意外なことなのだろうか。
いや、そうなのかもしれない。今まで私から、そのことに触れたことはなかったのだから。
「母とは、俺の生みの母と認識していいのか?」
「ええ、ベルージュ侯爵夫人の話ではありません。実は、バルハルド様のお母様に挨拶をしていないということに気付いて」
「挨拶?」
「申し訳ありません。本来ならもっと早くに気付くべきことだったというのに……」
バルハルド様は、呆気に取られたような表情で固まっていた。
それも彼にしては、珍しい表情だ。お母様に関する話だからだろうか。今の彼には、いつものような冷静さがない。
「……なるほど。リメリア嬢が何を思っているかは、理解できた。もちろん、そういうことなら母に挨拶する機会は設けよう」
「そうしていただけると、助かります」
「しかし、それは別に気に病むようなことではない。あなたがするべき挨拶は、ベルージュ侯爵家の範囲で終わっている。それ以上は蛇足というものだ」
「だ、蛇足だなんて、そんな……」
「ああいや、今のは大袈裟な言い方に過ぎない。もちろん、リメリア嬢の心遣いは嬉しく思っている」
バルハルド様は、なんというか温かな笑みを浮かべていた。
家庭的とでもいうのだろうか、貴族や商人としてではない彼の表情が見られた気がする。それが私は、少し嬉しかった。
「それはまあ、大切なことですからね。だからこそ、失念していたのがとても申し訳ないと言いますか……」
「気にするなと言っているだろう。そうだな……明日にでも俺の故郷に行くとするか。母の墓はそこにある。ここからそんなに時間はかからない」
「そうなんですね。わかりました。それなら、明日挨拶させていただきます」
バルハルド様の提案に、私はゆっくりと頷いた。
無事に挨拶の日程が決まったため、私は安心する。これで気掛かりだったことを解決できそうだ。
「いや、別に俺は構わない」
夕食や入浴を終えた夜、私はバルハルド様の部屋を訪ねていた。
彼とは、一度話しておかなければならないことがある。そのための話をしたいずっと思っていたのだが、色々とあってこんな時間までもつれ込んでしまったのだ。
夜に婚約者の部屋を訪ねるということには、少々の緊張がある。しかしバルハルド様は平然としているし、あまり気にする必要などはないのかもしれない。
「実はどうしても話しておきたいことがあって」
「ほう、重要な話であるようだな?」
「ええ、重要な話です。その……バルハルド様のお母様のことで」
「む……」
私の言葉に、バルハルド様は彼にしては珍しい程に、目を丸めていた。そんなに意外なことなのだろうか。
いや、そうなのかもしれない。今まで私から、そのことに触れたことはなかったのだから。
「母とは、俺の生みの母と認識していいのか?」
「ええ、ベルージュ侯爵夫人の話ではありません。実は、バルハルド様のお母様に挨拶をしていないということに気付いて」
「挨拶?」
「申し訳ありません。本来ならもっと早くに気付くべきことだったというのに……」
バルハルド様は、呆気に取られたような表情で固まっていた。
それも彼にしては、珍しい表情だ。お母様に関する話だからだろうか。今の彼には、いつものような冷静さがない。
「……なるほど。リメリア嬢が何を思っているかは、理解できた。もちろん、そういうことなら母に挨拶する機会は設けよう」
「そうしていただけると、助かります」
「しかし、それは別に気に病むようなことではない。あなたがするべき挨拶は、ベルージュ侯爵家の範囲で終わっている。それ以上は蛇足というものだ」
「だ、蛇足だなんて、そんな……」
「ああいや、今のは大袈裟な言い方に過ぎない。もちろん、リメリア嬢の心遣いは嬉しく思っている」
バルハルド様は、なんというか温かな笑みを浮かべていた。
家庭的とでもいうのだろうか、貴族や商人としてではない彼の表情が見られた気がする。それが私は、少し嬉しかった。
「それはまあ、大切なことですからね。だからこそ、失念していたのがとても申し訳ないと言いますか……」
「気にするなと言っているだろう。そうだな……明日にでも俺の故郷に行くとするか。母の墓はそこにある。ここからそんなに時間はかからない」
「そうなんですね。わかりました。それなら、明日挨拶させていただきます」
バルハルド様の提案に、私はゆっくりと頷いた。
無事に挨拶の日程が決まったため、私は安心する。これで気掛かりだったことを解決できそうだ。
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