旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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31.村の人々

 バルハルド様の故郷の村であるアキードは、ラプリードから馬車で二時間程で着く村であった。
 比較的大きな町であるラプリードと比べると、アキードは田舎だといえるだろう。しかし空気が澄んでいて、過ごしやすい場所である。

「バルハルド、随分と久し振りだな?」
「バルハルドが帰って来たって?」
「おいおい、今はバルハルド様だろう」

 バルハルド様の帰還に、村の人々はかなり喜んでいるようだった。
 それだけで、彼と村の人達の関係が悪いものではないとわかる。この村で育ったからこそ、バルハルド様は優しさに満ち溢れた人になったのかもしれない。そう思える程の歓迎だ。

「確かに帰って来るのは、母の命日以来になるか……皆、元気にしていたか?」
「ああ、それはもちろんだとも。そうだ。ライルスとレペルナに娘ができてな」
「ほう、それは後で祝いにいかなければならないな」
「おっと、そうだそうだ。それでバルハルド、そちらのお嬢様は」

 そこで村の人達の視線が、私の方に集まった。
 身なりからして、私が貴族であるということは理解しているのだろう。皆少しだけ、遠慮がちになっているような気がする。

「……俺の婚約者だ」
「婚約者? って、バルハルド結婚する気になったのか?」
「おお、それはめでたいな。しかし、あのバルハルドが結婚か」
「……別に結婚願望がなかった訳ではないのだがな」
「いやだって、お前はなんとなくずっと独り身みたいな感じがしていたから……」

 バルハルド様は、結構多くの人達から結婚しないと思われていたようだ。
 彼には申し訳ないが、そういう人達の気持ちがわからない訳ではない。バルハルド様は、そういう雰囲気を持つ人ではあると思う。
 結果的に、私はそんな人の心を開いた。そんな風に自惚れても、いいものだろうか。いや、本人が否定しているので、それは的外れか。

「……それで、彼女が母に挨拶をしたいと言ったから戻って来たのだが」
「ああ、そういうことか。できた人だなぁ」
「おい、失礼だぞ? あの人は多分……」
「あ、私はアーガント伯爵家のリメリアといいます。でも、そんなにお気になさらないでください。私はバルハルド様の婚約者なのですから」
「あ、いや、その……すみません。俺達礼儀とかには疎くて」
「一緒にしないでくれよ。まあ、疎いのは確かだけど」

 アキードの人々は、私のことも好意的に受け止めてくれているようだった。
 これからもここには来ることになるだろうし、できれば良好な関係を築いていきたいものである。
感想 3

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