村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。

木山楽斗

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22.謝罪の一つも

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「あれは……」
「む……」

 馬車が止めてある場所まで歩いてきた私とアルディス様は、その前に人だかりができているのを見つけた。
 それを見て、私達は顔を見合わせる。そこにいる人達が、何を言ってくるのか。それを考えると、なんというか少し億劫だった。
 いいことを言われても、悪いことを言われてもすっきりしない。それは既に、わかっていることだった。故にそこに行くのを躊躇してしまう。

「……お前はここで待っていろ」
「アルディス様……」
「俺が話をつけてくる」
「……いいえ、私も行きます。多分、皆納得しないですから」
「大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫です。私は大丈夫です」

 私は自分に言い聞かせながら、アルディス様の手を強く握った。
 すると彼は、それに応えてくれる。それが合図だった。私達はゆっくりと歩き始める。

「ア、アルディス様、それに……エルーシャ、様」
「お、お帰りになられるのですか?」
「……そのつもりだ。そこを退いてもらおうか」

 私達の来訪に、村の人達は少し怯えていた。
 ここで待ち構えていた彼らにとっても、私と対面するのはそれ程気持ちがいいことではないということだろうか。
 しかしそれは当然のことかもしれない。今まで迫害してきた少女が、まさか公爵家の人間だったなんて、彼らも思っていなかっただろうし。

「ど、どうかお待ちください。今回の事件で、村は甚大な被害を受けました。多くの畑が荒らされて、多くの人が命を落としたのです。故に支援を、どうか支援をお願いします」
「ほう……」

 群衆の中から出てきたのは、ロルガーと村長だった。
 二人は、私達に向かって頭を下げる。しかしそれを見たアルディス様は、呆れたような顔をしていた。

「な、何か気に入らないことでもあるのでしょうか?」
「もちろん、今回の被害に対して何かしらの支援が必要であるということは俺も理解している。市民を助けるのが貴族の義務だ。お前達の言葉を否定するつもりはない」
「そ、それなら何を?」
「俺が気に入らないのは、お前達の態度だ。お前達がエルーシャに何をしたのか、俺は知っている。それなのに、お前達が最初に言ってくるのは支援の申し出なのか?」
「そ、それは……」

 アルディス様は、とても不快そうに村の人達を見ていた。
 それを見ながら、私は少し泣きそうになっていた。アルディス様の心遣いが、伝わってきたからである。

 村の人達は、私を見ても謝罪の一つもしなかった。自分達が今までやってきたことへの反省が、彼らにはまるでないのだ。
 今までのことなどまるでなかったかのように手の平を返して、私にただ遜る。この村の人達は、そんなひどい対応をしてきたのである。
 私の心の中には、ふつふつと怒りの気持ちが沸き上がってきていた。本当に、この人達はどれだけ身勝手なのだろうか。私の怒りは、一気に溢れ出そうとしていた。
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